米OpenAIは10月30日、生命科学研究に特化したAIモデル「GPT-6 Rosalind(ロザリンド)」を、開発者向けのAPIで公開した。同社のAPI変更履歴によると、新モデルは生物学の専門的な推論と、科学用ツールを使いこなす機能を複雑な研究に持ち込むもので、利用できるのは「Rosalind Research」の承認を受けた組織に限られる。料金は入力100万トークンあたり15ドル、出力75ドルで、9月に一般提供を始めた前のモデルの3倍に設定した。

審査を通った組織の内部研究に限る

変更履歴は、GPT-6 Rosalindの提供条件を「trusted-access(信頼できる利用者への限定提供)」の枠組みによる「承認された利用者の内部研究」と定めている。誰でもAPIキーを取れば使える汎用モデルとは違い、組織として申請し、審査を通る必要がある。

審査の基準は、4月に最初のモデルを発表した際に同社が示している。①公共の利益が明確な正当な科学研究を行っていること、②統治と法令順守、悪用防止の管理体制を備えていること、③承認した利用者だけが安全に管理された環境で使うこと、の3原則で評価する。同社はこの方式を取る理由を、科学の進歩に役立つ能力を研究機関に届けつつ「生物学的な悪用への強固な安全策」を保つためだと説明している。

料金表には、GPT-6 Rosalindを含む3つのモデルが「Life sciences models(生命科学モデル)」として並ぶ。注記には、利用は承認された内部研究に限ると改めて書かれ、「承認された組織は今後も、最新のRosalindモデルが出るたびに利用できる」としている。すでに審査を通った組織は、改めて申請しなくても新モデルへ移れることになる。

料金は前のモデルの3倍

API料金表によると、GPT-6 Rosalindの料金は100万トークンあたり入力15ドル、出力75ドル。過去に読み込んだ入力を再利用する「キャッシュ入力」は1.5ドルだ。前のモデルにあたる「gpt-rosalind-research」は入力5ドル、出力25ドル、キャッシュ入力0.5ドルで、新モデルはいずれも3倍になる。

モデル 入力 出力 キャッシュ入力
gpt-6-rosalind 15.00ドル 75.00ドル 1.50ドル
gpt-rosalind-research 5.00ドル 25.00ドル 0.50ドル
gpt-rosalind-discovery 5.00ドル 25.00ドル 0.50ドル
Rosalindシリーズのモデル別API料金(100万トークンあたり)

出典: OpenAI「Pricing」(API料金表、2026年11月1日閲覧)

新モデルには、キャッシュへの書き込み料金も設定された。30分保持は18.75ドル、12時間保持は37.5ドルで、前の2モデルにはこの欄の料金が無い。同じ資料や長い実験データを何度も読み込ませる研究では、キャッシュの使い方で費用が変わる。

前のモデルは9月8日に一般提供が始まり、公表料金での課金は10月5日から始まっていた。課金の開始から25日後に、料金の高いモデルが加わったことになる。料金表に並ぶ「gpt-rosalind-discovery」について、同社の資料で用途の違いを説明した箇所は確認できていない。

4月の発表から半年で3段階

Rosalindシリーズは4月16日に始まった。同社は最初のモデルを「生物学、創薬、トランスレーショナル医学(基礎研究の成果を臨床へつなぐ医学)の研究を支える最先端の推論モデル」と位置づけた。名前は、DNAの構造解明につながる研究をした科学者ロザリンド・フランクリンにちなむ。発表時の利用は米国の法人契約の顧客に限り、アムジェンやモデルナ、アレン研究所、サーモフィッシャーサイエンティフィックなどと協力していると明らかにした。

背景として同社は、米国で新薬の標的を見つけてから規制当局の承認に至るまで平均10〜15年かかると指摘した。文献、専門データベース、実験データを行き来する研究の手順そのものが複雑で、時間がかかるという問題意識だ。研究支援の評価では、研究作業を測る指標「LABBench2」の11課題のうち6課題で汎用の「GPT-5.4」を上回ったとした。遺伝子治療の開発企業ダイノ・セラピューティクスと組んだ評価では、未公表のRNA配列から機能を予測する課題で、10回の回答のうち最良のものが、専門家による過去の成績57件と比べて上位5%に入る水準だったという。

5月29日には、審査を経た開発者や米政府のパートナーに提供を広げる「Rosalind Biodefense」を始めた。生物防衛や公衆衛生、パンデミックへの備えに使うためだ。

6月3日には改良版を出し、提供先を米国外の適格な組織へ広げた。同社独自の評価では、医薬品化学の課題で得点27.5%(汎用の「GPT-5.5」は25.1%)、実際の湿式実験(ウェットラボ)の手順支援で得点63.2%(同55.8%)だった。ゲノム解析の課題では正答率21.6%(同20.4%)で、使うトークンを31%減らしたとしている。ノボノルディスクが研究に導入することも明らかにした。

10月15日には大学向けの「Rosalind Academic Plan」を発表した。米国の大学の研究室を対象に、最大30人分の業務用アカウントを最長12か月無料で提供する。GPT-Rosalindの利用には別途審査が必要で、API経由の利用は「現時点では含まない」としている。

新モデルの性能はまだ示されていない

今回のGPT-6 Rosalindについて、11月1日時点で一次情報として確認できたのは、API変更履歴の1項目と料金表だけだ。同社のニュース配信(RSS)にも、新モデルを紹介する記事は載っていない。前のモデルとの性能の差を示す評価結果や、どの汎用モデルを土台にしたかは公表されておらず、料金が3倍になる理由も説明されていない。

前の2回の発表では、性能をいずれも同社の評価で示してきた。研究機関がGPT-6 Rosalindへ移るかどうかは、料金の差に見合う改善があるかで決まる。費用を判断する材料となる評価結果がいつ出るかが、当面の焦点になる。

生命科学向けのAIを、審査を条件に提供する動きはOpenAIだけではない。アンソロピックも9月17日、研究資格や安全管理、倫理審査を確かめた組織に、生物分野の安全制限を緩める認定制度を始めた(アンソロピック、生命科学の専門家にAIの制限を緩める認定制度 審査を通れば創薬や臨床開発の遮断を解除 監視は「その場で拒否」から「後から検証」へ)。病原体の研究のように、正当な研究と悪用の区別が質問の文面だけではつかない分野で、各社は「誰に使わせるか」を審査する方式を採っている。

OpenAIは汎用モデルの更新も続けている。変更履歴によると、10月26日には視覚情報の推論やコンピューター操作に向く「GPT-6.1 Terra」をAPIで公開した。生命科学向けのRosalindは、こうした汎用モデルとは別の系統として、審査を条件に更新を重ねている。