日本銀行は10月1日午前8時50分、9月17・18日に開いた金融政策決定会合の「主な意見」を公表した。この会合で日銀は政策金利を1.00%程度から1.25%程度へ引き上げている。公表された意見には、追加の利上げに前向きな発言が並んだ。

「主な意見」とは何か

「主な意見」は、会合でのやり取りを日銀が外に出す資料のうち、最も早く出るものだ。

作り方は資料の脚注に書かれている。まず各政策委員と政府からの出席者が、会合で自分が述べた意見を、決められた文字数以内に自分で要約して議長である総裁に提出する。議長はそれを自身の責任で項目ごとに編集する。この二段階でできている。

そのため、個々の発言がどの委員のものかは記されていない。発言者と内容を結びつけたより詳しい記録は「議事要旨」で、こちらは後日あらためて公表される。日銀の日程一覧によると、9月17・18日の会合の「主な意見」は10月1日の公表で、次回の会合は10月29・30日に開かれる。

物価が2%に達したかどうかで見方が割れた

物価の項目では、基調的な物価上昇率が「概ね2%に達している」とする意見と、政府の施策の効果もあって消費者物価の前年比は「足もとは1%台後半に止まっている」とする意見が並んだ。

2%に達しているかどうかの判定自体が難しいとする意見もあり、「関連する指標の中には2%を超えるものも、下回るものもある」としたうえで、「2%付近にあることを前提に、どのようにすれば2%にアンカーさせられるかを議論すべきである」と述べている。物価が2%に届いたかを見極めるより、2%に固定する手立てを論じるべきだという立場だ。

値上げの先行きについては、「包装材・食品トレーなどの価格上昇に加え、最近の物流費の上昇加速は、企業の価格転嫁を容易にし、今後の最終消費財の値上げを後押しすることが見込まれる」との意見が出た。

「早めにゴールに近づけて」「ペースを速めざるを得ない」 到達点の中立金利にも注文

金融政策運営の項目には、利上げを続ける方向の意見が多く並んだ。

ある意見は「今後の政策運営については、経済・物価の想定外の動きや環境変化に柔軟に対応できるよう、政策金利を早めにおおよそのゴールに近づけて、上下双方向に機動的に動けるような状況にしておくことが望ましい」とした。別の意見は、物価が2%目標と整合的に推移し金融環境が緩和的であれば利上げで緩和度合いを調整する必要があるとしたうえで、「物価上振れの兆候がみえれば、そのペースを速めざるを得ない」と述べている。

経済情勢の項目では「物価上昇圧力の高まりとそれに伴うインフレ期待底上げやグローバルな利上げ局面への転換など、わが国を取り巻く金融環境に大きなレジーム転換が生じており、その確度はここ数か月で強まっている」という表現も出た。

今回の利上げは6月の利上げから3か月後にあたる。この間隔の短さに触れた意見もあり、「実現すれば従前より利上げの間隔が短くなるが、想定より経済が底堅かったためである」と説明した。

ただし、速度を戒める意見も載っている。「基調的な物価上昇率は、ほどなく2%に達することが見込まれる。ビハインド・ザ・カーブに陥るような加速感はなく、慌てる必要はないが、物価が過度に上昇を続けないよう、適切な政策運営を進めるべきである」というものだ。ビハインド・ザ・カーブは、中央銀行の利上げが物価上昇に追いつかず後手に回る状態を指す。

利上げの到達点にあたる「中立金利」(景気を温めも冷やしもしない金利の水準)についても、複数の意見が出た。

一つは「今後の利上げを判断する際には、中立金利の推計レンジを念頭に置くことも重要であるが、物価上昇リスクが相応にあることを踏まえれば、過度に慎重になることなく、一方で分析の視野を広げ解像度も上げながら、引き続き適時に対応するべきである」とした。もう一つは「海外動向によっては、中立金利が事前の推計値や市場の見込む水準から上振れる可能性もある。先験的に中立金利を志向するのではなく、利上げごとに企業・家計や金融機関の行動や金融環境等を通じて緩和度合いを見極める必要がある」と、推計値を先に置くやり方を避けるよう求めた。

中立金利の推計の幅については、会合の直前に日銀の増審議委員「さらなる利上げが金融正常化の完成に求められる」 政策金利1.0%は中立金利の推計1.1〜2.5%を下回る 17〜18日に決定会合で伝えている。

企業への影響を取り上げた意見もあった。「現状、これまでの利上げや当面の更なる利上げに伴う影響は限定的との声が大半であり、金利負担から設備投資を控えるとの声はごく一部に止まる」とし、金融環境の評価には企業の声が重要だとしている。

反対した2人の意見も併記

9月の会合の採決は賛成7、反対2だった。「主な意見」にも、反対側の考えが載っている。

一つは「消費者物価の前年比が2%を下回っており、足もとの経済の状況も、必ずしも強いとはいえない状況にあることを踏まえると、今回の決定会合では政策金利を据え置くことが望ましいと考える」。もう一つは「経済・物価情勢が、現時点ではこれまでと比べて大きく加速している状態にはないと考えられるもとで、このタイミングでの利上げは適切ではないと考える」というものだ。

9月18日の公表文によると、この2人は浅田委員と佐藤委員で、反対理由もほぼ同じ内容が記されている。決定そのものの中身は日銀、政策金利を1.00%から1.25%程度へ引き上げ 賛成7・反対2 借入金利が同じだけ上がると1社平均で年46万円の利息負担増で伝えた。

政府「既往の利上げの累積的な影響を点検してほしい」

会合には財務省と内閣府の出席者も加わっており、その発言も「主な意見」に載る。

財務省の出席者は、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な運営を期待するとしたうえで、「政策金利変更のご提案については、本会合において適切にご判断いただきたいが、市場等には丁寧に政策趣旨を説明していただきたい」と述べ、今回の変更が経済・物価に与える影響を丁寧に点検するよう求めた。

内閣府の出席者は、説明責任を果たすよう求めるとともに「既往の利上げが累積的に与える影響について十分点検していただきたい。今後は、日本銀行が推計した中立金利も踏まえて検討していく必要があるのではないかと考えている」とした。景気や市場に過度な変動が生じた場合は日銀の主体的かつ適切な対応が重要だ、とも述べている。1回ごとの利上げ幅ではなく、積み上がった影響を見るよう促した形だ。