環境省は10月30日、東京電力リニューアブルパワー(東電RP)が千葉県銚子市の沖合に洋上風力発電所を造る「(仮称)銚子市沖洋上風力発電事業」の計画段階環境配慮書について、環境大臣意見を経済産業相に提出した。発電所の出力は最大42万キロワット。想定区域とその周辺で国内希少種のウミガラスなど海鳥が確認されているとして、影響を適切に調べ、回避または極力低減するよう求めた。銚子市沖は、2021年に国の公募で選ばれた三菱商事系の事業者が撤退し、2025年9月に計画の認定が取り消された海域で、東電RPは新規の事業として環境影響評価(環境アセスメント)の手続きを始めている。
環境相意見、海鳥・海の生き物・景観の3点を挙げる
環境省の発表によると、大臣意見は主に3点を求めた。
1点目は鳥類への影響だ。意見の本文は、想定区域とその周辺には海鳥が多く飛来し、種の保存法で国内希少野生動植物種に指定されているウミガラスのほか、環境省第5次レッドリストで絶滅危惧ⅠA類のウミスズメ、ⅠB類のヒメウとオオセグロカモメ、Ⅱ類のウミネコなどが確認されていると記した。風車への衝突や移動の阻害が懸念されるとして、周辺の既設の風力発電所でのバードストライク(鳥の衝突)の調査結果を集め、専門家の助言を受けて調査・予測・評価をするよう求めた。
2点目は海の生き物だ。想定区域の一部と周辺は、環境省が2016年に「生物多様性の観点から重要度の高い海域」として抽出した範囲に入り、小型のクジラの仲間であるスナメリの生息も確認されている。意見は、沿岸の浅い場所など海生生物の生息の基盤となる区域を明らかにしたうえで、工事中の水の濁りなどによる影響を調べ、懸念があれば環境保全措置を講じるよう求めた。
3点目は景観だ。周辺には水郷筑波国定公園があり、公園計画の利用施設である「天王台園地」や「犬若屏風ヶ浦線道路(歩道)」などの主要な眺望点がある。「飯岡刑部岬展望館」などの眺望点も挙げ、フォトモンタージュ(合成写真)などで眺めの変化を予測・評価し、影響を回避または極力低減するよう求めた。事業計画を具体化する際には、国定公園の管理者や地方公共団体、地域住民などの意見を踏まえるよう求めている。
このほか、近くの住居に風車の影がかかる影響や、周辺で稼働中または手続き中の複数の風力発電所との累積的な影響も挙げた。重大な影響を回避または十分に低減できない場合は、風車の配置の再検討や区域の見直し、基数の削減を含む事業計画の見直しを行うよう求めている。
最大27基、高さ310メートルの風車を想定
東電RPが千葉県環境影響評価委員会に提出した説明資料によると、計画は着床式(海底に基礎を固定する方式)の洋上風力で、想定区域は銚子市の沖合約40平方キロメートル。名洗港の港湾区域を除いた範囲を想定区域とした。
風車は1基あたり1万5000〜2万キロワット級を想定し、基数は1万5000キロワット級なら27基、2万キロワット級なら21基とした。ローター(羽根の回転部分)の直径は約220〜280メートル、海面からハブ(羽根の付け根)までの高さは約140〜170メートルで、景観の予測では最大高さ310メートルの風車を置いた場合を試算した。出力は一般家庭約27万世帯分としている。工程は、基礎工事が2031年度以降、運転開始は2032年度以降の予定だ。
| 項目 | 千葉銚子オフショアウィンド(2021年選定・認定取消し) | 東電RP(2026年8月に配慮書) |
|---|---|---|
| 発電所の出力 | 39万600キロワット | 最大42万キロワット |
| 風車1基の出力 | 1万2600キロワット(GE製) | 1万5000〜2万キロワット級 |
| 基数 | 31基 | 21〜27基 |
| 運転開始の予定 | 2028年9月 | 2032年度以降 |
出典: 国土交通省「洋上風力発電事業者の選定について」(2021年12月24日)、東京電力リニューアブルパワー「計画段階環境配慮書 説明資料」(2026年9月)
配慮書の段階で、事業者自身も影響を試算している。説明資料によると、風車からの騒音は最寄りの住宅などで47デシベル、配慮が特に必要な施設で44デシベルと予測し、参考として環境基準をあてはめると、夜間の基準値(住宅は45デシベル、配慮が特に必要な施設は40デシベル)を上回る可能性があるとした。風車を住宅からさらに遠ざけるなどで、重大な影響は回避・低減できると評価している。景観では、25か所の主要な眺望点のすべてで風車が見える可能性が高いと予測した。風車が視野の中で占める高さの角度(垂直見込角)は0.9〜16.1度で、最も大きいのは犬若屏風ヶ浦線道路(歩道)の16.1度だった。
三菱商事系の撤退で認定取り消し、再公募は時期未定
銚子市沖は、2020年7月21日に再エネ海域利用法(現・海洋再エネ整備法)に基づく促進区域に指定された。経産省と国交省は2021年12月24日、秋田県の2海域とあわせて最初の公募の選定事業者を発表し、銚子市沖では三菱商事エナジーソリューションズ、三菱商事、シーテックで構成する「千葉銚子オフショアウィンド」を選んだ。計画は出力39万600キロワット、GE製の1万2600キロワット機を31基並べ、2028年9月に運転を始める予定だった。
千葉県が環境影響評価委員会に示した資料によると、同社は配慮書(2020年度)、方法書(2022年度)、準備書(2024年度)と環境アセスメントの手続きを進めていたが、2025年8月に事業からの撤退を表明した。経産省と国交省は2025年9月11日付で、選定事業者が同法第19条第1項の規定に違反したとして、銚子市沖を含む3海域の公募占用計画の認定を取り消した。
国はその後、銚子市沖での次の公募に向けて準備を進めている。資源エネルギー庁と国交省は2025年11月26日、国が実施した風況・波浪・海底地盤などの調査結果を、公募への参加を検討する事業者に提供すると公表した。ただ、千葉県の資料は2026年9月時点で、再公募について「検討中(時期未定)」と記している。東電RPの配慮書の手続きは、再公募の時期が決まる前に始まったことになる。
東京電力グループは、銚子市沖では今回が2度目の挑戦となる。千葉県の資料によると、東京電力ホールディングスも2019年度に配慮書の手続きを行ったが、最初の公募で選定されず、2022年3月に事業廃止の手続きを取った。東電RPは2026年8月、新規の事業として配慮書の手続きを始めた。秋田県の2海域の動きは、風車の技術者を日本語で育てる ベスタスと秋田県・長崎の協議会が共同調査で覚書で伝えている。
今後の手続き、経産相意見を経て方法書へ
環境影響評価法は、出力5万キロワット以上の風力発電所を第一種事業としている。計画段階環境配慮書は、事業の位置や規模を検討する早い段階で、環境への配慮事項を検討してまとめる図書だ。環境相は、経産相から照会を受けて意見を述べる。今回は9月16日に経産相から照会があり、10月30日に意見を提出した。
千葉県の資料によると、東電RPは8月20日に配慮書を送付し、8月21日から9月25日まで縦覧した。地元からは旭市長が意見を出し、千葉県知事の意見の提出期限は11月13日となっている。県は8月25日に県環境影響評価委員会に諮問し、9月18日に審議した。
今後は経産相が、環境相の意見を勘案した意見を東電RPに述べる。東電RPはその内容を検討して事業計画を決め、方法書から始まる事業段階の環境アセスメントの手続きに進む。大臣意見は、検討の経緯と内容を方法書以降の図書に記載するよう求めた。工事中の水中音や水の濁り、稼働中の鳥やコウモリの衝突などを調べる事後調査の計画を準備書に書くことも検討するよう求めている。
意見の冒頭は、再生可能エネルギーの主力電源化が不可欠だとしたうえで、導入の拡大に伴い景観や生物多様性への影響について地域の懸念が表面化していると指摘した。洋上風力で国内最初の公募の一つだった銚子市沖は、事業者の撤退を経て、再公募の時期が決まらないまま、別の事業者による環境アセスメントが先に始まる形になった。
