文部科学省は11月3日付で、2026年度(令和8年度)の文化勲章受章者8人と文化功労者21人を公表した。発令はいずれも文化の日の11月3日付。文化勲章には、任天堂代表取締役フェローでゲームプロデューサーの宮本茂氏、建築家の伊東豊雄氏、作曲家の都倉俊一氏らが選ばれた。文化功労者には、ジャズ・サックス演奏家の渡辺貞夫氏、プロゴルファーの岡本綾子氏、アニメーション映画監督のりんたろう氏らが入った。

文化勲章は8人、ゲームや照明の作り手も

文科省の名簿によると、文化勲章の8人は五十音順に、照明デザイナーの石井幹子氏、建築家の伊東豊雄氏、東京大学名誉教授の黒岩常祥氏、同じく東大名誉教授の塩川徹也氏、東京理科大学栄誉教授の硤合憲三氏、作曲家の都倉俊一氏、大阪大学栄誉教授の長田重一氏、任天堂の宮本茂氏。名簿の職名等の欄には、8人全員に「文化功労者」と記されている。

8人の専門分野は、学術と芸術の両方にわたる。

氏名 職名等(名簿から) 専門分野
石井幹子 照明デザイナー デザイン(照明)
伊東豊雄 日本芸術院会員、建築家 建築
黒岩常祥 日本学士院会員、東京大学名誉教授 生物科学
塩川徹也 日本学士院会員、東京大学名誉教授 フランス文学
硤合憲三 東京理科大学栄誉教授 有機合成化学
都倉俊一 作曲家 大衆音楽、音楽著作権
長田重一 日本学士院会員、大阪大学栄誉教授、京都大学名誉教授 免疫学
宮本茂 ゲームプロデューサー、任天堂代表取締役フェロー メディア芸術(ゲーム)
2026年度の文化勲章受章者(五十音順)出典: 文部科学省「令和8年度 文化勲章受章者」

宮本氏の専門分野は「メディア芸術(ゲーム)」と記されている。都倉氏の欄には「大衆音楽」と並んで「音楽著作権」が挙がる。石井氏は「デザイン(照明)」の分野で選ばれた。

学術からは、生物科学の黒岩氏、免疫学の長田氏、有機合成化学の硤合氏、フランス文学の塩川氏の4人が入った。黒岩、塩川、長田の3氏は日本学士院会員、伊東氏は日本芸術院会員でもある。硤合氏は今年の文化功労者21人の名簿にも名前があり、同じ年に文化功労者と文化勲章の両方に選ばれた。

文化功労者は21人、ゴルフや視覚障害者柔道からも

文化功労者21人の顔ぶれは、文化勲章よりも分野が広い。芸能・音楽では、ジャズ・サックス演奏家の渡辺貞夫氏(本名は渡邊貞夫)、指揮者の尾高忠明氏、作曲家・ピアノ演奏家・指揮者の野平一郎氏が選ばれた。伝統芸能では、京舞の重要無形文化財保持者で日本舞踊家の井上八千代氏(本名は觀世三千子)、琉球舞踊立方の保持者の志田房子氏(本名は志田フサ子)、能楽師の友枝昭世氏が入った。

美術・建築では日本画家の千住博氏、建築史家・建築家の藤森照信氏。メディア芸術ではアニメーション映画監督のりんたろう氏(本名は林重行)、文学では歌人の伊藤一彦氏が選ばれた。スポーツでは、プロゴルファーの岡本綾子氏が「スポーツ振興(ゴルフ)」、NPO法人日本視覚障害者柔道連盟顧問で元日本代表監督の柿谷清氏が「障害者スポーツ振興」で選ばれた。ぴあ株式会社代表取締役社長の矢内廣氏は「文化振興」の分野に名前がある。

学術では、哲学・倫理学の加藤尚武氏(京都大学名誉教授)、知的財産法の中山信弘氏(東京大学名誉教授)、磁性材料学の佐川眞人氏(名城大学特任教授)、エネルギー変換材料化学の宮坂力氏(桐蔭横浜大学特任教授)、有機合成化学の硤合憲三氏、植物栄養学の西澤直子氏、分子生物学の西田栄介氏、植物細胞生物学の西村いくこ氏の8人が選ばれた。21人のうち日本芸術院会員は井上氏、尾高氏、千住氏、友枝氏、野平氏の5人、日本学士院会員は中山氏と西澤氏の2人である。

勲章は勅令、文化功労者は法律が根拠

文化勲章と文化功労者は同じ日に発表されるが、根拠となる法令は別々である。

文化勲章は、1937年(昭和12年)の勅令「文化勲章令」に基づく。条文は「文化勲章ハ文化ノ発達ニ関シ勲績卓絶ナル者ニ之ヲ賜フ」と定め、勲章の形として、白い花弁の「橘花」をかたどった直径6.6センチの金の章、緑の葉と淡い緑の実をあしらった金具、淡い紫色の綬(リボン)を規定している。綬は胸の中央に着ける。内閣府賞勲局の制度説明によると、受章者は、文化審議会に置かれる文化功労者選考分科会の委員全員の意見を聴いて文部科学大臣が推薦した人について、賞勲局が審査し、閣議に諮って決まる。勲章は毎年11月3日の文化の日に、宮中で天皇陛下から親授される。同じ制度説明によると、秋の叙勲も毎年11月3日付で授与されており、文化の日は栄典の発令が重なる日になっている。

文化功労者は、1951年(昭和26年)制定の「文化功労者年金法」に基づく。同法は、文化の向上発達に関し特に功績顕著な人を「文化功労者」と呼び、年金を支給して顕彰することを目的に掲げる。決めるのは文部科学大臣で、候補者の選考を文化審議会に諮り、審議会が選んだ人の中から決定しなければならないと定めている。勲章を授ける文化勲章と違い、文化功労者は勲章ではなく、国が年金で報いる仕組みである。

年金は終身で年350万円

文化功労者年金法は、文化功労者に「終身」、政令で定める額の年金を支給すると定める。同法施行令が定める額は年350万円。年額は「社会的経済的諸事情を勘案して、文化功労者を顕彰するのにふさわしいもの」となるよう定めることとされている。

施行令によると、年金は文化功労者に決まった年度の分から支給が始まり、本人が亡くなった年度の分で終わる。毎年度の分は4月1日から6月30日までの間に支払い、決定した年度の分は決定の日から3か月以内に支払う。文科相は文化功労者を決めると、本人に年金証書を交付する。今年の21人に支払われる年金は、施行令の額で計算すると年に合わせて7350万円になる。

今年の文化勲章の8人は、いずれも名簿の職名等の欄で文化功労者とされている。このうち7人は今年の文化功労者21人の名簿に名前が無く、前年までに文化功労者に選ばれていた人である。硤合氏だけが、今年文化功労者に選ばれると同時に文化勲章を受ける。