こども家庭庁は9月25日、12月25日に施行されるこども性暴力防止法をめぐり、対象となる中小規模の民間事業者が情報セキュリティの国家資格者に無料で相談できる窓口を設けると発表した。対象は、常時使用する従業員が100人以下の学校設置者等と民間教育保育等事業者。国家資格「情報処理安全確保支援士」を庁が紹介し、1事業者あたり最大1時間分の相談費用を国が負担する。相談は原則オンラインで行う。

同法は、こどもに接する業務の従事者について性犯罪歴の有無を確かめる「犯罪事実確認」の制度をつくる法律だ。学校や認可保育所などは対応が義務で、学習塾やスポーツクラブなどは国の認定を受ければ同じ仕組みを使える。制度の骨格はこども性暴力防止法、12月25日に施行 性犯罪歴は最長20年さかのぼって確認 学校は義務、学習塾やスポーツクラブは任意の認定制にまとめた。今回の窓口は、確認して終わりではなく、確認で得た情報を事業者が自力で守らなければならないという、もう一方の義務に対応するものだ。

守る義務は四つの分野に及ぶ

事業者に課される「情報管理措置」は、犯罪事実確認に関する情報を適正に管理するための取り組みを指す。こども家庭庁は、窓口で相談できる内容を組織的・人的・物理的・技術的の四つに分けて示した。

組織的な措置は、情報を扱う責任者と担当者の設定、自己点検の実施方法、確認記録の取扱記録の作成など。人的な措置は、従事者向けの研修教材の使い方や、研修以外の意識啓発が対象になる。物理的な措置では、記録を扱う区域の管理、機器の盗難防止、やむを得ず電子媒体を持ち運ぶ際の紛失対策、記録の廃棄・消去の方法が挙がる。

技術的な措置はより具体的で、情報システムの多要素認証の設定、確認記録を保存する場所の分離、異動・退職が出たときのアクセス権の解除、OSやアプリケーションの管理、ウイルス対策ソフトの導入、業務に不要なインターネット通信の制限、通信経路や内容の暗号化などが並ぶ。記録の保存にやむを得ずクラウドサービスを使う場合の設定も相談できる。

一方、相談できないことも決められている。アカウントIDやパスワードの設定は「適正な情報管理の観点から確認すべきでない」として対象外。情報管理規程そのものの作成を代行することもしない。実際に漏えいが起きた後の緊急対応も含まれず、この場合は庁のガイドラインに沿って事業者自身が動く必要がある。

みだりに漏らせば1年以下の拘禁刑

情報管理が義務として重いのは、違反に刑事罰が付いているためだ。法は第39条で、犯罪事実確認書を受け取った事業者やその役員・職員、退職者に対し、業務で知った記載情報をみだりに他人に知らせたり、不当な目的に使ったりすることを禁じている。違反すれば1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金で、両方を科すこともできる。自分や第三者の不正な利益を図る目的で情報を提供した場合はさらに重く、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となる。

漏えいなどの重大な事態が起きたときは、国に直ちに報告しなければならない。場合によっては個人情報保護委員会への報告も必要になる。こども家庭庁は、性犯罪歴をみだりに他人に教えれば刑事罰に加えて民事上の損害賠償請求の対象にもなり得ると説明している。安全確保措置と情報管理措置の実施状況は、国と所轄庁が定期報告や立入検査で指導・監督する。

施行時の在職者だけで約280万人

制度が動き出す規模は大きい。こども家庭庁の資料によると、施行時点で在職している従事者の犯罪事実確認は約280万人分あり、施行から3年以内の2029年12月24日までに終える必要がある。申請が一時期に集中しないよう、公立学校は各教育委員会が採用年次や学校単位で時期を分け、それ以外の私立学校や児童福祉施設などは都道府県を27の区分に割り振って、月ごとに申請してもらう方式をとる。

これだけの人数の性犯罪歴が、全国の学校や塾、保育施設の手元を通ることになる。専任の情報システム担当者がいない事業者が少なくないなかで、機微な情報の取り扱いが最も弱い場所に合わせて破られることを、国は警戒しているとみられる。庁は犯歴情報を扱う者を必要最小限に限り、新たに用意する「こまもろうシステム」以外での記録・保存は極力控えるよう求めている。

申し込みはウェブか電話で

相談の申し込みは、こども家庭庁のウェブサイトに置かれた専用フォームで24時間受け付ける。フォームを使えない場合は専用ダイヤル(03-6387-9553、平日午前9時〜午後5時)でも申し込める。事務局が相談内容に合う支援士を選んで日程を連絡し、オンラインで相談する流れになる。認定を受ける見込みの民間事業者も対象に含まれるため、これから認定を申請する塾やスポーツクラブも使える。