アマゾンジャパンは10月29日、生成AI(人工知能)を搭載した音声アシスタント「Alexa+(アレクサプラス)」の国内での提供を、早期アクセスの形で始めた。従来のAlexaのように決まった言い回しの指示に応じるだけでなく、自然な会話から利用者の意図をくみ取り、買い物の注文や家電の操作、スケジュールの管理などを代わりに行うという。早期アクセスは無料で、終了後は月額3000円のサブスクリプション(定額制)サービスになる。Amazonプライム会員は会員特典として追加料金なしで使える。同日、Alexa+向けに設計したスマートクロック「Echo Time」と、スマートスピーカー「Echo Dot」の新型も発売した。
会話から意図をくみ取り、作業を代行
同社の発表によると、Alexa+は「質問に答えるだけのチャットボットではない」と位置づけられ、利用者に代わって作業を実行する点を特徴に掲げる。例として、「エアコンの温度を低くして」と直接頼まなくても「暑くなってきた」と言えばエアコンの温度を調整すること、贈り物を提案して実際に注文すること、学校への連絡メールを代わりに送ることを挙げた。家電の操作には、Alexa対応のスマートホーム製品(別売)と事前の設定が必要で、エアコンなどが対応していない場合はAlexa対応のスマートリモコンを使う必要があると注記している。
使うほど利用者の好みを覚える仕組みも備える。好みの音楽や苦手な食べ物、家族の食事の事情(菜食である、特定の野菜を食べないなど)を覚えて、レシピや店の提案に反映するという。声で個人を識別する音声IDと、カメラで識別するビジュアルIDで家族を見分ける。
日本向けの調整として、同社は「空気を読む」文化への対応を挙げた。発表では、「大丈夫」という一語が「問題ありません」「はい、お願いします」「いいえ、結構です」のいずれにもなり得る例を示し、Alexa+はこうした違いを理解できるよう設計したと説明している。開発には日本のチームの意見も取り入れたという。
利用できる場所は、スマートスピーカーのEchoシリーズ、テレビ向け端末のFire TVのほか、スマートフォンのAlexaアプリと、ブラウザーで開く「alexa.jp」にも広がる。端末を移っても会話の続きから再開でき、台所のEcho Showで調べたレシピの話を、外出先のスマートフォンで続けられるとしている。
予約や出前の連携は「今後提供予定」
外部サービスとの連携については、発表の時点で使えるものと、これから提供するものが分かれている。同社は、グルメサイト「食べログ」を通じたレストランの予約、「Uber Eats」での料理や食料品・日用品の配達、「出前館」での料理の配達、「チケットぴあ」でのチケット購入について、いずれも「提供可能となる予定」と記しており、提供開始の時期は示していない。
このほか、冷蔵庫にある材料を伝えると料理動画サービス「デリッシュキッチン」からレシピを紹介する機能、音楽配信のAmazon Music、Spotify、動画配信のPrime Videoとの連携、SwitchBotやパナソニックなどのスマートホーム機器との連携を挙げた。ただし音楽や動画は、利用者の契約状況によって使える内容が異なり、別途の登録や料金が必要な場合があると注記している。
スマートホームの分野では、日本の利用者が過去12か月にAlexaを通じて26億回以上の家電操作を行ったと公表した。Alexa+では「暗いな」と言えば今いる部屋の照明を付け、「ちょっと寒い」と言えばエアコンの暖房を調整するといった使い方を想定する。家電メーカーが自社製品をAlexa+とつなぎやすくする開発者向けの道具「Smart Home AI Toolkit」も用意した。
利用者の会話の扱いについては、「Alexaプライバシーダッシュボード」でAlexa+とのやり取りを一か所で確認・管理でき、聞き取った内容の確認や音声録音の保存期間の変更ができるとしている。
料金はプライム会員かどうかで分かれる
早期アクセスは、利用者の反応を集めながら改善を続けるための期間と位置づけられ、無料で使える。対象は、Alexa+に対応するEcho、Fire TV、Fire TV搭載のスマートテレビ(パナソニック、JVC。一部機種を除く)を新たに買った人と、対応端末をすでに持っている人で、同社が順次案内を送る。Amazon.co.jpの専用ページから申し込んで案内を受け取ることもできる。早期アクセスがいつ終わるかは示していない。
早期アクセスが終わると、Alexa+は月額3000円のサブスクリプションになる。一方、Amazonプライム会員は特典として追加料金なしで使える。Amazon.co.jpのプライムの案内ページによると、プライムの会費は月額600円、年額5900円(学生向けのPrime Studentは月額300円)だ。Alexa+だけを契約する料金は、プライムの月額会費の5倍にあたる。
| 項目 | 料金(税込み) |
|---|---|
| Alexa+(早期アクセス中) | 無料 |
| Alexa+(早期アクセス終了後・非プライム会員) | 月額3000円 |
| Amazonプライム会費(月間) | 月額600円 |
| Amazonプライム会費(年間) | 年額5900円 |
| Echo Time | 3万5980円 |
| Echo Dot(新型) | 1万7980円 |
出典: アマゾンジャパン「Alexa+を国内で提供開始」「Echo TimeとEcho Dotを発表」、Amazon.co.jp「Amazon Prime」
この料金の組み立ては、先行した米国と同じ形だ。米アマゾンは2025年2月26日にAlexa+を発表し、料金を月額19.99ドルとしたうえで、プライム会員は無料で使えるとした。米国の発表ページは2026年7月21日に利用状況と機能に合わせて更新されており、そこでは利用中のAlexa対応端末が世界で6億台を超えると記している。
新型Echo2機種も同日発売
Alexa+に合わせて発売した2機種のうち、Echo Timeは寝室での利用を想定した置き時計型の端末で、価格は3万5980円。半球形の本体に3.2インチの円形タッチ画面を備え、時計の表示は100種類以上の組み合わせから選べる。超音波で利用者の呼吸の波形と端末までの距離を検知する睡眠モニターを持ち、眠りの状態に合わせて起こすスマートアラームの機能がある。この機能にはAlexa+が必要で、早期アクセスの終了後、プライム会員でない人は有料の登録が要ると注記されている。同社は、睡眠モニターは健康状態の診断や治療を目的とするものではないと断っている。プライバシーと睡眠への配慮からカメラは載せておらず、ビデオ通話には対応しない。
新型のEcho Dotは1万7980円。球形の小型スピーカーで、シリーズで初めてスマートホームのハブ機能を内蔵した。自社開発のAZ3チップに会話の検出精度を高めるAI処理装置を組み込み、周囲の雑音を取り除くとしている。米アマゾン傘下のeeroのWi-Fi中継機能も内蔵し、既存のeeroのネットワークの範囲を最大92平方メートル広げる。色はEcho Timeが3色、Echo Dotが4色。
「今後」の機能と課金の時期をどう見るか
今回の発表は、音声アシスタントが質問に答える道具から、利用者の代わりに注文や操作を実行する道具へ広がることを示した。代わりに動く範囲が広がるほど、利用者が確かめる場面は減る。同社は買い物について「注文前にはお客様に確認します」と記しており、この確認の手順が実際の利用でどこまで徹底されるかが、利用者が安心して任せられるかどうかを分ける。
AIが利用者に代わって動く仕組みでは、どの操作に人の確認を挟むかが設計の中心になる。行政の側でも同じ問題が議論されており、その経過は政府の生成AI指針、AIエージェントのルール整備へ 送金など取り消せない操作に職員の確認案で伝えている。Alexa+では、注文のほか学校への連絡メールの送信も代行の例に挙がっており、送る前に利用者が文面を確かめられるのかは発表からは読み取れない。
一方で、国内の利用者が関心を寄せやすいレストラン予約や出前の連携は、いずれも提供時期が示されていない。早期アクセスの終了時期も未定のため、プライム会員でない利用者は、無料の期間に何が使えるのかと、月額3000円を払う段階で何が使えるのかを見比べられない。同社は「今後も新しい機能を順次追加していきます」としている。有料化の前に、連携の開始時期と早期アクセスの終了時期を利用者に示すことが求められる。
