経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会は10月28日、同委員会のウェブサイト「デントリネット」が27日未明に不正アクセスを受けたと発表した。デントリネットは、小売電気事業者やガス小売事業者などから、法令に基づく定期報告(電力取引報・ガス取引報)を受け付けるサイト。委員会はサイトの運用を停止し、原因の究明と再発防止策の検討を進めている。不正アクセスによる情報流出の有無は「現在確認中」としている。復旧までの間、事業者からの報告は電子メールで受け付ける。
27日未明に侵入、28日に確認して停止
経産省の発表によると、不正アクセスがあったのは10月27日(火)の未明。委員会がこれを確認したのは翌28日で、同日のうちにサイトの運用を止めた。発表は「現在システムを停止し、原因究明・再発防止策を検討しています」としている。
侵入の経路、攻撃者が何をしたのか、どのデータに触れたのかについて、発表は触れていない。情報流出については「この不正アクセスによる情報流出の有無については、現在確認中です」と書くにとどめた。委員会のデントリネット案内ページも、運用を停止した旨を掲げたうえで「現在、詳細を調査しております」としている。
発表は「多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます」と謝罪した。担当は委員会事務局の取引監視課と総務課。
デントリネットは何を集めるサイトか
電力・ガス取引監視等委員会は、電力とガスの取引の監視に必要な情報を、事業者から定期的に報告させている。電気は電気関係報告規則、ガスはガス関係報告規則という経産省令に報告の義務の根拠がある。
電気の報告(電力取引報)では、小売電気事業者が毎月の販売電力量と契約口数を「翌々月15日」までに出す。このほか、リスク管理体制の運用状況、四半期ごとの資金の概況、料金の設定方法や契約期間といった小売供給契約の中身も報告の対象になる。電力の送配電網を持つ一般送配電事業者は、需給のずれ(インバランス)の発生実績や電気事業者との契約状況を、卸電力取引所はスポット市場などの取引情報を出す。
ガスの報告(ガス取引報)では、ガス小売事業者が毎月のガス販売量・契約件数を「翌々月15日」までに、小売供給契約の料金設定方法・契約期間などを年1回出す。ガス導管事業者やガス製造事業者にも別の様式がある。
委員会はこうした報告を集計し、電力取引報とガス取引報の結果をサイトで公表している。デントリネットの案内ページによると、サイトを使えるのは「電力取引報及びガス取引報の報告対象事業者」に限られる。利用するには、国の法人向け共通認証「GビズID」を取り、デントリネットに事業者とユーザーを登録したうえで、報告をアップロードするか画面に直接入力する。
2024年から順次移行、10月末期限の分から対象を追加
委員会はもともと、Excelの様式をCSV形式に変えて電子メールで提出するよう求めていた。案内ページによると、2024年6月28日にデントリネットのページを開設し、電気の販売電力量・契約口数は「2024年8月末報告期限分」からデントリネットでの提出に切り替えた。
その後、対象を広げた。ガスの販売量・契約件数は「2025年6月分」から、電気のリスク管理体制や資金の概況、料金設定方法などは「2026年4月末報告期限分」から、デントリネットでの提出を求めている。2026年3月26日には様式の追加に合わせてサイトを改修した。ガス製造事業者の受託製造の状況は「2026年10月末報告期限分」からデントリネットでの提出となった。今回の停止は、その最初の期限と重なった。
| 報告 | 主な内容 | 出す事業者 | 期限 | デントリネットでの提出 |
|---|---|---|---|---|
| 電力取引報 第1表の1 | 販売電力量・契約口数 | 小売電気事業者 | 翌々月15日 | 2024年8月末期限分から |
| 電力取引報 第1表の3 | 資金の概況 | 小売電気事業者 | 四半期末から1か月 | 2026年4月末期限分から |
| 電力取引報 第2表 | 料金設定方法・契約期間等 | 小売電気事業者 | 事業年度末から4か月 | 2026年4月末期限分から |
| 電力取引報 第5表 | 電気事業者の契約状況 | 一般送配電事業者 | 翌々月末日 | 2026年4月末期限分から |
| ガス取引報 様式第9 | ガス販売量・契約件数等 | ガス小売事業者 | 翌々月15日 | 2025年6月分から |
| ガス取引報 様式第10 | 料金設定方法・契約期間等 | ガス小売事業者 | 翌年度7月末 | 2025年度分から |
| ガス取引報 様式第13 | ガス受託製造の状況 | ガス製造事業者 | 四半期末から1か月 | 2026年10月末期限分から |
出典: 電力・ガス取引監視等委員会「事業者の定期報告について(電気)」「同(ガス)」
当面はメールで受け付け、流出の有無は確認中
運用停止を受け、委員会は復旧までの間、小売電気事業者やガス小売事業者などからの報告を電子メールで受け付ける。具体的な方法は委員会から各事業者に別途伝えるとしている。電気の報告ページには、もともと様式ごとに「デントリネット停止中等の場合」の提出先メールアドレスが載っている。
月次の報告は止まらない。電気とガスの販売量・契約数は「翌々月15日」が期限のため、9月分の報告期限は11月15日にあたる。復旧の見通しは発表に書かれていない。
焦点は、サイトに集まっていた情報が外へ出たかどうかだ。表に挙げたとおり、デントリネットで出す報告には、各社の販売電力量やガス販売量、契約の数、資金の概況、料金の設定方法など、事業者の経営に関わる情報が含まれる。ただし、これらがサイト上にどの程度保存されていたのか、今回の不正アクセスで閲覧や持ち出しがあったのかは、発表からは分からない。ログインに使うGビズIDのアカウント情報への影響についても、触れていない。
官民の組織を狙う不正アクセスの手口や被害の広がりは、「サイバー攻撃と情報漏えいの全体像 ランサム被害は最多123件、入口はVPNと委託先」で整理している。今回の事案は、国の監視機関が事業者から報告を集めるサイトそのものが標的になった。
委員会は、原因の究明と再発防止策の検討を続けている。
