国民生活センターは10月20日、同センターの名をかたる「最終確認通知書」と題したハガキが届いたという相談が、全国の消費生活センター等に寄せられているとして注意を呼びかけた。同センターは「『最終確認通知書』のようなハガキを消費者に送付することは絶対にありません」とし、受け取っても連絡せずに無視するよう求めている。お金を要求されるなど不審な点があれば、最寄りの消費生活センターに相談するよう呼びかけた。
「訴状申請」「差押さえ」と書いて電話を促す
同センターが公表した相談事例によると、80歳代の男性の自宅に、国民生活センターを差出人とする「最終確認通知書」というハガキが届いた。相談は2026年10月に受け付けた。男性は、契約内容や担当者名が書かれておらず、なぜハガキで届くのかと不審に思い、記載された番号には電話しなかった。
同センターは実際に届いたハガキの画像と文面を公表している。冒頭に「令和8年」の年号と「記号番号」が印字され、本文は「貴方が契約者として登録されている当該会社への未納料金(契約不履行)に対して管轄裁判所へ訴状申請された事をここに通知致します」と始まる。どの会社の、どの契約の、いくらの未納料金なのかは書かれていない。
続けて「訴訟内容や取り下げについてのご相談は担当職員が詳細をお調べ致しますので記号番号をお伝え下さい」と、受け取った人から電話をかけさせる。連絡しない場合については「管轄裁判所から口頭弁論呼出状送達後に出廷となります」と書き、「記憶に無いからと裁判を欠席された方が後日執行官立会いのもと給料や財産の差押さえをされる事例が御座いました」と、差し押さえにも触れている。末尾には「万が一身に覚えが無い場合、早急にご連絡をお願いします」とあり、身に覚えがない場合にも電話するよう求めている。
ハガキには受付時間(平日の午前9時から午後5時)と「050」から始まる相談窓口の番号、「東京都目黒区三田」の住所、「国民生活センター」の名称が並ぶ。国民生活センターの所在地は神奈川県相模原市中央区(相模原事務所)と東京都港区高輪(東京事務所)で、ハガキの住所とは異なる。
本物の訴状は「特別送達」の封書で届く
ハガキは裁判の手続きを持ち出しているが、正式な裁判手続きの書類はハガキでは届かない。国民生活センターは2019年2月の注意喚起で、「正式な裁判手続では、訴状は、『特別送達』と記載された、裁判所の名前入りの封書で郵便職員が直接手渡すことが原則となっており、ハガキで郵便受けに投げ込まれることはありません」と説明している。
裁判所も、裁判所や職員の名称を勝手に使った請求書などが送られる例があるとして、ウェブサイトで注意を呼びかけている。「裁判所の職員が電話で金銭の支払いを指示することもありません」とし、不審な電話は警察に連絡するよう求めている。2025年11月には「裁判所書記官室」の名前を使い、訴訟が起こされたと知らせるはがきが送られてきた例を掲載した。「特別送達」と書かれた封筒が実際には普通郵便(速達)で届いた例も載せている。
一方で裁判所は、本物の裁判所の手続きが架空請求に悪用される場合があることにも触れている。支払督促は、要件を満たしていれば相手方の言い分を聞かずに発せられて郵便で送られ、相手方が異議を申し立てて初めて請求が認められるかどうかの審理に入る。少額訴訟も、訴状が出された段階では架空請求かどうか裁判所には分からず、要件を満たせば訴状が相手方に送られる。このため裁判所は、裁判所からの郵便物は必ず内容を確かめ、不審な点があれば、記載の電話番号が偽物でないかを電話帳などで確かめたうえで、裁判所に直接問い合わせるよう求めている。書面を裁判所へ持参してもよいとしている。
名前と題名を変えて繰り返される「通知書」
国民生活センターをかたるハガキは今回が初めてではない。同センターの特集ページには、令和3年の日付が入った「確認通知書」が載っている。差出人は「独立行政法人 国民生活相談センター」で、訪問販売会社が未納料金などを理由に簡易裁判所へ訴訟を起こしたと告げ、連絡がなければ「裁判の日程を決定する執行が執り行われます」と書いていた。2024年8月にも、「国民生活相談センター」から「紛争問題確認通知」「消費者問題確認通知」と書かれたハガキが届いたという相談を受けて注意を呼びかけた。今回の「最終確認通知書」は、似た名前ではなく「国民生活センター」の名称そのものを差出人にしている。
同じ型のハガキは、裁判所や法務省を装う形でも出回ってきた。国民生活センターや裁判所が公表した主な例は次の通り。
| 公表・掲載 | 名乗った機関 | 書面の題名・内容 |
|---|---|---|
| 2017年5月 | 民事訴訟管理センター | 総合消費料金未納分訴訟最終通知書 |
| 2018年10月 | 法務省管轄支局 国民訴訟通達センター | 封書による架空請求 |
| 2019年2月 | 地方裁判所管理局 | 特定消費料金未納に関する訴訟最終告知のお知らせ(桐花紋入り) |
| 2024年8月 | 国民生活相談センター | 紛争問題確認通知/消費者問題確認通知 |
| 2025年11月 | 裁判所書記官室 | 訴訟が起こされたと知らせるはがき |
| 2026年10月 | 国民生活センター | 最終確認通知書 |
名乗る機関や題名は変わっても、身に覚えのない未納料金を理由に訴訟を起こされたと告げ、取り下げや相談のために本人から電話をかけさせる組み立ては共通している。国民生活センターは2019年の注意喚起で、こうした書面の機関名は裁判所や法務省の名称を不正に使ったり、消費生活センターや国民生活センターを装ったりと様々だと指摘し、連絡すると金銭を支払わせようとしたり個人情報を得ようとしたりするため無視するよう求めていた。
架空請求の相談は年度に1万6000件台から8500件台へ
国民生活センターがPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された件数として示す架空請求の相談は、2023年度が1万6359件、2024年度が1万6566件、2025年度が8546件だった。2026年度は5月31日現在で1056件で、前年同期の1156件を下回っている。いずれも消費生活センター等を経由した相談は含まない。
架空請求に関する相談件数(件)
数値で見る(単位: 件)
| 項目 | 件 |
|---|---|
| 2023年度 | 16,359 |
| 2024年度 | 16,566 |
| 2025年度 | 8,546 |
同センターによると、架空請求の請求手段は電子メール、SMS、ハガキなど多様で、支払い方法も口座への振り込みだけでなく、プリペイドカードを使わせる方法や、詐欺業者が伝えた「支払番号」でコンビニのレジから支払わせる方法などがある。
消費生活相談の全体の動きは消費者トラブルの全体像 相談は18年ぶり100万件超、入口はネットとSNSへで、自分で解決策を調べられる同センターのサイトは国民生活センターが「消費者トラブル解決ナビ」開設 FAQで自主解決を支援、窓口へWebフォーム申し込みも 2025年度の消費生活相談は100.6万件で伝えた。
届いたら記載の番号に電話しない
国民生活センターは、不審な通知書を受け取っても連絡せずに無視し、お金を要求されるなど不審な点や不明な点があれば、すぐに最寄りの消費生活センターに相談するよう求めている。消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すると、住んでいる地域の消費生活センター等につながる。
裁判所の名前が書かれた郵便物で本物かどうか判断がつかないときは、ハガキや封書に書かれた番号ではなく、電話帳などで調べた裁判所の番号に直接問い合わせる。国民生活センターをかたる電話やメールも出回っており、同センターの特集ページには、個人情報の削除を持ちかける電話や、返金をうたうメールの相談事例が並ぶ。同センターは、こうした電話やメール、ハガキを受け取っても相手に連絡せず、近くの消費生活センター等に知らせるよう呼びかけている。
