立憲民主党は10月14日、国会内で、桜島の周辺4市の議会でつくる「桜島火山活動対策議会協議会」などの関係者から、桜島の火山対策に関する要望を聞き取り、意見を交わした。協議会は鹿児島市、垂水市、霧島市、鹿屋市の各市議会で構成する。協議会は2027年度の予算要求に向けた重点要望として、大隅半島側の観測体制を桜島島内と同じ水準に引き上げることや、大規模噴火でライフラインが止まっても病院や福祉施設が運営を続けられるよう支援を広げることなどを求めた。
立憲側からは、石垣のりこ災害復興特別委員会筆頭理事(党復興防災部会長)、小沢雅仁災害復興特別委員(党災害緊急事態局長)、横沢たかのり、福士珠美の両災害復興特別委員、村田享子党鹿児島県連筆頭副代表、山内佳菜子党宮崎県連代表、小島とも子参院議員が出席した。
要望書は「降灰」と「大規模噴火」の2本柱
協議会が提出した「桜島火山対策要望書」(令和8年10月、会長・古江尚子氏)は、要望を「降灰等対策」と「大規模噴火対策」の2つに分けている。降灰等対策は、観測・研究の推進、道路整備、砂防、治山、健康対策、財源措置、降灰除去、降灰防除施設、防災営農、海面環境保全(桜島軽石等の除去)の10項目。大規模噴火対策は、防災対策の推進と火山防災教育の2項目で、要望先は文部科学省、気象庁、国土交通省、林野庁、総務省、農林水産省、内閣府、厚生労働省にまたがる。
| 区分 | 主な要望項目 | 主な要望先 |
|---|---|---|
| 降灰等対策 | 観測・研究の推進 | 文部科学省・気象庁 |
| 降灰等対策 | 道路整備・砂防・降灰除去 | 国土交通省 |
| 降灰等対策 | 治山 | 林野庁 |
| 降灰等対策 | 健康対策・校庭の除灰・降灰防除施設 | 文部科学省 |
| 降灰等対策 | 対策経費の財源措置 | 総務省 |
| 降灰等対策 | 防災営農 | 農林水産省 |
| 大規模噴火対策 | 防災対策の推進 | 内閣府・厚生労働省・文部科学省・国土交通省・気象庁 |
| 大規模噴火対策 | 火山防災教育 | 内閣府 |
要望書はまず、桜島の近年の活動を振り返っている。平成27年(2015年)8月に噴火警戒レベルが4に引き上げられ、3地区に避難勧告が出た。令和2年(2020年)6月には大きな噴石が34年ぶりに火口から3キロを超えて飛び、民家から150メートル付近に落ちた。令和4年(2022年)7月には噴火警戒レベルが初めて5に引き上げられ、2地区に避難指示が出ている。
気象庁によると、このときは7月24日午後8時5分に南岳山頂火口で爆発が起き、大きな噴石が火口から2.4キロを超えて飛んだ。その後は2キロを超えて噴石が飛ぶ噴火は起きず、同月27日午後8時にレベル3(入山規制)へ引き下げられた。要望書は、姶良(あいら)カルデラへのマグマの流入は依然として続いており、「大正噴火級の大規模噴火に警戒すべき状況に変化はない」と訴えている。
「マグマの蓄積は大正噴火前の水準」
要望書は、専門機関の評価を2つ引いている。政府の火山調査研究推進本部の火山調査委員会は、現時点では「大規模噴火へと直ちに移行する兆候は認められない」としつつ、「姶良カルデラの地下深部では多量のマグマが蓄積した状態」とみている。将来、活動が活発になる筋書きとして、山頂部での爆発の激化、南岳山頂からの溶岩の流出、山腹での大規模噴火を挙げている。
京都大学防災研究所火山防災研究センターは、短期的には小規模な噴火が続くとしたうえで、長期的には姶良カルデラ下のマグマの蓄積が「大正噴火が起こる前のレベルに既に戻っていると推定され、大正噴火級の大規模噴火に対する警戒を要する時期にある」としている。立憲民主党の発表も、地下のマグマの量が1914年(大正3年)の大正噴火前の水準に戻っているとの分析を紹介している。要望書は「大正噴火から112年が経過した今」、大規模噴火への備えを急ぐ必要があると説いている。
足元の活動について、気象庁が10月12日に出した解説情報では、桜島は噴火警戒レベル3(入山規制)が続いている。10月9日から12日午後3時までの間に噴火は観測されず、火山性地震は1日2〜6回だった。一方、全地球測位システム(GNSS)の観測では、島内の一部の基線で2026年5月ごろから山体の膨張に伴うとみられるわずかな伸びがあり、姶良カルデラの地下深部の膨張を示す緩やかな伸びも長く続いている。気象庁は、マグマが長期にわたって蓄積した状態で、火山ガス(二酸化硫黄)の放出量もおおむね多いことから、噴火活動は今後も続くとみている。
灰は東へ 大隅半島側にも観測の目を
降灰等対策で目を引くのは、観測体制の東側への拡充だ。要望書によると、桜島の灰は西風が主体の気象条件のため、牛根地区を中心に垂水市側へ恒常的に流れ込む。協議会は気象庁に対し、島の外の東側に赤外熱映像装置を増やし、観測用レーダー網を強化・拡充して、大隅半島側でも桜島島内と同じ観測体制を確立するよう求めた。
積もった灰の片付けも、自治体の重い負担になっている。協議会は国土交通省に、道路と宅地の降灰除去に必要な事業費(車両の確保にかかる経費を含む)の確保を要望した。垂水市は道路の除灰車両が少なく、降灰時に素早く対応するのが難しいとして、多量の降灰時には国交省が持つ除灰車両を十分な台数貸し出すよう支援の検討を求めている。
学校現場の要望も具体的だ。文部科学省には、校庭などの除灰に必要な事業費の確保と、公立学校の災害復旧費補助金の対象要件の緩和を求めた。灰が芝生の中で固まり、校庭のグラウンドと芝に段差ができて、授業だけでなく学校開放や地域活動にも支障が出ているとして、除灰後の芝の張り替えにあてる学校施設環境改善交付金の算定割合を引き上げるよう要望した。立憲民主党の発表によると、意見交換では学校のプールクリーナーやエアコン設備の更新への支援、鹿屋市など周辺自治体からの市道の除灰や水道など生活インフラの維持への配慮も求められた。
大量の軽石と灰、道路と施設が孤立する想定
大規模噴火対策では、ライフラインが途絶えた後の備えが中心になっている。要望書は、医療・福祉施設には避難すると症状が悪化するおそれのある入所者もいるため、大量の軽石や火山灰でライフラインが途絶えても、その場にとどまって施設を運営しなければならない事態が考えられると指摘。一定期間、現在地で運営を続けるための備蓄や自家発電設備などの整備費の支援を広げるよう、内閣府と厚生労働省に求めた。島内の高齢者福祉施設の入所者が島外の施設へ避難する期間が長引けば事業者の経営が難しくなるとして、支援策の検討も要望している。
道路では、国道224号の昭和火口から3キロ以内の区間や土砂災害(特別)警戒区域について、大規模噴火時に噴石や崖崩れが起きるおそれがあり不安だとの声が住民から多く寄せられていると記した。平成30年(2018年)7月豪雨の際には土砂崩れで同じ国道が寸断されたことも挙げ、被害が想定される箇所の定期点検を続けるなど、安全かつ速やかに避難できる経路の確保を国交省に求めた。
降り積もった灰や軽石で道路が長く使えなくなれば、避難や救助、緊急物資の輸送に重大な支障が出る。要望書は、令和8年3月に策定された「道路啓開計画ガイドライン【火山災害編】」に基づき、大量の軽石や火山灰に対応した道路啓開計画を早く策定するよう求めた。道路啓開は、緊急車両が通れるよう最低限のがれき処理などで道を切り開く作業を指す。ガイドラインでは降灰量30センチ以上の地域が原則として対象外とされたが、桜島では30センチ以上の降灰が見込まれる地域に多くの住民が暮らしており、取り残されるおそれがあるとして、さらなる対策の検討を訴えている。
観測と情報の面では、大規模噴火で島内の観測機器が機能しなくなるおそれがあるとして、影響を受けにくい広い範囲に機器を置き、観測を続けられる体制を整えるよう気象庁に求めた。大量の軽石や火山灰が降るときに避難指示や除去作業を適切に行えるよう、国の検討会で示された「火山灰警報」や噴火前の情報提供について、情報システムや人員などの体制を確立し、早く運用を始めることも要望した。昼夜を問わず屋外に出なくても降灰の状況を把握できる観測機器を島の内外に設けることや、気象レーダーなどによる噴煙の監視強化と降灰量の評価の検討も挙げている。
防災庁の発足を前に
このほか、火山防災を担う人材の育成・確保に関する特別交付税措置の拡充と要件の緩和、大規模噴火後に降雨のたびに土砂が流れ出すおそれに備えた土砂災害対策の検討、市民や事業者向けの火山防災教育への財政支援を求めた。鹿児島市が実施している火山防災スペシャリストの養成研修を、国が認める研修として位置づけるよう求める項目もある。
立憲民主党の発表によると、党側は11月2日に設置される防災庁の体制も見据え、関係省庁と協力しながら必要な予算の確保や制度の改善に全力で取り組む考えを示した。富士山など全国の火山の事例や教訓を生かし、地域住民の命と暮らしを守る取り組みを党として広く進めていく方針も確認したという。
防災をめぐっては、立憲民主党の水岡俊一代表が9月、内水氾濫の想定図づくり、立憲・水岡代表が政府支援を要求 千葉豪雨は千葉市で平年8月の3倍超の雨で伝えたように、自治体の対策に国の技術・人材・費用面の支援を求めていた。今回の要望は、2027年度予算の編成作業と並行して、各党や関係省庁にどう受け止められるかが問われる。
