JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)と情報処理推進機構(IPA)が運営する脆弱性対策情報ポータル「JVN」は10月28日、ヤマハのネットワーク製品3つに脆弱性があると公表した。最も深刻なのは無線LANルーター「NWR100」の欠陥で、特定のリクエストを送ると任意のOSコマンドを実行される可能性がある。深刻度を示すCVSSの基本値は、v3.1で10点満点の9.8。ヤマハは対策済みのファームウェアRev.26.00.08を出している。
残る2つは、Windowsパソコンで使うVPN接続ソフト「YMS-VPN8」と、ネットワーク監視ソフト「Yamaha LAN Monitor for Windows」のインストーラの欠陥だ。いずれも悪用されると、パソコン上で高い権限のプログラムを実行される可能性がある。ヤマハも同じ28日、3件それぞれの説明ページを公開した。
小規模オフィス向けルーターに2件
NWR100は、ルーター、無線LAN、リモートアクセスVPN、セキュリティーの機能を1台にまとめた製品だ。ヤマハの製品ページは「概ね20人/30端末以下の小規模オフィスや店舗など」の環境に必要な機能を1台でまかなえると説明している。
JVNによると、影響を受けるのはファームウェアRev.26.00.07とそれ以前で、脆弱性は2件ある。1件目はOSコマンドインジェクション(CVE-2026-97854)で、外部から送り込んだ文字列が機器の内部でOSの命令として実行されてしまう種類の欠陥だ。CVSSの基本値はv3.1で9.8、新しい算定方式のv4.0で9.3。ネットワーク経由で、認証を受けず、利用者の操作も介さずに攻撃できるという評価になっている。
2件目は、設定ファイルを書き出す機能の欠陥(CVE-2026-109822)。この機能で作られたCONFIGファイルを、認証なしで読み取られる可能性がある。CVSSの基本値はv3.1で6.5、v4.0で7.1。
ヤマハの説明ページは、悪用された場合の影響として、機器上での不正なコードの実行、設定の変更、サービス運用妨害(DoS)攻撃などの操作のほか、設定情報の漏えいを挙げた。対象はNWR100だけで、ほかのヤマハ製ルーター、ファイアウォール、UTMアプライアンス、無線LANの親機、L2・L3スイッチは影響を受けないとしている。
管理画面に届く端末なら攻撃できる
攻撃の入り口は、ブラウザーで設定を操作する管理画面(Web GUI)だ。ヤマハは説明ページのFAQで、インターネットから攻撃を受ける可能性について「はい」と答えた。ポートを開けるなどして管理画面を外部から開ける状態にしている場合が該当する。そのうえで「デフォルトの設定ではインターネット側から本製品の Web GUI へアクセスすることはできません」とも書いている。
一方、無線LANで接続した端末からの攻撃については、その端末が管理画面にアクセスできる場合は攻撃を受ける可能性があると答えた。NWR100は店舗やオフィスで無線LANの親機を兼ねるため、来客用や従業員の端末が同じネットワークにつながっていれば、それらの端末が管理画面に届くかどうかが問題になる。
対策済みのRev.26.00.08では、脆弱性に当たる不正なリクエストを受け付けないようにした。ヤマハは最新ファームウェアへの更新を求めている。更新が難しい場合の回避策として、IPフィルターの設定や管理画面へのアクセス管理の設定で、管理画面にアクセスできる端末やアクセス元を制限するよう挙げた。JVNも同じ内容を回避策として示している。
VPNソフトは、パソコンを操作できることが条件
YMS-VPN8は、ヤマハのVPNルーターやファイアウォールとWindowsパソコンの間を、L2TP/IPsecという方式で暗号化してつなぐためのソフトだ。外出先から社内のネットワークに接続する用途に使う。パソコンにライセンスを付ける「YMS-VPN8」と、ルーター側に同時接続数分のライセンスを付ける「YMS-VPN8-CP」の2種類がある。
欠陥は、YMS-VPN8がWindowsに登録するサービスの設定で、実行ファイルのパスが引用符で囲まれていなかったことだ(CVE-2026-97860)。パスに空白が含まれると、Windowsが途中までを別のファイル名と解釈する場合があり、そこに不正なプログラムを置かれると、それが代わりに起動されうる。JVNによると、システムドライブへの書き込み権限を持つ利用者によって、SYSTEM権限で任意のコードを実行される可能性がある。CVSSの基本値はv4.0で8.4、v3.0で6.7。
対象はVer.1.04.00とそれ以前で、Ver.1.07.00で修正された。ヤマハは、悪用には攻撃者がそのパソコンにログインするなど、あらかじめ操作できる状態にあることが必要で、「インターネットから直接攻撃される脆弱性ではありません」と説明している。ルーターやVPN装置自体の動作には影響しない。一方で、すでにインストールしている環境も影響を受ける可能性があるとし、対策版への更新を勧めた。アプリの画面を開いていないことだけでは影響がないとは判断できないとも書いている。説明ページの公開時点で、攻撃の発生は確認できていないという。
回避策としては、パソコンを他の利用者と共用しない、信頼できない利用者にログインさせない、管理者権限を必要のない利用者に与えない、入手元が不明なファイルやプログラムを実行しない、の4点をJVNとヤマハが挙げた。ヤマハはこれに、ウイルス対策ソフトなどで不審なファイルがないかを確かめることを加えている。
監視ソフトはインストール時だけの問題
Yamaha LAN Monitor for Windowsは、パソコン上からヤマハのスイッチや無線LANの親機の情報、接続している機器を監視・制御するソフトだ。ネットワークのつながり方を図で示したり、ネットワークカメラなどの端末が動いているかを確かめたりできる。
欠陥はソフト本体ではなくインストーラにある(CVE-2026-103665)。インストーラがDLLと呼ばれる部品ファイルを読み込む際の検索の順番に問題があり、インストーラと同じフォルダーにある特定のDLLを読み込んでしまう。JVNによると、細工されたDLLを同じフォルダーに置いた状態でインストーラを起動すると、管理者権限で任意のコードを実行される可能性がある。CVSSの基本値はv4.0で8.4、v3.0で7.8。
対象はVer.1.9.3とそれ以前で、Ver.1.10.1で対策した。ヤマハは、正常な手順でインストールを終えた環境はこの問題の条件に当たらず、この脆弱性のためだけに再インストールや更新をする必要はないと説明している。今後インストールする場合は、公式サイトで公開している最新版を使うよう求めた。回避策は、ヤマハの公式サイトから入手したインストーラだけを使い、配布元が不明なものや、第三者から渡されたZIPファイルに入ったインストーラを使わないことだ。
3件とも外部の研究者が報告
3件はいずれも外部の研究者が見つけた。NWR100の2件は株式会社ゼロゼロワンの研究者がJPCERT/CCに報告し、JPCERT/CCが開発者との調整を行った。YMS-VPN8とLAN Monitorの2件は、GMOサイバーセキュリティ byイエラエの研究者が「情報セキュリティ早期警戒パートナーシップ」に基づいてIPAに報告し、JPCERT/CCが調整した。JVNが同じ時期に公表した製品では、富士電機の操作盤画面ソフト「V-SFT」に欠陥7件 細工ファイルで任意コード実行のおそれもある。届け出の仕組みについては脆弱性の届出、10月から内閣府へ通知 IPAが改訂ガイドライン公開 悪用の疑いか影響大なら対象で扱った。
| 製品 | 種類 | 影響を受ける版 | 対策版 | CVSS v3 |
|---|---|---|---|---|
| NWR100 | 無線LANルーター | Rev.26.00.07以前 | Rev.26.00.08 | 9.8/6.5 |
| YMS-VPN8/YMS-VPN8-CP | VPN接続ソフト | Ver.1.04.00以前 | Ver.1.07.00 | 6.7 |
| LAN Monitor for Windows | 監視ソフト | Ver.1.9.3以前 | Ver.1.10.1 | 7.8 |
出典: JVN(JVNVU#91027179、JVN#30675482、JVN#23695234)
ヤマハの3つの説明ページは10月28日に公開され、29日にJVNへのリンクとCVE番号が書き加えられた。3件のうち、ネットワーク越しに攻撃される可能性があるのはNWR100の欠陥だけで、残る2件は攻撃者がパソコンを操作できることや、細工したファイルを利用者に実行させることが前提になる。NWR100の利用者にとっては、ファームウェアの版を確かめ、Rev.26.00.07以前であれば更新することが第一の対策になる。
