国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は10月12日から16日まで、エチオピアの首都アディスアベバで第65回総会を開いた。最大の議題だった第7次評価報告書(AR7)の作業計画と2027年予算で各国が合意できず、ジム・スキー議長は予定の会期を過ぎた16日夜、総会を中断した。環境省が22日に結果を公表し、2つの議題は引き続き議論することとし、第65回総会の再開総会を開くと明らかにした。再開の日程は今後IPCC事務局が示す。日本からは環境省、文部科学省、経済産業省、気象庁などの関係者が出席した。

会期を延長、途上国の代表団が帰国

IPCCの16日の発表によると、スキー議長は総会が予定の会期を超えて続き、後発開発途上国や小島しょ開発途上国の多くの代表団が帰国しなければならなくなった段階で、中断を決めた。IPCCは各国政府のコンセンサス(合意)で物事を決める。発表は、この判断について、重要な決定を下す総会に全ての国が加わるという原則を守るためだと説明している。

スキー議長は19日に声明を出し、「この総会の作業は終わっていない」と述べた。人工知能(AI)を報告書づくりで適切に使うための新たな手続きを含め、議題の大半は合意できたとした。一方、合意に至らなかったのは、AR7を構成する3つの作業部会報告書の日程と、IPCCの活動を支える予算の2点だと明らかにした。議長は加盟国政府や科学面の指導部と協議し、できるだけ早く総会を再開するとしている。

12日の開会時の発表によると、3つの作業部会はすでにそれぞれの報告書の第1次草稿を書き上げている。スキー議長は開会のあいさつで、報告書を無償で執筆している科学者のためにも日程を決めることが重要だと強調し、日程の問題を「重大な空白」と呼んで、前回の総会で各国が解消したい意向を示していたと述べていた。総会では、IPCCの信託基金の事業と予算、オブザーバー機関の新たな受け入れなども話し合われた。

第7次評価報告書とは

IPCCは1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)が設けた国連の組織で、気候変動に関する科学的な知見を評価し、各国の政策担当者に示している。報告書は世界の科学者が毎年発表される数千本の論文を読み込んでまとめ、5〜7年ごとに包括的な評価報告書を出す。

報告書は3つの作業部会が分担する。第1作業部会は気候変動の自然科学的根拠、第2作業部会は影響・適応・脆弱性、第3作業部会は温室効果ガスの排出削減(緩和)を扱う。前回の第6次評価報告書は2023年3月に統合報告書を公表して完成した。ドバイで開かれた国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、条約のもとで世界全体の取り組みを点検する初の「グローバル・ストックテイク」に科学的な根拠を提供した。

第7次の評価サイクルは、2023年7月にケニアのナイロビで開かれた総会で議長団を選んで始まった。2024年1月のトルコ・イスタンブールでの第60回総会で、3つの作業部会報告書を作ることと、それらをまとめる統合報告書を2029年末までに公表することを決めた。このほか、都市と気候変動に関する特別報告書を2027年3月15〜19日の総会で承認する予定となっており、短寿命気候強制因子の算定方法や二酸化炭素の除去技術に関する方法論報告書も2027年に承認する計画だ。

総会を重ねても日程決まらず

各作業部会の報告書をいつ承認するかは、2年以上決まっていない。IPCC事務局が今回の総会向けに9月28日付でまとめた資料「AR7の作業計画」が、これまでの経緯を整理している。

2024年夏のブルガリア・ソフィアでの第61回総会では、2028年5〜8月に3報告書を順に承認する案が出たが合意に至らなかった。2025年2月の中国・杭州での第62回総会は、3報告書の目次に当たる構成案を決めたものの、日程は先送りした。共同議長は第1作業部会を2028年5月1〜5日、第2作業部会を6月26〜30日、第3作業部会を7月31日〜8月4日に承認する案を示したが、合意されなかった。協議の中では、第1を2028年7〜8月ごろ、第2を同年12月ごろ、第3を2029年3月ごろとする案も出た。

2025年10月のペルー・リマでの第63回総会でも、共同議長が承認を2028年5月、7月、9月とする修正案を出したが受け入れられなかった。総会は、各作業部会に2026年予算に沿って作業を続けるよう求め、日程の検討を先送りした。2026年3月24〜27日のタイ・バンコクでの第64回総会では、当初の議題に作業計画は無く、各国の議論を経て追加された。議場からはサウジアラビアとインドがそれぞれ日程案を示したが、決定のないまま閉会した。

提案した主体・場面 第1作業部会 第2作業部会 第3作業部会
共同議長(第62回総会) 2028年5月1〜5日 2028年6月26〜30日 2028年7月31日〜8月4日
協議で出た案(第62回総会) 2028年7〜8月ごろ 2028年12月ごろ 2029年3月ごろ
共同議長の修正案(第63回総会) 2028年5月 2028年7月 2028年9月
サウジアラビア(第64回総会) 2028年5月 2029年2月 2029年5月
インド(第64回総会) 2028年5月29日の週 2029年4月9日の週 2029年7月2日の週
第7次評価報告書の作業部会報告書の承認時期をめぐる主な提案出典: IPCC事務局「Work Plan of the IPCC Seventh Assessment Report」(IPCC-LXV/INF. 13)

資料によると、事務局は日程を決める権限がどこにあるかについて法的な助言を求め、作業計画と主要な日程を決める権限は総会にあるとの見解が最も有力だとした。

2028年の点検に間に合うか

日程が争点になる背景には、2028年に予定される2回目のグローバル・ストックテイクがある。事務局資料によると、各国への意見照会で、3報告書すべてを2回目の点検より前に完成させることを主な基準に挙げた政府が複数あった。ある政府は、とりわけ解決策を扱う第2・第3作業部会の報告書が点検に反映されなければならないと主張した。2024年の第61回総会では、点検の技術的な評価の段階に間に合うよう、3報告書を2028年6月より前に公表するよう求める声も出ていた。

ただ、事務局資料は、第3作業部会の第4回執筆者会合が2028年初めに予定されていることから、3報告書を2028年6月より前に公表するのはもはや難しいとしている。資料は残る期間の進め方として3つの案を示した。共同議長の過去の提案に基づく2案は2028年に3報告書の承認を集中させ、同年の総会を4回とする。サウジアラビアとインドの提案に基づく案は、2028年の総会を2回にとどめ、第2・第3作業部会の承認を2029年に回す。

第7次の評価サイクルは、議長団の選出から7年後の2030年7月が終わりの期限となる。事務局資料は、統合報告書を2029年末までに作るには、2027年に統合報告書の範囲を決める作業を始める必要があると指摘している。2027年には特別報告書と2つの方法論報告書の承認も控えている。

環境省の発表は、再開総会の時期や、日本政府が日程についてどのような立場をとったかには触れていない。2027年予算の規模も発表には記載がない。