2025年(令和7年)中に行われた地方自治体の選挙で、投票が行われずに当選が決まった「無投票当選」が242件あった。総務省が令和8年5月12日に公表した調査結果による。町村長選挙では、任期満了などに伴う一般選挙247件のうち91件で、有権者が投票する機会がなかった。

町村長選挙は247件のうち91件 規模が小さいほど投票がない

総務省の調査は、一般選挙と、補欠選挙・再選挙を分けて件数を数えている。無投票当選242件の内訳は、一般選挙が203件、補欠選挙・再選挙が39件である。

一般選挙でみると、無投票の割合は自治体の種類によってはっきり分かれる。町村長選挙は247件のうち91件で、3件に1件を超える。町村議会議員選挙は164件のうち42件。市区長選挙は251件のうち61件で、町村長選挙より低い。市区議会議員選挙は162件のうち9件にとどまる。

都道府県の選挙では無投票がほとんどない。都道府県知事選挙は9件すべてで投票が行われた。都道府県議会議員選挙は一般選挙が1件、補欠選挙・再選挙が19件で、無投票は補欠選挙・再選挙の1件だけだった。2025年中に行われた地方選挙は、一般選挙が834件、補欠選挙・再選挙が159件である。

つまり、人口の少ない町村の首長選挙ほど、立候補者が定数に届かない状態が起きやすい。町村議会では議員の欠員そのものも増えており、町村議会の欠員222人、前年の184人から増える 議員報酬は月22万2740円で町村長給料の3割 第71回町村議会実態調査で報じたとおり、担い手の確保が課題になっている。

投票が行われない仕組み 公職選挙法第100条

無投票当選は例外的な運用ではなく、法律が定めた手続きである。公職選挙法第100条は見出しを「無投票当選」とし、第4項で、地方公共団体の議会の議員の選挙については「届出のあつた候補者の総数がその選挙において選挙すべき議員の数を超えないとき若しくは超えなくなつたとき」、長の選挙については「候補者が一人であるとき若しくは一人となつたとき」に「投票は、行わない」と規定している。

投票が行われないと決まった場合、同条第5項により、選挙長は直ちにその旨を各投票管理者に通知し、あわせて告示して選挙管理委員会に報告する。そのうえで同条第6項により、選挙の期日から5日以内に選挙会を開き、候補者をそのまま当選人と定める。有権者は、誰を選ぶかを判断する場面を与えられないまま代表が決まることになる。

前年は206件のうち95件 年ごとの単純比較はできない

前年にあたる令和6年中の調査では、無投票当選は205件だった。一般選挙が165件、補欠選挙・再選挙が40件である。町村長選挙は一般選挙206件のうち95件、市区長選挙は173件のうち42件、町村議会議員選挙は105件のうち25件、市区議会議員選挙は74件のうち3件だった。

ただし、年ごとの件数をそのまま並べても傾向は読めない。地方議員と首長の任期は4年で、どの自治体がどの年に選挙をするかが決まっているため、母数となる選挙の数自体が年によって大きく動く。2025年中の一般選挙は834件だが、2024年中は567件しかない。比べるなら、母数に対する割合を見る必要がある。

その目で見ると、市区長選挙は2024年が173件のうち42件、2025年が251件のうち61件で、いずれも4件に1件程度という水準が続いている。一方、町村長選挙は2024年が206件のうち95件で半数近くだったのに対し、2025年は247件のうち91件で3件に1件台に下がった。選挙を行った町村の顔ぶれが違うため、これだけで担い手不足が緩んだとは言えない。

市区町村議員の68.4%が無所属 最も多い党派は公明党

同じ調査は、令和7年12月31日現在で在職する議員と首長が、立候補を届け出た時にどの党派に属していたかも集計している。

市区町村議会議員は全体で2万8684人(前年より256人減)。このうち無所属が1万9619人で68.4%を占めた。前年は2万8940人のうち1万9884人で68.7%だった。党派に属する議員で最も多いのは公明党の2639人(9.2%)で、日本共産党2093人(7.3%)、自由民主党2045人(7.1%)が続く。以下は立憲民主党759人(2.6%)、日本維新の会418人(1.5%)、国民民主党217人(0.8%)、参政党186人(0.6%)、社会民主党75人(0.3%)、れいわ新選組70人(0.2%)、日本保守党7人、諸派556人(1.9%)である。

都道府県議会議員は様子が違う。全体2599人(前年より15人減)のうち無所属は536人の20.6%にとどまり、自由民主党が1267人(48.7%)で半数近くを占める。立憲民主党230人(8.8%)、公明党203人(7.8%)、日本共産党105人(4.0%)、日本維新の会72人(2.8%)、国民民主党42人(1.6%)、参政党9人(0.3%)、社会民主党5人(0.2%)、諸派130人(5.0%)と続く。同じ「地方議会」でも、都道府県では党派に属する議員が8割近くを占め、市区町村では7割近くが無所属という構図になっている。

首長はさらに無所属に寄る。市区町村長1736人(前年より4人減)のうち無所属は1717人で98.9%、党派に属するのは19人(日本維新の会1人、諸派18人)だけだった。都道府県知事は無所属44人(95.7%)で、党派所属は2人(日本維新の会1人、諸派1人)である。

女性議員は市区町村議会で5406人(18.8%)となり、前年の5227人(18.1%)から179人増えた。都道府県議会は381人(14.7%)で前年より1人減っている。女性の知事は山形県、東京都、広島県の3人、女性の市区長は49人(前年より4人増)、女性の町村長は22人(同3人増)だった。

定数を争う選挙が成り立っている自治体では、有権者の判断が議席を分ける。群馬県では館林市議選、定数18に32人 投票率は前回の46.36%から47.61%へ上昇 最下位当選は776票、落選の最高は732票で44票差のように、定数18に32人が立ち、44票差で当落が分かれた例もある。同じ地方議会の選挙でありながら、投票そのものが行われない選挙と、数十票を争う選挙が並存している。