東京都は、令和8年熊本地震の被災地に派遣する土木と建築の任期付職員を募集している。採用予定は土木が5人程度、建築が1人程度で、熊本県宇城市、氷川町、宇土市で災害復旧工事の設計や積算、工事の監督にあたる。任期は2027年2月1日から2028年3月31日まで。申し込みは10月29日に始まり、11月19日午後3時に締め切る。総務省は11月2日、被災した地方公共団体の職員採用情報として、この募集を同省のサイトに掲載した。

土木5人・建築1人、派遣先は宇城市・氷川町・宇土市

東京都総務局の募集案内によると、土木の職員は被災地域の道路や河川などの公共土木施設について、災害復旧工事の設計積算や施工管理を担う。派遣先の予定は宇城市と氷川町で、採用時の派遣先は二次選考の結果が出た後に決める。建築の職員は宇土市に派遣され、災害復旧工事の設計積算、発注、監督の業務を受け持つ。

案内は「東京都内での勤務は予定されていません」と明記している。都の職員として採用されるが、勤務するのは最初から最後まで被災地の市町である。勤務時間や休日、休暇は派遣先の自治体の規定に従う。採用は「特に高度な知識又は経験を必要とする係員の職」である主任級で、東京都職員共済組合に入り、健康保険や厚生年金保険が適用される。

案内には、ほかの被災地から要請があれば派遣予定先を追加する場合があるとも書かれている。追加されたときは、第一次選考の合格者に、追加の派遣先への採用を希望するかを別に確かめるという。

職種 採用予定 派遣先(予定) 主な業務
土木 5人程度 宇城市、氷川町 公共土木施設の災害復旧工事の設計積算、施工管理
建築 1人程度 宇土市 災害復旧工事の設計積算、発注、監督
東京都の被災地派遣任期付職員の募集内容出典: 東京都総務局「任期付職員の募集(被災地派遣)」

大卒なら実務5年以上、正社員・常勤の経験に限る

受験資格は、公共工事の実務経験の長さで決まる。土木は、国や自治体で公共土木施設の発注・設計・積算・工事監督に就いた経験か、建設会社や設計コンサルタントで公共土木施設の設計・積算・工事監督に就いた経験を数える。建築は、国や自治体、建設会社などで、建築士資格に基づいて建築工事の設計・積算・監督に就いた経験が対象になる。どちらも普通自動車運転免許を持ち、運転できることが条件だ。

必要な年数は学歴で異なる。大学院修了と4年制大学卒業は5年以上、短期大学・高等専門学校・一定の専修学校などの卒業は7年以上、高校卒業は9年以上とする。年数は2027年1月末の時点で数え、複数の職場の経験は通算できる。ただし数えるのは民間企業の正社員や自治体の常勤職員として働いた期間だけで、契約社員、派遣社員、非常勤職員、嘱託職員、アルバイトの期間は含めない。

必須ではないが望ましい条件として、派遣先に自家用車を持ち込めること、表計算や文書作成のソフトを使えること、CADソフトを扱う業務の経験、令和6年能登半島地震や東日本大震災、西日本豪雨などで災害復旧業務に就いた経験を挙げている。日本国籍を持たない人は受験できない。申込日の時点で東京都の職員である人も受験できないが、教育公務員や、2027年1月末までに任期が終わる任期付職員・会計年度任用職員などは例外としている。

初任給は経験5年で月32万4000円、住宅は派遣先が用意

初任給は職務経験に応じて決まる。案内は、4年制大学を出て正社員・常勤職員として働いた人の参考例として、経験5年で月額32万4000円、10年で約35万8900円、20年で41万2800円を示している。いずれも2026年4月1日時点の給料月額に、20%の地域手当を加えた額だという。このほか扶養手当や期末・勤勉手当があり、要件に当てはまれば通勤手当や災害派遣手当も出る。

被災地への転居が要る場合、派遣先の自治体かその周辺に民間賃貸住宅などが用意される予定で、その場合は住居手当は出ない。住居は単身者向けが中心で、家賃にあたる使用料などの負担は派遣先の定めによる。派遣先によっては、通勤のために自家用車を持ち込む必要がある。

選考は2段階で行う。第一次は申込書類による審査で、結果は11月25日にメールで知らせる。第二次は12月1日か2日のうち指定する日に、東京都庁第一本庁舎で個別面接を行う予定で、最終結果は12月中旬に通知する。会場までの交通費は自己負担となる。申し込みは東京都の電子申請フォームで受け付け、郵送や窓口では受け付けない。

発災から3か月、技術職員の不足が続く被災地

令和8年熊本地震は、2026年7月28日午後4時27分に熊本県熊本地方で発生した。気象庁によると規模はマグニチュード7.1で、最大震度7を観測した。同日午後5時8分には熊本県天草・芦北地方でマグニチュード6.1の地震も起き、震度5弱を観測している。

政府の非常災害対策本部会議では、8月4日の第6回会合で高市首相が、被災した6市町に全国35都府県17市から637人の応援職員の派遣が決まったと述べた。そのうえで、インフラの復旧・復興には土木職や建築職などの技術職員が多数必要だが、被災した自治体の多くが技術職員の不足に悩んでいると指摘し、総務相に都道府県などから技術職員を派遣できるよう調整を進めるよう指示した。首相はこの会合で、宇城市と氷川町で前日に建設型応急住宅の工事に着手したことにも触れている。

政府は9月1日に「令和8年熊本地震非常災害復旧復興本部」を設け、支援の軸足を中長期の復旧・復興に移した。発災から3か月となった10月28日の記者会見で官房長官は、被災地では今なお約1000人が避難生活を送っていると述べた。被災地の雇用を支える国の施策は「熊本地震の被災企業から全国へ在籍型出向、賃金の最大5分の4を助成 厚労省が特例」で伝えている。

東京都の派遣は熊本7人、能登35人

東京都はすでに、自前の職員を熊本の被災自治体へ中長期で派遣している。都総務局によると、11月時点で熊本県に2人、八代市に2人、宇土市に2人、宇城市に1人の計7人。県立学校施設の災害復旧、橋梁の災害対応、道路や排水路、漁港、学校施設の災害復旧工事の監理などを受け持つ。今回の募集は、この7人に加えて、外部の経験者を任期付きで採用し、技術者を上積みする形になる。

都は令和6年能登半島地震と奥能登豪雨の被災地にも、9月1日時点で計35人を派遣している。内訳は石川県18人、富山県1人、輪島市16人で、一般任期付職員を含む。東日本大震災の被災地には4月1日時点で福島県に11人を出している。

東京都の被災地への中長期派遣職員(人)

能登35東日本11熊本7
熊本への派遣は7人。今回の募集で土木5人程度、建築1人程度を加える出典: 東京都総務局「被災地への職員派遣の状況」(熊本は2026年11月、能登は9月1日、東日本は4月1日時点)
数値で見る(単位: 人)
項目人
能登35
東日本11
熊本7

都は、被災地での復旧・復興業務を希望する人に事前に登録してもらい、任期付職員を募集するときにメールで知らせる「被災地派遣希望者登録制度」も設けている。被災自治体が自ら職員を採用する場合の情報は、総務省が災害ごとのページにまとめて載せており、熊本地震のページに今回掲載されたのが東京都のこの募集である。