経済産業省は9月25日、中部電力から報告を受け取ったうえで、同社に追加の報告を求めたと発表した。浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)1号機・2号機の解体撤去工事をめぐり、廃炉の費用を払う側の認可法人に、実績と異なる数値を報告していた事案に関するものだ。中部電力が同日公表した報告によると、工事報告書の食い違いは8月末の公表時点の14件から18件に増えた。
請負会社の報告書を書き換えて機構に提出
中部電力の説明によれば、事案が起きたのは2024年度の解体撤去工事である。同社は一部の工事について、請負会社から受け取った工事報告書の写しの解体物量や解体機器などを書き換え、実績と異なる数値を使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)に報告していた。
発覚の経緯はこうだ。NuROが2026年7月3日から27日にかけて、提出された資料のうち解体保管量と廃棄物処理量について確認を求めた。これを受けて中部電力の廃止措置担当部署が8月3日に過去の提出資料の確認を始め、8月17日に事案を確認して原子力本部長に報告し、社内調査に入った。公表したのは8月27日で、同じ日に経済産業大臣から報告徴収を、NuROから報告の指示をそれぞれ受けている。
9月25日に提出した報告で、中部電力は調査範囲を「2024年度にNuROへ費用請求を申請したすべての施設解体など36件」としたうえで、社内で承認した工事報告書とNuROへ提出した工事報告書を突き合わせた結果を示した。8月27日に公表した14件に加えて新たに4件の食い違いが見つかり、合計18件になった。
18件のうち7件は請求額に影響があり得る
中部電力は18件を3つの型に分けている。工事の実績に関係しない書き換えが8件、工事の実績を反映させるための書き換えが3件で、この11件は費用請求に影響がないとした。残る7件は「計画に合わせるための機器の追加・削除」にあたり、費用請求への影響があり得るものと評価した。さらに、工事報告書の書き換えは確認されなかったものの、社内のデータとNuROへの実施報告の内容が合わない例が1件見つかり、あわせて8件が影響を調べる対象になっている。
影響があり得るとされた7件のうち1件については、2024年度に完成しなかった工事を、NuROの現地確認までに終わらせるため、別の名目の業務委託によって請負会社に工事をさせていた可能性があると同社は書いている。この請負会社である中部プラントサービスは1961年設立で、資本金2億4千万円、従業員1559人(2026年7月1日現在)。株主は中部電力とトーエネックの2社である。
調査の過程では、NuROの計画額と数字が合うように、中部電力の社員が中部プラントサービスに対して検収金額を指示していた事実も確認された。指示は上記の7件以外にも及んでいたといい、同社は検収そのものの適切さに疑いが生じたとして、36件すべてを調べ直している。中部電力が2年半にわたって電気料金を取りすぎ、500万件・総額12億円の返金に至った件でも社内で気づきながら是正が遅れており、中部電力、電気料金を2年半にわたり取りすぎ 500万件・総額12億円 2024年に社内で気づきながら是正せずと同様、社内での歯止めの弱さが今回も問われる形になった。
「計画どおりに報告しないと支払いを受けられない」
原因として中部電力が挙げたのは、動機・機会・正当化の3点である。
動機については、廃止措置計画課の役職者が、計画どおりの実績を報告しなければ申請した計画そのものの信用を失うと恐れた、と説明している。過去にNuROへの事前相談を重ねる過程で計画の申請すら認められなかったことがあり、計画と実績に差があると費用の支払いを受けにくくなるとの考えを持って心理的な負荷が増したという。2024年度の計画自体に不正確な内容が含まれていたことも背景にあったとしている。
機会としては、計画の作成から検収、費用請求の根拠資料の取りまとめまでを担う同課の役職者が書き換えを指示したことで、現場での管理監督が働かなくなった点を挙げた。課内には役職者の指示に逆らえない空気があり、上位職との関係も良好でなかったため相談も申告もされず、内部通報を行うという発想もなかったという。同課の業務を点検する部門やシステムは存在しなかった。
正当化にあたる部分では、解体が終わっていなくても最終的にはその分も請求して支払いを受ける予定だったことから、実害は大きくないと安易に考えた、と分析している。再発防止策は事実関係の調査が終わっていないため今後まとめる方針で、同社は基準地震動の案件と不適切な調達の案件を受けて作った再発防止策を実施中であり、それらと共通する原因があるかどうかも確認するとしている。
廃炉の費用は機構を通じて支払われる
この事案が行政処分の手続きに直結するのは、廃炉の費用が国の制度の下で支払われているからだ。NuROは2016年10月3日に認可法人として設立され、2023年5月の法改正を経て2024年4月1日に「使用済燃料再処理機構」から現在の名称に変わり、廃炉を進める業務が加わった。電力会社はNuROに廃炉実施計画を出して確認を受け、工事の実施報告と費用の請求を行い、支払いを受ける仕組みになっている。実績と違う報告は、この確認と支払いの前提を崩すことになる。
経済産業大臣が使った根拠は、再処理等拠出金法70条1項である。同項は、法律の施行に必要な限度で原子炉設置者に業務の報告をさせ、事業場に立ち入って帳簿や書類を検査できると定めている。9月25日に経産省が求めた追加報告は、事実関係と経緯および対応状況、発生原因と実効性のある再発防止策、ほかに同種の事案がないかの3項目で、期限は切らず「とりまとまり次第速やかに」とした。
同じ日、NuROも56条1項に基づいて追加の指示を出した。同項は、機構が業務を行うために必要なときは原子炉設置者に報告や資料の提出を求めることができるという規定で、求められた側は遅滞なく応じなければならないと2項が定めている。指示の内容は事実関係の継続調査と、原因の究明および再発防止対策である。
中部電力は8月の事案確認後、社長を議長、コンプライアンス本部長を副議長とし、外部の弁護士や監査等委員を加えた「重大案件会議」で調査を進めてきた。36件の検収の実態やNuROへの請求内容を詳しく調べる必要が生じたことから、9月17日に外部の公認会計士が加わり、24日にはこの会計士を同会議の構成員としたうえで、その下に「調査タスクフォース」を設けている。同社は今回の報告を現時点で確認できた事実をまとめたものと位置づけ、調査を続けて改めて報告書にまとめるとしている。
