財務省は10月13日、片山財務相が世界銀行・国際通貨基金(IMF)合同開発委員会の次期議長に指名されたと発表した。15日にタイ・バンコクで開かれる同委員会で正式に選ばれる予定で、任期はバンコクでの会合が終わった後から2028年10月までの2年間となる。財務省によると、日本から議長が選ばれるのは1974年に同委員会が設けられて以来初めて。

首相がXで発表、財務相は会見で「大変光栄」

片山氏は13日の閣議後記者会見の冒頭で、指名について自ら説明した。「日本の財務大臣が議長となるのは1974年にこの委員会が設置されて以降初めて」と述べたうえで、議長として実際に議事を取り仕切るのは来年4月の会合と、その後の10月、4月、10月の計4回になると説明した。来年4月の会場については「おそらくこれはワシントン」と述べた。

開発委員会について片山氏は「世銀・IMFの主要加盟国の大臣級が開発課題について議論し、両機関に勧告を行う重要な会議」と位置づけ、「このような権威のある会議の議長として指名をいただいたことは大変光栄に思う」と語った。そのうえで、日本が持つ開発政策や国際金融政策などの経験、知見、技術を生かし、「他国の協力も得ながら本委員会での建設的な議論を主導してまいりたい」と抱負を述べた。

発表の経緯にも触れた。会見によると、12日午後9時に高市首相がX(旧ツイッター)で発表し、その約20分後に片山氏自身もそれを引用する形で知らせたという。財務省は翌13日、ホームページに「次期議長指名について」と題する文書を掲げ、「日本として、今後、片山新議長のもとで委員会運営に一層積極的に貢献し、世銀及びIMFによる開発課題に対する取組を引き続き後押ししてまいります」とした。

途上国の開発を話し合う閣僚級の場

開発委員会は、世界銀行グループとIMFが共同で設けている閣僚級の会議だ。委員会の公式サイトによると、正式名称は「途上国への実物資源の移転に関する世銀・IMF総務会合同閣僚委員会」で、1974年に設けられた。開発をめぐる重要な課題や、途上国の経済発展を進めるために必要な資金について、世銀とIMFの総務会に助言することを任務とする。当初の役割は伝統的な開発問題だったが、年を追うごとに貿易や地球環境の問題も扱うようになったと説明している。

委員は25人で、多くは各国の財務相か開発担当相が務める。世銀とIMFの理事会に理事を出している国、あるいは国のグループがそれぞれ任命し、全加盟国を代表する形をとる。財務省も、原則として世銀またはIMFの理事選出国の大臣級委員25人からなると説明している。議長は委員の中から選ばれ、委員会が選ぶ事務局長がこれを補佐する。

会合は年2回で、春の会合と、秋の世銀・IMF年次総会に合わせて開かれる。IMF側の閣僚級会議である国際通貨金融委員会(IMFC)と並行して開くのが慣例だ。議題は、議長、世銀総裁、IMF専務理事、両機関の理事会が勧めるテーマをもとに組み立てる。議長は会合の進行役であるだけでなく、何を話し合うかを決める段階にも関わる立場にある。

スウェーデン財務相から引き継ぐ

現在の議長は、スウェーデンの財務相で穏健党の政治家であるエリザベート・スバンテソン氏だ。公式サイトによると、2024年10月25日から議長を務めている。財務省の一覧では、この日は第110回の会合がワシントンで開かれた日にあたる。

会合のあと、議長は委員の多数意見をまとめた「議長声明」を出す。スバンテソン氏が2026年4月16日の第113回会合後に出した声明は、中東での新たな紛争を含む度重なるショックが世界経済を揺さぶり、最も貧しく弱い立場の人々が最も強く打撃を受けると指摘した。そのうえで、世銀グループが雇用づくりに重点を置くことを委員が強く支持したと記し、次の世代の若者に仕事を用意することの緊急性を挙げた。声明は次回の会合を2026年10月にバンコクで開くと結んでいる。

会場は持ち回りの仕組みがある。公式サイトによると、秋の会合は3年のうち2年はワシントンで開き、加盟国の国際性を映すため、3年に1度は別の加盟国で開く。財務省の一覧でも、2024年以降の会合はワシントンが続き、それより前の秋の会合としては2023年10月の第108回がモロッコのマラケシュで開かれている。15日のバンコクの会合は第114回にあたる。

日本は重要鉱物や債務問題を訴えてきた

日本はこれまで、各回の会合に「日本国ステートメント」を出し、世銀グループへの期待と日本の貢献を表明してきた。4月の第113回会合に出したステートメントでは、レアアースをはじめとする重要鉱物の供給網を強くすることを「喫緊の課題」と位置づけ、途上国で重要鉱物の供給網の中流・下流を多様にする世銀の取り組み「RISEパートナーシップ」を、レアアースの分野にも広げることへの期待を示した。

債務問題では、借り手の国の債務の全体像を明らかにする「債務透明性」の向上を掲げ、世銀のデータ共有の取り組みに主要20か国・地域(G20)のすべてのメンバーが参加するよう改めて促した。債務再編を進める枠組み「共通枠組」については、手続きを速くすることが依然として課題だとした。このほか、多数国間投資保証機関(MIGA)のウクライナ復興向け信託基金に1000万ドルを追加で拠出することや、気候変動に強い債務条項を組み込んだソロモン諸島向け円借款を日本として初めて供与する方針も盛り込んだ。

IMFが示す日本経済の見通しや、財務省がとらえる国際金融情勢については、日本の2026年成長率見通し、IMFは0.7%から0.6%へ 財務省が審議会に国際金融情勢を報告 米財務長官とは「秩序だった円相場」の重要性を確認で伝えている。議長に就けば、日本は委員の一人として主張を述べる立場に加え、議題づくりに関わる立場も得ることになる。

バンコク出張は国会の了解待ち

片山氏が15日のバンコクの会合に出席できるかどうかは、13日の時点で決まっていない。会見で記者から出席の予定を問われた片山氏は、現地では15日の開発委員会の昼食会と委員会で紹介されることになると説明する一方、「まだ議院運営委員会理事会の了解をいただいていない」と述べた。片山氏は「海外渡航の申請になります」と説明し、了解が出るまでは「行ける行けないを正式に申し上げるのは失礼になる」として、出席を明言しなかった。

出席できた場合の議論については、世界経済が「非常に微妙な時期」にあるとの認識を示した。現地ではG7やG20の会合も開かれるとし、ベッセント米財務長官が参加するかどうかにかかわらず「極めて流動的な難しい状況は同じ」だと述べた。そのうえで、各国のカウンターパートと情勢を踏まえた意見交換をし、「フロンティアAI」と呼ばれる最先端のAIへの対応も話題になるとの見通しを示した。

議長として最初に議事を取り仕切るのは来年4月の会合で、任期中の4回の会合を終える2028年10月までが任期となる。財務省は、バンコクの会合を「第114回世銀・IMF合同開発委員会(2026年10月15日 於:バンコク)」として一覧に載せており、議長声明や日本国ステートメントを会合ごとに公開している。