JR北海道は10月31日、宗谷線の天塩中川~問寒別駅間で30日午後10時48分ごろ、旭川発稚内行きの特急「サロベツ3号」が線路内のクマと衝突し、先頭車両の台車が脱線していたと発表した。乗客32人と乗務員にけがはなかった。原因の詳細は調査中で、復旧の見込みは立っていない。音威子府~稚内間の運転見合わせは11月1日も続き、同社は旭川~稚内間で代行バスを走らせる。

非常停止が間に合わず衝突、脱線は翌朝判明 復旧時期は未定

発表によると、列車は旭川を午後8時6分に出た稚内行きの特急サロベツ3号で、キハ261系の4両編成だった。現場は旭川駅を起点に169キロ820メートル付近、天塩中川駅と問寒別駅の間にある。

列車は線路内に立ち入るクマを認めて非常停止の手配を取ったが、クマと衝突した。その際、大きな縦揺れを感知したという。

脱線が確認されたのは一夜明けた31日朝だった。午前6時20分ごろにハンターと関係社員が現地に着いて車両を点検したところ、先頭車両の前側の台車の1軸目が進行方向の右側へ脱線していた。同社が公表した写真には、車輪がレールから外れ、枕木と砂利の上に載っている様子が写っている。

乗客と乗務員にけがはないとしている。衝突から点検までの間に乗客がどのように降車し、移動したかは、発表資料に記載がない。

JR北海道は「詳細は現在調査中」として、衝突の状況や脱線に至った経過をまだ明らかにしていない。発表時点で復旧の見込みは立っておらず、車両をレールに戻す作業や線路の点検に要する期間も示していない。

同社は「早期の復旧を目指して作業を進めて参ります」とコメントしている。11月2日以降の運転計画は、発表資料には示されていない。道北を鉄道で行き来する予定がある人は、JR北海道の運行情報で最新の計画を確かめる必要がある。

11月1日も15本が運休、旭川~稚内間は代行バス

運休は31日、11月1日の両日でそれぞれ15本、影響を受ける人は約400人にのぼる(31日分は雨による運休を含む)。

11月1日の運転計画では、札幌と稚内を結ぶ特急「宗谷」は札幌~旭川間だけを走り、旭川~稚内間は運休する。旭川と稚内を結ぶ特急「サロベツ」は1~4号の全列車が運休する。普通列車は名寄~音威子府間が一部のみの運転、音威子府~稚内間は終日運休となる。

代わりに旭川~稚内間で代行バスを走らせる。下りは2便、上りは1便で、いずれも特急列車と旭川駅で接続する。代行バスはJRの乗車券で利用できる。同社は、天候や道路の状況によって遅れが出ることがあり、大幅に遅れた場合は接続する列車やバスに乗り換えられないこともあるとしている。

便 旭川 稚内 旭川駅で接続する特急
下り1便 9時10分発 14時54分着 宗谷(札幌7時30分発)
下り3便 13時35分発 19時20分着 ライラック17号(札幌12時発)
上り2便 12時21分着 6時36分発 ライラック22号(札幌14時25分着)
11月1日の宗谷線代行バスの時刻出典: JR北海道「宗谷線 天塩中川~問寒別駅間 列車脱線事故について」別紙2

旭川から稚内まで代行バスでは5時間44分かかる。途中、和寒、士別、名寄、美深、音威子府、天塩中川、幌延、豊富、南稚内の各駅に立ち寄る。

事故区間の名寄~稚内、利用は1日252人

宗谷線は旭川と稚内を結ぶ路線で、JR北海道の線区別の資料では旭川~名寄間の76.2キロと、名寄~稚内間の183.2キロに分けて収支を示している。旭川から169.8キロの事故現場は、名寄~稚内間にある。

同社が10月7日に公表した2026年度第1四半期(4~6月)の線区別収支によると、名寄~稚内間の輸送密度(1キロあたり1日平均の利用者数)は252人で、前年同期の258人を下回った。営業収益9000万円に対して営業費用は7億3700万円かかり、営業損益は6億4700万円の赤字だった。100円の収入を得るのに要した費用を示す営業係数は、管理費を含めて817円となる。

旭川~名寄間は輸送密度1047人、営業収益1億3800万円、営業損益は6億2400万円の赤字だった。

運転見合わせが続く音威子府~稚内間では、特急も普通列車も走っていない。天塩中川、幌延、豊富などの駅と旭川・札幌方面との行き来は、復旧までの間、代行バスに頼ることになる。

列車脱線は国の調査対象の事故

国土交通省令の鉄道事故等報告規則は、列車が脱線した事故を「列車脱線事故」と定め、列車衝突事故、列車火災事故などとともに「鉄道運転事故」に位置づけている。

運輸安全委員会設置法施行規則は、このうち列車衝突、列車脱線、列車火災の3種類の事故を、死傷者の有無にかかわらず同委員会が調査する「重大な事故」としている(列車脱線のうち作業中の除雪車に関わるものは除く)。今回の事故はクマとの衝突がきっかけだが、規則上は列車脱線事故として扱われることになる。11月1日未明の時点で、同委員会のホームページに本件の調査に関する掲載は確認できていない。

線路上の障害物との衝突による脱線では、2025年12月に秋田内陸縦貫鉄道の秋田内陸線で、1両編成の列車が橋梁上で倒木と衝突して脱線・転覆し、約10メートル下の地面まで落ちた事故がある。運輸安全委員会の調査報告書は、事故前から同じ斜面で倒木が複数あり、さらに起こり得ると予見できたのに、会社が倒木との衝突で脱線に至る可能性を想定せず、適切な対応をしていなかったことが事故に関与したと指摘した。

クマへの対応では、環境省が市街地での早期発見や追跡にドローンなどの技術を試す事業を始めている(市街地のクマ対策、ドローンやAIカメラの実証に10件 56件から選定 環境省)。