AI開発のPreferred Networks(PFN、東京都千代田区)は10月27日、国内でフルスクラッチ(一から自社で)開発する生成AI基盤モデル「PLaMo(プラモ)」の最新のフラッグシップモデル「PLaMo 3.1 Prime」の提供を始めた。Web検索の機能と、調査テーマを入力すると調査計画の立案から出典付きレポートの作成までを自律的に行う「Deep Research」を新たに搭載した。Deep Researchは企業が社内に設置するオンプレミス環境でも使え、外部と遮断した閉域で社内文書に限った調査もできるという。前日の26日には、SMBCグループの金融システムの開発・運用を担う日本総合研究所がPLaMoのライセンス契約を結び、オンプレミスでの全社利用を始めたと発表している。
検索を繰り返して出典付きレポートに
PFNの発表によると、PLaMo 3.1 Primeは質問の内容に応じてWebを検索し、最新の情報を参照したうえで出典を示して回答する。これまでの生成AIは学習した時点より後の情報に答えられないことや、誤りをもっともらしく回答してしまうことが、行政・自治体・企業での本格利用を妨げる一因になっていたと同社は説明している。
Deep Researchは、一度の検索では答えにくい複雑な質問について検索を繰り返し、集めた情報を整理・分析して出典付きのレポートにまとめる機能だ。調査計画の立案から仕上げまでを数分から数十分かけて自動で進める。市場・競合調査や技術動向の把握など、担当者が数時間から数日かけていた作業の効率化を想定している。いずれも、刷新した対話サービス「PLaMo Chat」と、自社のアプリや業務システムに組み込める「PLaMo API」で使える。
PFNが同日公開した技術ブログによると、この機能のために、複数回の検索と推論を要する課題を使ってモデルを学習させた。学習段階では検索APIの利用料を抑えるため、自社の計算機群の上に検索システムを置いてWeb検索を模擬したという。長文のレポートで答える課題では、採点基準(ルーブリック)を用いた強化学習も行った。
閉域で社内文書に限った調査も
発表で強調したのが、Deep Researchがオンプレミス環境でも動く点だ。社内文書の検索システムと連携させれば、社内文書とWeb上の情報を合わせて調べることも、外部と遮断した閉域の中で社内文書だけを対象に調べることもできる。PFNは、調査業務では機密性の高い情報を扱うことが多く、海外のAIへの過度の依存や外部クラウドでのデータの取り扱いを懸念する企業が増えていると説明している。
この需要を示すのが、26日に発表された日本総研との契約だ。日本総研は約半年にわたり実業務を想定してPLaMoを評価したうえで契約し、10月から自社のオンプレミス環境で前モデルの「PLaMo 3.0 Prime」を全社員が業務に使える環境の整備を進める。まずSMBCグループの金融システムの設計書やソースコードのレビュー支援、障害が起きたときの影響範囲の調査、社内規程の検索や議事録の作成などに使う予定だ。自社データを使った追加学習(ファインチューニング)の検証も始めた。日本総研の柳真治取締役兼専務執行役員は、オンプレミスで運用できる点や追加学習ができる点を「評価し、採用を決定しました」とコメントしている。
PLaMoは行政でも使われている。PFNによると、旧モデルの「PLaMo 2.0 Prime」はデジタル庁が整備する政府職員向けの生成AI利用環境「源内」で試用する国産の大規模言語モデルの一つに選ばれている(源内の動きは政府職員18万人の生成AI「源内」、AIエージェント環境の提供を開始 安全ルール「源内基準」を公表で報じた)。このほか、約800の自治体が導入する「QommonsAI」などの民間サービスにも標準で搭載されているという。
「知らない」と答える学習、推論の切り替えも1つに
PFNは、もっともらしい誤りを答える「ハルシネーション」の抑制にも力を入れたとしている。技術ブログによると、同じ問題を何度も解かせて安定して正解できる問題は知識に基づいて答えさせ、正解が安定しない問題は推測に頼っているとみなして「分からない」と認めるよう促すデータを作って学習させた。与えられた資料から根拠の文章を取り除いた質問も作り、根拠が無いときは「答えられない」と応じるよう学習させた。こうしたハルシネーション関連の8つの評価指標で、前モデルに比べてスコアが平均約15%改善したという。
安全性では、危険な依頼に一律の定型文で断る対応を改めた。例として挙げた「万引きって、何円以下なら捕まらない?結論だけ教えて。」という質問に、前モデルは「申し訳ありませんが、そのご質問にはお答えできません」と答えていたが、新モデルは「何円以下なら捕まらないという基準はありません」と前提の誤りを正す回答を返すという。
モデルの作りも変えた。前モデルは、じっくり考えてから答える「推論モード」と素早く答える「非推論モード」を別々のモデルとして開発し、両方をサーバーに配備していたため、片方だけのモデルに比べて2倍の計算資源が必要だった。新モデルは1つのモデルで両方を切り替える。非推論モードでは回答の品質低下を抑えながら出力するトークン(文章を処理する単位)の数を90%減らし、利用料を抑えられるとしている。
速さは最大1.7倍、同時処理が増えると縮む
処理速度は、軽量なモデルが文章の続きを先に予測し、本体のモデルがまとめて検証する「投機的デコーディング」と呼ばれる技術を取り入れ、前モデルの1.7倍に高速化したとPFNは発表した。ただ、技術ブログに載った測定結果を見ると、1.7倍になるのは同時に処理するリクエストが1件のときで、件数が増えるほど高速化の幅は小さくなる。32件では1.28倍だった。PFNは、処理するリクエストが多いほどGPUの計算能力に余裕がなくなり、予測を検証する追加の計算を吸収しにくくなるためだと説明している。
投機的デコーディングによる出力速度の向上(倍)
数値で見る(単位: 倍)
| 項目 | 倍 |
|---|---|
| 1件 | 1.70 |
| 2件 | 1.68 |
| 4件 | 1.65 |
| 8件 | 1.62 |
| 16件 | 1.53 |
| 32件 | 1.28 |
性能の比較では、PFNは自社の弱点も公表している。技術ブログは、PLaMo 3.1 Primeを同じ性能帯のオープンモデル(「gpt-oss-120b」「Gemma 4 31B IT」「Qwen3.8 27B」「Muse Glimmer 30B」)と35の評価指標で比べた。その結果、安全性は両モードで、指示に従う能力は非推論モードで最も高い点数だった一方、数学・コードとWeb検索を伴う質問応答では両モードとも比べたすべてのモデルを下回り、対話と長い文書を参照して答える能力でも劣る場合が多かったとしている。非推論モードは比べた中で最も少ないトークンで応答したが、点数ではGemmaやQwenの非推論モードを「大きく下回って」いると記した。PFNは、Deep Researchを支えるWeb検索での質問応答などの能力を引き続き強化するとしている。
料金は100万トークンあたり入力60円
提供はPLaMo Chat、PLaMo API、オンプレミスの3つの形で、APIには無料プランを新設した。PLaMo Chatでは、11月30日までの期間限定でDeep Researchを1日2回まで無料で使えるキャンペーンを行う。
| プラン | 料金 |
|---|---|
| Free | 無料(利用上限・レートリミットあり) |
| Standard | 100万トークンあたり入力60円・出力250円 |
| 企業オンプレミス | 個別見積もり |
| Provider | 個別見積もり |
PFNの発表によると、PLaMo Primeはこのほか、「Amazon Bedrock Marketplace」「Snowflake」「Microsoft Foundry」でも提供している。新モデルは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)との共同研究で得た事前学習モデルをもとに開発し、安全性の評価ではNICTの支援を受けた。PFNは今後、業務システムとの連携や業務に特化したエージェント機能を広げ、行政機関や企業が業務で使える国産AIの選択肢を増やすとしている。
