厚生労働省は9月18日、有料老人ホームに新しく導入する「登録制」について、登録の基準案を有識者検討会に示した。ホームと同じ系列の介護サービス事業所や医療機関を使うことを入居の条件にすることを禁じ、居室は原則個室で入居者1人当たり13平方メートル以上とする。2026年6月25日に公布された改正老人福祉法に基づく制度で、厚労省は現存する有料老人ホームの大半が対象になると見込んでいる。

いまは法令上の人員・設備基準がない

有料老人ホームは、老人福祉法第29条に基づく高齢者向けの住まいだ。高齢者を入居させて①食事の提供②入浴・排せつ・食事の介護③洗濯・掃除などの家事④健康管理――の4つのうちどれか一つでも提供していれば、名称にかかわらず有料老人ホームに当たる。設置するには都道府県知事らへの事前の届出が必要だが、設置主体は問われず、株式会社でも社会福祉法人でも開ける。

ホームは大きく2種類に分かれる。介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受け、ホームの職員が介護を直接提供する「介護付き」と、指定を受けず、入居者が外部の訪問介護などを使う「住宅型」だ。厚労省の資料によると、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を含めた施設数は約2万5千棟、定員は約95万人。このうち住宅型が約2万棟・約63万人、介護付きが約5千棟・約32万人を占める。

制度上の扱いには大きな差がある。介護付きは介護報酬の仕組みを通じて人員や運営の基準が課されるのに対し、住宅型には運営・人員基準がなく、「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」という法的な拘束力のない指針があるだけだった。一方で入居者の中身は近づいており、住宅型でも要介護3以上の人が半数を超える。介護を担う家族の高齢化も進み、老老介護、75歳以上同士が37.1%で2001年以降で最高 2025年国民生活基礎調査 終日介護する人の64.6%は配偶者で示したとおり、自宅で支えきれずに住まいを探す人は増えている。

系列事業所の利用を入居条件にすれば登録を拒否

登録基準案の柱は、いわゆる「囲い込み」の禁止だ。囲い込みとは、ホームが併設・隣接する自社系列の介護サービス事業所の利用を入居者に事実上強いて、必要以上のサービスを使わせる状態を指す。厚労省の調査では、住宅型有料老人ホームの79.6%が併設・隣接の介護サービス事業所があると答えている。

案では、次のような条件を付けたホームは「不当な条件」を付けたとして登録の基準を満たさないとする。

  • ホームと併設・隣接、あるいは同一・関連法人や提携関係にある介護サービス事業所、居宅介護支援事業所、医療機関、訪問看護事業所、薬局の利用を契約の条件とすること
  • かかりつけ医や担当ケアマネジャーの変更を強要すること
  • これらの事業所を使う場合に家賃を安くするなどの優遇をすること
  • 入居者が入院したり心身の状態が変わったりしたことを理由に、合意なく居室を移したり契約を解約したりすること

ただし、地方などで利用できる事業所が限られ、その事業所を使うことが事実上避けられない場合は、それ自体が不当な条件とは解されないとした。あわせて、入居契約とケアマネジメント契約が別であることを示す手順書の作成と入居希望者への明示、施設長への研修、近隣の介護サービス事業所の情報提供、住まい事業と介護サービス事業の会計の区分も求める。

夜間はオンコール、既存建物には当面の特例

人員では、管理者と生活相談員を1人以上置き、支障がなければ他施設との兼務を認める。介護・看護職員は、提供する介護の内容に応じて安定的な提供に支障がない体制を確保し、原則として夜間を除きホームの職員が常駐する。夜間・緊急時は、入居者からの連絡や緊急通報装置による状況把握に基づいて職員が出勤できる「オンコール」体制でよいとした。介護付きに義務づけられている「夜間は常に1人以上の職員を確保」より緩い水準で、検討会では自治体側から「夜間の対応が緩和されてしまう」との指摘も出ている。

設備は、建築基準法と消防法の規制に適合したうえで、居室は原則個室・1人当たり13平方メートル以上、廊下は車いすで安全に移動できる幅、浴室や便所に緊急通報装置を設けることなどを求める。既存の建物を使っているホームで基準を満たせない場合は、代わりの措置をとって入居者に説明することを条件に、当面の特例を設ける。検討会では、1人当たりの床面積が10平方メートルに満たない住宅型の例も報告されており、基準を厳しくしすぎると既存ホームが締め出されるとの懸念が示されていた。

運営面では、虐待の防止と身体的拘束の適正化、事故発生時の対応、災害・感染症を想定した業務継続計画(BCP)の策定、協力医療機関を定めること、みとりまで行うホームはみとり指針を整えることなどを求める。新たに義務を課すものには経過措置期間を設ける。

「自立・軽度のみ」は1.6%、大半が登録対象に

登録制の対象は、中重度の要介護者に加え、認知症高齢者の日常生活自立度がⅢ以上の人や、重度の医療ニーズを持つ人を入居対象とするホームとする案が示された。現に中重度の人が入居していなくても、中重度になっても住み続けられるとしているホームは対象に入る。

厚労省の集計では、住宅型有料老人ホームと有料老人ホームに該当するサ高住は合わせて1万9954件。このうち中重度・難病者らを中心に受け入れるホームが5963件(29.9%)、要介護・要支援者を幅広く受け入れるホームが6796件(34.1%)、自立・軽度者が中心だが要介護者も受け入れるホームが6873件(34.4%)を占める。自立者と軽度者だけを受け入れるホームは322件(1.6%)にとどまり、地方の町村部などにある小規模なホームが多い。数字の上でも、登録制の網はほぼ全体にかかることになる。

検討会は10月ごろに開く次回会合で取りまとめ、秋に社会保障審議会介護保険部会へ報告したうえで、厚労省が年内に政省令を公布する予定だ。登録制の施行日は、法律の公布から2年を超えない範囲で政令で定める。高齢者向けの住まいをめぐっては、施設の整備費を補助する介護の基金、1回目の内示は276億2500万円 神奈川が53億円で最多、東京など16都県はゼロ 今回はすべて施設整備分で人材確保分なしのような国の支援も動いており、登録制はその受け皿の質をそろえる側の見直しにあたる。