厚生労働省は28日、社会保障審議会介護給付費分科会(第272回)に、2027(令和9)年度の介護報酬改定に向けた「地域区分」の見直し案を示した。地域区分は、介護職員の人件費の地域差を報酬に反映する仕組みで、1単位10円の単価に地域ごとに最大20%を上乗せする。国家公務員と地方公務員の地域手当が7区分から5区分へ再編されるのに合わせ、地域手当に準拠して区分を決める原則を維持する。そのうえで、市町村が希望すれば従来の上乗せ割合を保てる経過措置を2029(令和11)年度末まで設ける。隣接する自治体との格差を是正する特例は「3級地差ルール」に改める。
地域区分とは 1単位10円に最大20%を上乗せ
介護保険法は、介護報酬を事業所の所在地なども考慮して、サービスの提供に必要な平均的な費用を勘案して定めるよう求めている(第41条第4項など)。介護サービスの費用で最も大きいのは人件費で、職員の賃金は地域で差がある。このため介護報酬は「単位」で数え、1単位を何円とするかをサービス別・地域別に決めている。事業所に支払われる額は、サービスごとに算定した単位数に1単位の単価を掛けて出し、利用者はその1割から3割を自己負担する。
現行(2024〜2026年度)の上乗せ割合は、1級地20%、2級地16%、3級地15%、4級地12%、5級地10%、6級地6%、7級地3%、その他の地域0%の8段階だ。上乗せするのは人件費にあたる部分だけで、サービスごとに人件費の割合を70%、55%、45%の3つに分けている。訪問介護や訪問看護、居宅介護支援などの「70%」のサービスでは、1級地の1単位は11.40円になる。通所リハビリテーションや短期入所生活介護などの「55%」は11.10円、通所介護や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの「45%」は10.90円だ。その他の地域はいずれも10円となる。
| 級地 | 上乗せ割合 | 自治体数 |
|---|---|---|
| 1級地 | 20% | 23 |
| 2級地 | 16% | 7 |
| 3級地 | 15% | 29 |
| 4級地 | 12% | 24 |
| 5級地 | 10% | 59 |
| 6級地 | 6% | 137 |
| 7級地 | 3% | 170 |
| その他 | 0% | 1292 |
出典: 厚生労働省 第272回介護給付費分科会 資料3「地域区分」
1級地は東京都の特別区のみで、自治体全体の7割余りにあたる1292自治体は上乗せの無い「その他」に入る。
地域手当が7区分から5区分へ 約9割の市町村が「準拠」を回答
地域区分は、公平性と客観性を保つため、地域の民間賃金を反映して決まる公務員の地域手当に準拠するのが原則だ。その地域手当は、2025年度から段階的に見直されている。級地を決める単位を市町村から都道府県を基本とする広い単位に改め、区分の数を7から5に減らした。総務省が地方自治体に送った通知の別紙は、2027年度の地域手当を1級地20%(東京都の特別区)、2級地16%、3級地12%、4級地8%、5級地4%と示している。公務員の側の見直しの経緯は公務員の給与改定を10月9日に閣議決定 国家公務員は人事院勧告どおり官民較差1万5056円・ボーナス年4.70月へ 総務副大臣が同日、地方へ通知で詳しく伝えた。
厚労省は2026年2月、2027年度以降の地域区分についての意向を各市町村に尋ねた。地域手当に準拠し「現行の上乗せ割合と変わらない」と答えたのが1088自治体(62.5%)、準拠して「現行よりも上乗せ割合が上がる」と答えたのが438自治体(25.2%)で、合わせて約9割が地域手当への準拠を受け入れた。「現行と同じ上乗せ割合を希望」して経過措置を求めたのは140自治体(8.0%)、地域手当と異なる割合を望む自治体や未定と答えた自治体などの「その他」は75自治体(4.3%)だった。厚労省は、この調査は2027年度からの区分を示したものではないと説明している。
経過措置は2029年度末まで 特例は「3級地差ルール」に改める
厚労省の対応案は、最新の民間賃金を反映した地域手当に準拠する原則を維持したうえで、報酬単価が大きく変わるのを和らげるため、市町村が希望すれば従来の上乗せ割合と地域手当の範囲内で級地や割合を選べる経過措置を設けるとした。資料の例では、現行の5級地(10%)から新しい3級地(12%)へ上がる市町村は、10〜12%の範囲で設定できる。経過措置の期限は2029年度末までとし、2030年度以降の扱いは2030年度改定の際に市町村の意見を聞いて決める。
経過措置は2012年度と2015年度の地域区分の見直しでも設けられ、現行分は2026年度末まで延長されている。2024年4月1日時点で経過措置を使っていたのは80自治体で、本来の級地より低い区分にとどめていたのが78、高い区分にしていたのが2だった。
隣接自治体との格差を是正する特例も見直す。現行の「5級地差ルール」は、5級地以上の差がある地域と隣接する場合に4級地差まで引き上げ・引き下げを認める仕組みで、2024年4月時点で7自治体が使っていた。区分が5段階になると5級地以上の差は生じなくなるため、厚労省は「3級地以上の差がある地域と隣接する場合に、2級地差になるまで引き上げ・引き下げを認める」3級地差ルールに改める案を出した。たとえば20%の1級地と隣接する8%の4級地は12%を選べるようになる。現行の「4級地差ルール」(2自治体)も3級地差ルールで扱う。周りを高い区分か低い区分に囲まれた自治体の「完全囲まれルール」(30自治体)や、広域連合のルール(20自治体)などは続ける。厚労省は、この特例の見直し案を前提に市町村の意向を改めて確認し、2027年度以降の区分を決めるとしている。
引き下げとなる地域の事業所から懸念
資料には、これまでの分科会で出た意見も整理されている。上乗せ割合が下がる地域について「赤字に転落する事業所が急増し、施設存続の危機に直結する」との意見や、介護職員の賃金が下がることは「何としても避ける工夫をすべき」との意見があった。一方、級地が上がれば人材確保の面では歓迎されるが、保険料の上昇につながり、市町村の受け止めは地域の実情でさまざまだとの指摘も載った。上乗せ割合が上がれば1単位の単価が上がり、利用者の自己負担と介護保険の給付費も増えるためだ。
事業者団体との意見交換会では、全国介護事業者連盟が、引き下げとなる地域は物価高で経営が厳しい介護事業者に「極めて深刻な影響を与えます」として、地域の物価動向や経済事情への配慮と、決定の過程の明確化を求めた。介護人材政策研究会は、市町村の判断による経過措置にとどまらず「3年ごとの介護報酬改定の枠組みにとらわれることのない新たな経過措置の仕組み」を求め、全日本病院協会も経過措置と激変緩和措置を要望した。介護事業所の経営状況をめぐるこれまでの議論はデイサービス、小規模ほど赤字 上野厚労相「規模別・地域別に経営確認を」 2027年度報酬改定へで伝えた。
有料老人ホームの介護、特定施設への移行促進も議論
同じ日の分科会では、有料老人ホームなどで介護を提供する「特定施設入居者生活介護」の見直しも議題になった。厚労省は、入居者ごとの排せつ支援計画の作成・見直しや、排せつの状態の改善を報酬で評価する案を示した。特別養護老人ホームなどで加算の要件となっている排せつ支援計画を作っていた特定施設は28.3%だった。特定施設の指定を受けていない住宅型有料老人ホームから特定施設への移行を促すため、移行した事例を詳しく調べて好事例を事業者と自治体に周知する案や、外部サービス利用型の特定施設で取れる加算が一般型より少ない点の扱いを検討する案も出した。
有料老人ホーム制度の見直しで新たに設ける「登録施設介護支援」の基準と報酬も論点となった。入居者のケアマネジメントの独立性を保ち、ケアプランの作成と地域とのつながりへの支援を一体で行う相談支援の仕組みだ。資料には、創設で入居者の「囲い込みが助長されることを防ぐ」ため、公正・中立なケアマネジメントのあり方を確立するよう求める意見も載った。このほか、2024年度改定の効果検証調査(2026年度調査)の速報値として、高齢者施設と医療機関の連携体制や、離島・中山間地域での加算のあり方の調査結果が報告された。2027年度改定に向けた個別サービスの議論は、夜間対応型訪問介護は2027年3月末で廃止 統合先の定期巡回に24時間対応を評価する新報酬案 グループホームは3ユニットの夜勤2人体制を拡大案など、分科会で順に進んでいる。
