環境省は10月30日、東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて定められた放射性物質汚染対処特別措置法に基づき、福島県川俣町の「汚染状況重点調査地域」の指定を同日付で解除し、告示した。町内の平均的な空間線量率が、指定の目安とされてきた毎時0.23マイクロシーベルトを下回ったことを理由に挙げている。指定の解除は46例目で、これにより指定が残る市町村は福島県以外を含め58市町村になった。

線量が要件を下回り、14年10か月ぶりに解除

川俣町が汚染状況重点調査地域に指定されたのは2011年(平成23年)12月28日。解除まで14年10か月にわたり指定が続いた。

環境省の発表によると、川俣町は平均的な空間線量率が毎時0.23マイクロシーベルト未満となっており、「指定の要件となった事実に変更が生じています」としている。特措法は、指定の要件となった事実が変わって必要が生じたときは、環境大臣が区域を変更し、または指定を解除できると定めている(第33条第1項)。

解除にあたっては、指定のときと同じく関係する自治体の長の意見を聴き、解除後は公告と通知をする決まりになっている(第33条第2項が第32条第3項・第4項を準用)。環境省は福島県知事と川俣町長に意見を聴き、いずれも「区域の指定解除について異議がない旨の回答」を得たうえで解除し、告示した。

発表は解除の対象を「川俣町の区域」としたうえで、除染特別地域に当たる区域は除くと注記している。川俣町には、市町村ではなく国が直接除染を担った区域も含まれていたためで、この点は次の節で説明する。

汚染状況重点調査地域とは何か

汚染状況重点調査地域は、事故で放出された放射性物質による汚染の状況を、重点的に調べて測る必要がある地域として、環境大臣が指定する(特措法第32条第1項)。環境省の説明では、空間線量率が毎時0.23マイクロシーベルト以上となる、またはそのおそれが著しいと認められる区域を含む市町村が対象になる。

指定は2011年12月と2012年2月に行われた。指定を受けた市町村は、区域内の線量を測り、除染実施計画を作って除染を進める。担い手は国ではなく市町村などである。これまでに福島県内外の104市町村が指定され、2018年(平成30年)3月までに市町村などによる面的な除染が終わったと環境省は説明している。

面的な除染が終わった後も、線量が目安を下回り、自治体の長が同意しなければ指定は外れない。今回の解除は、測定を続けた結果として町全体の平均線量が要件を満たさなくなったことを、国と県・町が確認した手続きにあたる。

川俣町では国も直轄で除染した

特措法は、汚染状況重点調査地域とは別に、汚染が著しく国が自ら除染する「除染特別地域」を設けている(第25条)。汚染状況重点調査地域は、条文上「除染特別地域を除く」と定義されており、二つの区域は重ならない。

川俣町はこの両方を抱えていた。環境省の除染情報サイトによると、町内の除染特別地域では2012年8月に国の除染実施計画が作られ、2013年3月から2015年12月にかけて面的な除染が行われた。対象は居住制限区域と避難指示解除準備区域の生活圏などで、対象区域の人口は約1200人、面積は約1600ヘクタール。宅地約450件、農地約610ヘクタール、森林約730ヘクタール、道路約71ヘクタールで作業し、避難指示は2017年3月31日に解除された。

今回外れたのは、この国直轄の区域を除いた町内の区域にかかっていた指定である。同サイトは、除染後の事後モニタリングの結果から「面的な除染の効果が維持されていることが確認できます」としている。

解除は2022年以降、福島県内が中心

環境省が示した解除の一覧によると、最初の解除は2012年12月27日の福島県昭和村と群馬県片品村、みなかみ町。その後、2017年3月までに宮城県石巻市、茨城県鉾田市、栃木県佐野市、群馬県安中市・中之条町などが外れ、指定は2017年3月の時点で92市町村まで減った。

2022年からは福島県内で解除が続いている。2022年3月以降の解除は次のとおりで、28市町村すべてが福島県内だった。

解除日 解除した市町村(福島県) 残る指定
2022年3月31日 田村市、本宮市、桑折町 83
2022年6月30日 須賀川市、鏡石町、天栄村 80
2022年9月30日 白河市、相馬市、泉崎村、中島村、矢吹町、小野町 74
2023年3月31日 福島市、郡山市、二本松市、国見町、三春町 69
2023年9月29日 伊達市 68
2024年3月29日 いわき市、西郷村、新地町 65
2025年9月30日 棚倉町 64
2026年6月30日 石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町 59
2026年10月30日 川俣町 58
2022年3月以降の汚染状況重点調査地域の指定解除出典: 環境省「放射性物質汚染対処特別措置法に基づく汚染状況重点調査地域の指定の解除について」参考2

一覧を数えると、これまでに解除された46市町村のうち38市町村が福島県内で、福島県外は宮城県2、茨城県1、栃木県1、群馬県4の計8市町村にとどまる。福島県内で指定が残るのは、南相馬市、広野町、川内村の3市町村になった。

残る58市町村、8割近くが関東5県

指定が残る58市町村を県別に見ると、茨城県が19市町村で最も多く、千葉県9、群馬県8、宮城県7、栃木県7と続く。岩手県と福島県が各3、埼玉県が2。茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉の関東5県で45市町村となり、全体の8割近くを占める。

汚染状況重点調査地域の指定が残る市町村数(市町村)

関東5県45宮城7岩手3福島3
関東5県は茨城19、千葉9、群馬8、栃木7、埼玉2の合計(本紙で合算)出典: 環境省「汚染状況重点調査地域の指定の解除について」参考1(2026年10月30日時点)
数値で見る(単位: 市町村)
項目市町村
関東5県45
宮城7
岩手3
福島3

関東で最後に解除されたのは2017年3月22日の群馬県安中市と中之条町で、それから9年7か月の間、関東5県で解除された市町村はない。福島県外での解除も2021年3月の宮城県亘理町が最後になっている。岩手県の一関市、奥州市、平泉町は、指定から一度も解除されていない。

茨城県では日立市、つくば市、取手市など19市町村、千葉県では松戸市、柏市、流山市など9市が今も指定を受けている。特措法の仕組みでは、線量が目安を下回り、知事や市町村長が異議を示さなければ、福島県外でも同じ手続きで解除できる。今回の発表は川俣町を対象としたもので、ほかの市町村の扱いには触れていない。