国民生活センターは10月21日、子どもが家庭のコンセントや電源コードで感電したり、やけどを負ったりする事故への注意を呼びかけた。2021年4月から2026年7月末までに医療機関から寄せられた15歳以下の子どもの事例は38件で、このうち28件はコンセントの差込口に針金やヘアピンなどを直接差し込んで受傷したものだった。入院を要した事例は8件あった。センターは、保護者がそばにいても事故は起きているとして、コンセントまわりの環境を見直すよう求めている。
事例は、消費者庁と国民生活センターが2010年12月から共同で運営する「医療機関ネットワーク」に寄せられた。生命や身体に被害が生じる事故に遭い、参画する医療機関を受診した人の情報を集める仕組みで、今回の38件はこの公表のために特別に精査して数えたものだという。センターは、全国の消費生活センターに寄せられた相談を基にした危害・危険情報も公表している(商品やサービスでけが・体調不良1万3432件 美容医療を含む「医療サービス」は1258件から1442件に増え2位に)。
4歳が最多、9歳以下が9割近く
38件を年齢別にみると、4歳が8件で最も多かった。9歳以下ではすべての年齢で報告があり、全体の9割近くを9歳以下が占めた。
原因で最も多かったのは、コンセントの差込口に針金やヘアピンなどを入れた事故の28件で、全体の約7割にあたる。コンセントにつないだ電源コードなどの破損部を通じて受傷したものと、充電ケーブルなどをコンセントに差し込む際に受傷したものがそれぞれ4件、家電製品が壊れて本来は露出しないはずの電極に触れたものが2件だった。
子どもの感電・熱傷事故の原因(2021年4月〜2026年7月末、38件)(件)
数値で見る(単位: 件)
| 項目 | 件 |
|---|---|
| 異物挿入 | 28 |
| コード破損 | 4 |
| 充電端子 | 4 |
| 家電破損 | 2 |
治療の状況では、通院治療が必要だった事例が14件(37%)で最も多く、入院は8件(21%)だった。治療の必要がなかったのは10件(26%)、1回の治療で済んだのは4件(11%)。センターは、熱傷面積が体の1%未満でもⅢ度(皮膚の深い層まで損傷が及ぶ段階)に至った事例があったとして、外見上は小さなやけどでも重症の場合があると指摘している。
Uピンや釣り具、両端の違うケーブルも
資料には具体的な事例が並ぶ。2024年5月には1歳6カ月の女児がコンセントにUピンを差し込み、指と手のひらに熱傷を負った。皮膚の一部は黒く変色していた。2025年10月には2歳11カ月の女児が金属製の釣り具をコンセントに差し込み、人差し指の付け根に深達性Ⅱ度の熱傷を負った。コンセントの下の畳は焼け焦げていたという。
2026年6月には、3歳9カ月の男児が両端の端子の形が違うケーブルを両手に持ってコンセントに差し込み、Ⅱ度の熱傷を負った。不整脈や体の深い部分の損傷がないかを調べるため3日間入院している。延長コードの差込口にヘアピンを入れた1歳7カ月の女児や、両親が寝ている間に、コンセントに差さったまま壊れていたACアダプタに触れて1%未満ながらⅢ度の熱傷を負った1歳5カ月の女児の例もあった。
感電によるけがには、電流が体内を流れて生じる「電撃傷」と、金属を差し込んだときのショート(短絡)による火花や高熱で生じる「熱傷」がある。センターによると、電撃傷は皮膚だけでなく筋肉や神経、心臓などの深い組織に及ぶことがあり、心臓に影響すると不整脈が起き、重い場合は心停止につながるおそれもある。宮崎県立宮崎病院救命救急科の長嶺育弘医長は資料へのコメントで、今回の事例は比較的軽症で済んだものが中心だとしたうえで、まずブレーカーを落とすか電源プラグを抜いて救助者が感電しないようにし、意識や反応がない場合は119番通報するよう呼びかけた。
保護者の72%が「近くにいた」
センターは2026年8月、9歳以下の子どもを育てている、または過去3年以内に育てていた保護者のうち、子どもが感電した、あるいは感電しそうになった経験のある500人にインターネットでアンケートを行った。感電した、またはしそうになった経験のある保護者だけに聞いた調査で、保護者全体の傾向を示すものではない。
その際に保護者がどこにいたかを聞くと、「すぐ近くにいた」が39.0%、「同じ部屋にいた」が33.0%で、合わせて72%に上った。場所は自宅が69.0%で最も多く、時間帯は夕方(17〜20時)が37.4%、日中(9〜17時)が36.0%だった。
当時の環境(複数回答)では「コンセントが子どもの手の届く位置にあった」が52.6%で最も多く、「コンセントカバーやシャッターが付いていないコンセントを使っていた」が41.4%、「延長コード・タップを使っていた」が26.8%と続いた。子どもの状態では「濡れた手で触っていた」が42.8%あった。関係した物は壁などのコンセントが52.8%で、延長コードが27.6%、電源プラグが23.8%、スマートフォンの充電ケーブルなどの関連製品が12.6%だった。
実際に感電したと答えたのは500人中190人(38.0%)。このうち「やけどのような症状」があったのは49人だったが、医療機関を受診したのは27人にとどまった。事故の前に、コンセントに異物を入れることを「非常に危険だと思っていた」保護者は28.8%、「やや危険だと思っていた」は19.2%で、危険を知っていても事故は起きていた。事故後に、関係した製品を「そのまま使っている」との回答も27.6%あった。
消費者庁は2021年から3度注意喚起
子どもとコンセントの事故は、これまでも繰り返し注意が呼びかけられてきた。消費者庁は「子ども安全メール」で2021年10月に「コンセントでの感電事故に注意!」、2023年1月に「コンセントやプラグでの感電に注意!」、2024年1月に「スマホ等の充電器の取扱いに注意-感電や火災等の事故も」を出している。2021年の回では、ヘアピンなどの金属をコンセントに差して感電した事故の情報が医療機関から寄せられているとして、金属製の物を子どもの手の届かない場所に置き、使っていないコンセントにはキャップを付けるよう求めていた。
それでも事故は続いている。資料にコメントを寄せた電気安全環境研究所の加藤正樹理事は、家庭のコンセントや電気製品の安全設計は大人の通常の使い方と、ある程度予測できる範囲の誤使用を前提にしていると説明した。そのうえで、近年普及したUSB Type-Cなどの端子は、形状によってはコンセント内部の金属端子に届く可能性があると指摘している。
国民生活センターは、今回確認された状況は、製品の安全を確保する考え方で、メーカーが備えるべき「予見可能な誤使用」の範囲が変わってきたことにあたるとみている。資料では、子どもの安全に関する日本産業規格(JIS Z 8050)が、コンセントのように開口部が必要な製品ではシャッターなどで充電部への接近を防ぐ方法を挙げていることも紹介した。
業界に構造の改善、行政に啓発の充実を要望
センターは消費者に対し、▽コンセントや延長コード、電源タップを子どもが触れにくい位置に置き、コード類を垂らしたままにしない▽コンセントカバーやキャップを使う▽クリップやヘアピン、鍵などの金属製品を手の届かない場所に保管する▽コンセントの穴に物を入れない、プラグの抜き差しを子どもだけでしないと繰り返し教える――ことを勧めている。事故の後は、症状が軽く見えても医療機関への相談や受診を検討するよう求めた。
業界には、子どもの不用意な接触や異物の挿入を防ぐ構造の導入や、延長コードなどが壊れたときの危険を減らす設計の検討を要望した。要望先は日本配線システム工業会、日本電機工業会、家電製品協会の3団体。行政に対しては、こども家庭庁と経済産業省に、子どもの行動の特徴や家庭の環境を踏まえた予防策の推進と、家庭でできる安全対策の情報提供を求めた。消費者庁や文部科学省、厚生労働省、日本小児科学会などにも情報を提供している。
