人事院は9月18日、2026年度の国家公務員採用総合職試験の申込状況を公表した。春と秋を合わせた申込者は1万8281人で、前年度の1万7942人から1.9%増えた。人事院は発表資料の副題に「総合職試験全体の申込者数は1.9%増加」と掲げている。
増えたのは専門試験を課さない「教養区分」だけで、申込の48.8%を占めるまでになった。ただし5月29日に発表された春の実施結果では、初めて春に実施した教養区分の最終合格者は213人、申込倍率は14.7倍で、春の総合職試験全体の6.2倍より狭い門だった。
秋の教養区分は10月4日に第1次試験を行い、人事院が10月30日付で更新した試験実施状況によると、申込5795人のうち3916人が受験し、783人が第1次試験に合格した。最終合格者は12月17日に発表される。
増えたのは「教養区分」だけ 専門試験のある区分は2662人減
資料1によると、2026年度の内訳は、大卒程度試験の教養区分が8928人、教養区分以外が8078人、大学院修了者を対象とする院卒者試験が1275人だった。前年度はそれぞれ5914人、1万740人、1288人である。
教養区分は3014人増えて前年度の1.51倍になった。一方で、専門試験を課す教養区分以外は1万740人から8078人へ2662人減り、前年度の75.2%にとどまった。院卒者試験も1288人から1275人へ13人減っている。全体が1.9%のプラスになったのは、教養区分の伸びが他の2つの減少を上回ったためだ。
秋に実施する教養区分そのものは5795人で、前年度の5914人から119人減った。全体を押し上げたのは、今年度から春にも教養区分を実施し、3133人の申し込みがあったことである。
総合職の申込者の48.8%が教養区分 2012年は4.5%だった
総合職試験の申込者に占める教養区分の割合は48.8%で、前年度の33.0%から上がり、半数に迫った。資料2に載る推移の起点である2012年は、教養区分の申込者が1134人で、総合職全体に占める割合は4.5%にすぎなかった。2024年は4734人・25.8%、2025年は5914人・33.0%と、この3年で急速に比重が移っている。
総合職全体の申込者は2012年の2万5110人が最も多く、2026年の1万8281人はそこから6829人少ない。ただし全体の減り方は、ここ5年は止まっている。資料2の推移では2022年が1万8295人、2023年が1万8386人、2024年が1万8333人、2025年が1万7942人、2026年が1万8281人で、5年続けて1万8000人前後にとどまっている。全体の人数が動かないまま、内訳だけが入れ替わっているのが2026年度の姿である。
専門試験を課す区分は14年で2万3976人から9353人へ
資料2は、総合職全体の申込者数と、教養区分の申込者数、そしてその差である教養区分以外(院卒者試験を含む、専門試験を課す区分)の申込者数を2012年から並べている。専門試験を課す区分は2012年が2万3976人で、2026年は9353人である。14年で1万4623人減り、2012年の39.0%になった。新しい試験制度が始まった2012年から数えて1万人を下回ったのは2026年が初めてで、前年の1万2028人から2675人減っている。
反対に教養区分は2012年の1134人から2026年の8928人へ7794人増え、7.87倍になった。この間に増えなかった年は、2014年(1962人から1913人)、2021年(3172人から3084人)、2022年(3084人から2952人)の3回だけである。2023年に4014人へ跳ね、そこから4734人、5914人、8928人と4年続けて増えた。
内訳を入れ替えた直接の要因は、2026年度から春にも教養区分を実施したことだ。春の教養区分3133人という新しい受け皿ができた一方で、同じ春に実施する教養区分以外は1万740人から8078人へ減っている。人事院の資料は、春の教養区分の申込者が教養区分以外から移ったものかどうかは示していない。
国家公務員の人件費や定員の全体像は、国と地方の公務員人件費、2026年度は29.7兆円 国家公務員は58.7万人で5兆6691億円 行政機関の定員30万8197人は17年ぶりの多さで扱っている。
春に初実施した教養区分は3133人の申込に対し合格213人 申込倍率14.7倍
申込の半数近くを占めるようになった教養区分だが、合格者の数で見ると比重はまだ小さい。人事院が5月29日に発表した春の総合職試験の合格者発表によると、春に初めて実施した教養区分は、申込3133人・第1次試験の受験2175人に対し、合格者は213人だった。申込倍率(申込者数÷合格者数)は14.7倍、受験倍率(第1次試験受験者数÷合格者数)は10.2倍である。
同じ春の総合職試験全体では、申込1万2486人・受験9940人に対し合格者が2021人で、申込倍率は6.2倍、受験倍率は4.9倍だった。教養区分の14.7倍は、春全体の6.2倍の2倍以上にあたる。区分で分けると、専門試験を課す大卒程度試験(教養区分を除く)は申込8078人に対し最終合格1158人で申込倍率7.0倍・受験倍率5.8倍、院卒者試験は申込1275人に対し最終合格650人で2.0倍・1.5倍である。専門試験のない教養区分がいちばん狭い門になっている。
人事院が10月30日付で更新した2026年度の試験実施状況によると、春の教養区分は受験2175人のうち第1次試験の合格が408人、第2次試験の受験が372人で、そこから213人が最終合格した。第1次試験で2175人が408人に絞られる段階が最も厳しい。
資料5によると、前年秋と春を足した合格者数は2026年度が2447人で、そのうち教養区分は639人の26.1%だった。前年度は2260人のうち467人の20.7%、2015年度は1877人のうち123人の6.6%である。申込では48.8%を占める教養区分が、合格者では26.1%にとどまっている。
教養区分の合格者213人のうち、本年4月1日時点で19歳だったのは25人の11.7%だった。人事院は、この19歳の合格者(大学2年生の場合)の採用時期は主として2028年度(大学4年生時)の官庁訪問を経た2029年4月になる見込みだとしている。合格から採用まで3年近く空くのが、低学年から受けられるこの区分の特徴である。
春の合格者2021人のうち女性は722人で、合格者に占める割合は35.7%と過去最高になった。前年度は630人・35.1%である。ただし教養区分だけを見ると、申込3133人のうち女性は1302人の41.6%だったのに対し、合格213人のうち女性は69人の32.4%で、申込の段階より割合が下がっている。合格者の出身学校数は163校で、前年度の153校から10校増えた。
合格は採用の約束ではない。合格者は名簿に載り、府省の官庁訪問を経て採用が決まる。人事院の人事行政関連データによると、令和7年度に総合職試験(大卒程度試験)の名簿から採用されたのは564人で、うち教養区分からが203人、専門試験を課す区分からが361人だった。女性は教養区分で73人、全体で218人である。このほか特別職の防衛省で教養区分9人を含む29人が採用されている。この採用者数には過年度の名簿からの採用も含まれるため、特定の年度の合格者数とそのまま対応するものではない。
教養区分とは 専門試験を課さず、大学2年から受けられる
教養区分は、専攻分野にとらわれない広い見識を持つ学生や外国の大学の卒業生など、多様な人材を確保する狙いで設けられた区分だ。法律・経済・工学といった専門試験を課さず、企画立案に関する基礎的な能力の検証を重視する。19歳(主に大学2年生)から受験でき、今年度から春秋の年2回実施になったことで、大学4年生までに春秋あわせて最大6回受けられるようになった。
人事院は、採用後の勤務地も人材確保の焦点とみている。国家公務員の52.6%が転勤に否定的 10万7662人調査 「絶対に行きたくない」は持ち家が49.4%で最多 人事院が公務員白書で特集のとおり、令和8年度からは一般職試験(大卒程度)の合格者に初任地の希望を聴き取って各府省へ提供する運用が始まった。
受験申込みは7月31日から8月24日までの25日間で、昨年度と同じ日数だった。
秋の教養区分、第1次試験の合格は783人 受験3916人の約5人に1人
秋の教養区分の第1次試験は10月4日に行われ、基礎能力試験(多肢選択式)と総合論文試験を課した。合格者は10月21日午前9時に発表された。人事院が10月30日付で更新した2026年度の試験実施状況によると、申込5795人のうち第1次試験を受験したのは3916人で、合格者は783人だった。
申し込んだ人のうち実際に受験したのは67.6%で、受験者に占める1次合格者の割合は20.0%になる。受験者のおよそ5人に1人が第2次試験へ進む計算だ。春の教養区分は受験2175人に対し1次合格408人で、受験者に占める割合は18.8%だった。秋は受験者が春の1.8倍あり、1次合格者も春の408人の1.9倍にあたる。春と秋を合わせると、2026年度の教養区分の1次合格者は1191人になる。
女性は秋の申込者の44.2%にあたる2560人、受験者の45.5%にあたる1780人だったが、1次合格者783人のうち女性は188人で、24.0%にとどまる。春の教養区分でも1次合格408人のうち女性は105人の25.7%で、受験の段階より割合が下がる傾向は秋も同じだった。
第2次試験は11月24日・25日、または26日・27日のうち人事院が指定する連続2日間で行い、企画提案試験、政策課題討議試験、人物試験を課す。最終合格者の発表は12月17日午前9時である。春の教養区分では1次合格408人のうち372人が第2次試験を受け、213人が最終合格した。秋の最終合格者数と倍率は、12月17日の発表まで公表されていない。
秋の教養区分の合格者が官庁訪問をするときの決まりは、人事院が「総合職官庁訪問ルール(秋の教養区分)」として別に定めている。合格者は名簿に載ったあと、府省の官庁訪問を経て採用が決まる流れは春と変わらない。
女性は教養区分で3862人・43.3% 人数・割合とも過去最高
2026年度の教養区分の女性申込者は3862人で、同区分の申込者に占める割合は43.3%となり、人数・割合ともに過去最高になった。前年度は2527人・42.7%である。秋実施分だけでは2560人・44.2%で、前年度の秋の2527人・42.7%を上回った。
総合職試験全体では女性が8079人・44.2%で、前年度の7856人・43.8%から増えている。区分別の女性割合が最も高いのは、申込者が減った教養区分以外で、8078人のうち3797人の47.0%を占める。院卒者試験は1275人のうち420人の32.9%だった。
採用後の給与水準については、国家公務員の平均給与月額43万9356円 前年の42万4979円から1万4377円増 うち8万3099円は手当で、最も大きいのは地域手当の4万5518円のとおり、人事院が毎年の実態調査で公表している。令和8年の勧告では総合職(大卒)の初任給を25万1500円とするよう求めた。
中途採用の「経験者採用試験」は2640人 実施をやめた2試験を除けば2割増
人事院は同じ18日、民間企業などでの実務経験を持つ人を係長級の官職に採用する経験者採用試験(5種類7試験)の申込状況も公表した。申込者は2640人で、前年度の2360人から280人(11.9%)増えた。
ただし前年度の2360人には、2026年度は実施しない外務省経験者採用試験(書記官級)の147人と、農林水産省経験者採用試験(係長級(技術))の33人が含まれている。この180人を除いた2180人と比べると、2640人は460人多く、2割を超える伸びになる。
試験別では、複数の府省がまとめて実施する経験者採用試験(係長級(事務))が1711人で、前年度の1121人から590人増えた。このうち政策の企画立案などを担う府省合同A区分は204人から284人へ、政策・事業の実施などを担う府省合同B区分は917人から1427人へ増えている。国税庁経験者採用試験(国税調査官級)は951人から802人へ149人減った。総務省・国土交通省・気象庁が実施する技術系の3種類4試験は合計127人で、前年度の108人から19人増えた。
人材を集める手立てとしては、採用後のキャリア形成も打ち出されている。人事院は国家公務員の留学は令和7年度463件 早期に辞めて費用の返還義務が生じたのは94件 国内46件のうち36件は防衛省の学校と公表し、令和8年度の新規採用職員へのアンケートで約8割が留学などの国際的な経験を希望したとして、留学を「公務の魅力の一つ」として発信する方針を示した。
女性の申込者は709人で、前年度の574人から135人増え、全体に占める割合は24.3%から26.9%に上がった。経験者採用試験の第1次試験も10月4日に行われた。最終合格者の発表は府省合同A区分が11月20日、府省合同B区分が12月4日、総務省・国税庁・国土交通省・気象庁の各試験が12月23日で、いずれも午前9時である。
