日本原子力発電(日本原電)は10月30日、東海第二発電所(茨城県東海村)で進めている安全性向上対策工事の終了時期を、2026年12月から2029年2月に変更したと発表した。同日、原子炉設置変更許可に係る工事計画の変更を原子力規制委員会に届け出た。取水口の上に設ける防潮堤(鋼製防護壁)の設計変更と、ほかの工事の工程を精査した結果で、終了時期は2年2か月遅れる。終了時期を延ばすのは2024年8月に続き2回目となる。
2029年2月を工事終了の時期に
日本原電の発表によると、同社は10月30日、工事計画変更の届出に加え、特定重大事故等対処施設(特重施設)の設置に関する設計及び工事計画変更認可申請(分割5回目)の補正書を規制委に提出した。あわせて、原子力施設周辺の安全確保と環境保全に関する協定書(安全協定)に基づいて出している新増設等計画書や年間主要事業計画書などの変更を、関係自治体に報告した。
新たな終了時期の2029年2月は、特重施設を含む安全性向上対策工事全体の終了時期だ。同社は理由を「防潮堤(鋼製防護壁)工事及びその他工事の工程精査を踏まえ」と説明している。
同社は8月28日の時点で、終了時期が「2年程度遅れ、2028年度下期になる」との見通しを示し、具体的な時期は工事計画変更の届出の際に知らせるとしていた。2028年度下期は2028年10月から2029年3月までにあたり、今回の2029年2月はこの範囲に入る。
| 公表日 | 示した工事終了時期 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 2024年8月23日まで | 2024年9月 | ― |
| 2024年8月23日 | 2026年12月 | 鋼製防護壁の不具合への対応、ほかの工事の進捗 |
| 2026年8月28日 | 2028年度下期(見通し) | 鋼製防護壁の設計変更の審査状況 |
| 2026年10月30日 | 2029年2月 | 鋼製防護壁工事とほかの工事の工程精査 |
取水口の上の防潮堤で見つかった施工不良
工程を遅らせている鋼製防護壁は、海水を取り込む取水口の上部に設ける防潮堤だ。日本原電の説明では、この区間は鋼管の杭を打てないため、ほかの区間とは異なる「地中連続壁工法」を採っている。防護壁は2本の柱(基礎)で支え、柱は一辺15.5メートルの正方形の角柱で、深さ約60メートルの岩盤に固定する。
柱は、まず外枠を造り、その内側(中実部)を掘って鉄筋とコンクリートを詰める手順で築く。外枠は、岩盤まで掘った溝に、太い鉄筋を組んだ「鉄筋かご」(約800トン)を何段も入れ、コンクリートを流し込んで一体にする。
2023年6月、南側の基礎で外枠を造り終え、中実部を掘っていたところ、外枠(地中連続壁部)の壁面でコンクリートが詰まっていない箇所(鉄筋の露出)と、一部の鉄筋の変形が見つかった。同社は工事を中断して調べ、未充填は隣り合う区画の鉄筋を重ねる「剛結継手部」に集中していたとしている。2023年8月には北側の基礎でも似た事象が見つかり、北側では鉄筋が設計より70センチ高い位置で止まる「高止まり」も確認された。
同社は原因を、溝の壁がはらみ出して土砂が崩れたこと、たまった土砂を取り除く治具が鉄筋に触れたこと、後から入れた鉄筋かごが先に入れた鉄筋かごと接触したことだと説明している。
外枠を基礎に使わない設計へ
日本原電は当初、中実部の鉄筋を増やせば当初の強度を保てると評価し、2024年2月7日にこの内容で設計及び工事計画認可申請の補正書を出した。その後、規制委側とのやり取りを経て方針を改めた。
同社が2024年8月28日付で示した資料によると、不確かさが残る外枠(地中連続壁部)は基礎として使わず、中実部の基礎を造るための土留め壁として残す。外枠を基礎に数えなければ、柱の曲げにくさ(曲げ剛性)は当初設計の4分の1程度に下がる。これを補うため、周りの地盤を薬液注入やセメント系の材料で改良し、中実部の基礎を鋼板や鉄骨で補強する「鋼殻化」を行い、鋼管矢板などを足して基礎の断面積を広げる。外枠を撤去しない理由については、深く掘った状態が長く続き、隣の取水構造物に影響が出るおそれがあるためとしている。
この設計変更について、同社は8月27日の規制委の第1430回審査会合で、耐震・耐津波評価と、残した外枠が基礎に与える影響の評価について説明した。同社の発表によると、説明は「概ね妥当であることが示されました」という。今回の届出は、この審査の後に工程を組み直した結果になる。
運転延長は認可済み、燃料装荷の時期は未定
東海第二発電所は出力110万キロワットの沸騰水型軽水炉(BWR)で、1978年11月28日に営業運転を始めた。電気は東北電力と東京電力エナジーパートナーに売っている。2011年5月21日に第25回定期事業者検査に入ってから、停止が続いている。
新規制基準への適合をめぐっては、2018年9月26日に本体施設などの設置変更許可を受け、同年11月7日に運転期間を20年延ばす認可を受けた。2025年6月6日に施行された改正電気事業法の下でも延長認可を受けたものとみなされ、同社は2025年8月8日に経済産業相へ報告書を出した。特重施設は2021年12月22日に設置変更許可を受け、設計及び工事計画の認可は分割して申請しており、1回目は2022年11月16日に認可された。今回補正書を出したのは5回目の分の申請になる。
工事が終わっても、それで運転を再開するわけではない。日本原電が4月30日に関係自治体へ出した2026年度の年間主要事業計画書では、東海第二の発電電力量は「未定」、燃料を入れる時期と定期事業者検査の終了日も「未定」とされている。同社は同じ計画書で、自治体の審査などに対応しながら工事を進めるとしている。
同じ計画書には、安全性向上対策とは別の工事も載っている。使用済み燃料を容器に入れて保管する乾式貯蔵設備の増強工事では、貯蔵容器24基のうち17基の製作が終わり、残りの製作を続ける。同じ敷地にある東海発電所は廃止措置中で、熱交換器本体など原子炉領域以外の解体撤去を進めている。
工事の終了時期は、2024年9月から2026年12月、そして2029年2月へと2度延びた。2回とも、取水口の上の鋼製防護壁の問題が理由に挙がった。同社は10月30日の発表で、規制委の審査に対応しつつ「地域の皆さまのご理解を得られるよう説明を尽くしてまいります」としている。
