公正取引委員会は10月22日、段ボール製品や紙器製品を製造販売する王子コンテナー(東京都中央区、資本金100億円)に対し、改正前の下請代金支払遅延等防止法(下請法)に基づく勧告を行った。製造を委託した下請け140者に印版や木型、金型を貸与しながら、それを使う製品を長期間発注せず、計9610個を保管の費用を負担しないまま保管させたと認定した。同じ日、公取委と中小企業庁、経済産業省は、業界団体の全国段ボール工業組合連合会に対し、印版などを取引先に無償で保管させる商慣習を見直すよう要請した。

140者に印版など9610個を保管させる

公取委と中小企業庁の発表によると、王子コンテナーは自社が製造を請け負う段ボール製品や紙器製品などの製造を、下請けの事業者に委託していた。その際、自社または自社の顧客が所有する印版、木型、金型(まとめて「印版等」)を下請けに貸与していた。

認定された期間は、遅くとも2024年6月1日から2025年11月26日まで。この間、王子コンテナーは貸与した印版等を使って作る製品の発注を長期間行わなかったにもかかわらず、下請け140者に計9610個の印版等をそのまま保管させ、保管にかかる費用を負担しなかった。

公取委はこれを、下請法第4条第2項第3号が禁じる「不当な経済上の利益の提供要請」に当たると判断した。公取委と中小企業庁が同日に出したリーフレットは、発注を長期間行わない型を無償で保管させることを「中小受託事業者に保管コストを負担させています」と説明している。リーフレットは、無償で保管させていた型の例として金型、印版、木型のほか、治具、検具、工具、機械設備も挙げている。

中小企業庁の措置請求から勧告へ 残りの支払いを求める

この事案は、公取委が自ら調べたものではない。中小企業庁が王子コンテナーを調査して違反行為を確認し、9月14日に中小企業庁長官が公取委に「措置請求」を行った。措置請求は、中小企業庁長官が違反の事実を認めたときに、公取委に適当な措置を採るよう求める手続きで、改正前の下請法第6条に定めがある。公取委はこれを受けて王子コンテナーを調べ、10月22日の勧告に至った。

発表によると、王子コンテナーは勧告の前に、不利益額の一部を含む計341万355円をすでに支払っている。支払った相手は、140者のうち127者で、支払いは2026年7月までに行われた。

勧告の主な内容は、140者に対し、印版等を保管させたことによる費用に相当する額のうち、7月までに127者へ支払った額を除いた分を、公取委の確認を得たうえで速やかに支払うことだ。公取委と中小企業庁の概要資料は、これに加え、今後は中小受託事業者に不当な経済上の利益の提供を求めないことなどを取締役会の決議で確認すること、取適法の研修を行うなど社内体制を整えるために必要な措置を講じることも挙げている。

公取委と中小企業庁は、勧告した事案を企業名とともに公表しており、今回も法人番号や本店所在地、代表者名、違反の中身を発表資料に載せた。

段ボール業界で1年に2件 「無償保管が商慣習」

段ボール業界の事業者に対する同種の勧告は、この1年で2件目になる。1件目は2026年3月13日の日本トーカンパッケージに対する勧告で、下請け132者に計7846個の印版等を、費用を負担せずに保管させたと認定した。2件は、どちらも印版等を使う製品の発注を長期間行わずに、保管を取引先に任せていた点で共通する。

公取委と中小企業庁、経産省が連名で出した要請文によると、2件の調査の過程で、印版等を中小受託事業者が無償で保管することが「業界の商慣習となっていることが確認」された。3者はこれを踏まえ、10月22日に連合会へ要請を行った。

要請は3項目ある。①2件の勧告事例と、印版等の無償保管が問題になることを記したリーフレットを業界内に周知すること②取適法の違反行為の是正と未然防止に取り組むことや、価格転嫁に関する法令遵守を徹底するよう会員企業に促すこと③印版等を無償で保管させる商慣習の見直しに取り組み、その後も継続して状況を確認すること、である。

要請文の問い合わせ先には、公取委と中小企業庁の取引担当に加え、経産省製造産業局素材産業課も名を連ねた。公取委と中小企業庁は「引き続き、段ボール製品、紙器製品等の製造販売業者による取適法の規定に違反する行為について、迅速かつ厳正に対処」するとしている。

今年度の勧告17件のうち11件が型の保管

型の無償保管は、段ボール業界に限った問題ではない。公取委の取適法(下請法)勧告一覧によると、2026年度に入ってからの勧告は10月22日時点で17件あり、このうち11件が金型や印版などを保管させた費用を負担しなかった行為を含んでいる。対象は自動車部品、医療機器、給湯器、建設用クレーンなど幅広い。

勧告日 事業者 保管させた相手 型の数
10月22日 王子コンテナー 140者 9,610個
10月9日 パーパス 22者 196個
9月3日 ニチリン 25者 1,048個
7月24日 イリソ電子工業 34者 821個
7月21日 HOYA 32者 643個
7月17日 ダイヤモンド電機 23者 650個
7月16日 天龍工業 11者 187個
7月10日 ミネベアアクセスソリューションズ 36者 846個
7月9日 タダノ 22者 314個
7月8日 ノーリツ 41者 5,242型
6月26日 ダイヘン 69者 475個
2026年度の取適法(下請法)勧告のうち、型の保管費用を負担しなかった行為を含む11件(パーパスは下請事業者10者と中小受託事業者12者の計。タダノは棚卸作業を行わせた行為も含む)

出典: 公正取引委員会「取適法(下請法)勧告一覧(令和8年度)」

保管させた型の数は、王子コンテナーの9610個が11件の中で最も多い。相手の数も140者で最多だった。年度途中までの勧告全体の傾向は下請法は今年1月に「取適法」へ 施行後の勧告14件のうち9件は「金型の保管費用」で、パーパスの事案は給湯器のパーパスに公取委が勧告で詳しく伝えている。前年度の2025年度の勧告は、一覧によると39件だった。

1月から取適法に 旧法の取引は旧法で処理

下請法は2025年の改正で、2026年1月1日から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(取適法)に名前が変わった。法律上の呼び方も「親事業者」が「委託事業者」に、「下請事業者」が「中小受託事業者」に改められた。

今回の勧告が改正前の下請法に基づくのは、違反とされた期間が2025年11月26日までで、改正前の取引だったためだ。発表資料は、2025年12月までに行われた製造委託には改正前の下請法を、2026年1月以降の委託には取適法を当てはめると説明している。勧告の根拠となった改正前の下請法第7条第3項は、改正法附則第2条第2項により「なお従前の例による」とされた規定である。

取適法では、守られる取引先の範囲も広がった。改正前は、委託する側とされる側の資本金の大きさだけで対象を決めていたが、取適法では製造委託などの場合、資本金の基準に当てはまらなくても、従業員300人超の事業者が300人以下の事業者に委託する取引も対象になった。型の保管費用を負担しない行為は、取適法でも第5条第2項第2号の「不当な経済上の利益の提供要請」として禁じられており、リーフレットは「無償で保管させることも、取適法違反です」と明記している。