警察庁は10月16日、2026年1〜9月の犯罪統計資料(暫定値)を公表した。刑法犯の認知件数は58万8015件で、前年同期の57万4924件より1万3091件(2.3%)多かった。増加分のほとんどは詐欺を中心とする知能犯と、暴行・傷害などの粗暴犯で占められる。一方、窃盗犯は空き巣などの侵入盗と自動車盗が大きく減り、全体でも前年同期を下回った。

1〜9月の認知件数、2019年同期を上回る

認知件数は、警察が被害の届け出などで犯罪の発生を把握した件数を指す。資料に載る各年1〜9月の推移を見ると、2022年の43万4225件から2023年は51万7229件、2024年は54万4921件、2025年は57万4924件と増え続け、2026年は58万8015件になった。新型コロナウイルスの感染が広がる前の2019年同期(56万1141件)を、昨年に続いて上回っている。

刑法犯の認知件数(各年1〜9月)(件)

0200,000400,000600,000561,1412019年434,2252022年517,2292023年544,9212024年574,9242025年588,0152026年
2026年は暫定値。資料に載る年のみ(2020・2021年は掲載なし)出典: 警察庁「犯罪統計資料(令和8年1~9月分)」
数値で見る(単位: 件)
項目件
2019年561,141
2022年434,225
2023年517,229
2024年544,921
2025年574,924
2026年588,015

検挙件数は22万2045件で6677件(3.1%)増え、検挙人員は14万9790人で5696人(4.0%)増えた。認知件数に対する検挙件数の割合である検挙率は、前年同期の37.5%から37.8%になった。検挙人員のうち少年は1万8734人で、前年同期の1万7010人より1724人多い。

都道府県別では、東京都の認知件数が8万1302件で前年同期より8081件(11.0%)増えた。全国の増加分1万3091件の6割強を東京都が占める。神奈川県(3万9259件、2249件増)と愛知県(4万4345件、2135件増)も増えた。大阪府は6万2754件で前年同期とほぼ同じ、埼玉県は3万7608件で2480件減っている。

詐欺が7615件増え、検挙率は22.0%

罪種別で増加が最も大きいのは詐欺だった。認知件数は5万8839件で、前年同期の5万1224件より7615件(14.9%)多い。詐欺を含む知能犯全体では6万3142件となり、2019年同期の2万6970件の2.3倍になった。刑法犯全体の増加1万3091件のうち、知能犯が8373件を占める。

詐欺の検挙件数は1万2921件で703件増えたが、認知件数の伸びには及ばなかった。検挙率は前年同期の23.9%から22.0%に下がっている。刑法犯全体の検挙率37.8%と比べても低く、被害を把握しても摘発まで至らない事件が積み上がっている。

被害者の年齢別に見ると、詐欺の被害は特定の世代に偏っていない。最も多いのは50代の8848件(前年同期7451件)で、20代の7296件(同5938件)、40代の6939件(同6288件)、70代の6533件(同5465件)と続く。前年同期からの増え方も、50代が1397件、20代が1358件、70代が1068件と、若い世代と高齢の世代の双方で大きい。

警察庁は特殊詐欺の被害状況を別に月ごとに公表している。1〜8月の状況は1〜8月の特殊詐欺、被害額は2360億円で前年同期より588億円多い 認知件数は2万9687件 SNS型投資詐欺は1月の1084件から8月は531件へ減るで伝えた。詐欺の被害が金額の面でも膨らんでいることは、刑法犯の財産被害4983億円、10年で3.4倍 8割が詐欺 増えた963億円のうち874億円は現金でも取り上げている。

暴行・傷害・脅迫も増加、粗暴犯は5万件超

暴行や傷害などを含む粗暴犯の認知件数は5万701件で、前年同期の4万6068件より4633件(10.1%)多かった。内訳は暴行が2万5219件(7.5%増)、傷害が1万9177件(11.0%増)、脅迫が4432件(17.0%増)、恐喝が1858件(21.2%増)で、いずれも前年同期を上回った。粗暴犯の検挙率は77.9%で、前年同期(77.8%)とほぼ変わらない。

治安情勢を見る指標として警察庁が位置づける「重要犯罪」(殺人、強盗、放火、不同意性交等、略取誘拐・人身売買、不同意わいせつ)の認知件数は1万1793件で、前年同期の1万1100件より693件多かった。罪種別では、殺人が756件(前年同期743件)、強盗が1115件(同1074件)、放火が570件(同501件)、不同意わいせつが5438件(同5272件)だった。

最も伸びが大きいのは不同意性交等で、3446件と前年同期の3051件から12.9%増えた。2019年同期の1049件と比べると3.3倍になる。資料の凡例によると、統計は2023年7月12日以前の事件について旧罪名の強制性交等の数値を計上しており、罪名が改められた後も件数は増え続けている。

強盗の検挙人員は1388人で前年同期の1269人より119人多く、このうち少年は427人(前年同期324人)だった。殺人・強盗・放火・不同意性交等をまとめた凶悪犯の検挙人員に占める少年は779人で、前年同期の593人から186人増えている。

窃盗犯は減少、自動車盗は45%減

刑法犯の6割余りを占める窃盗犯の認知件数は38万1811件で、前年同期の38万4366件より2555件(0.7%)少なかった。2019年同期の39万8682件も下回っている。

減少が目立つのは住宅や事務所に入り込む侵入盗で、3万1627件と前年同期の3万5772件から11.6%減った。手口別では空き巣が7795件(前年同期8807件)、住人の就寝中などに入る忍込みが2620件(同3706件)だった。自動車盗は2846件で、前年同期の5193件からほぼ半減(45.2%減)した。自動車盗の検挙件数は2433件で、前年同期の1611件から822件増えている。侵入盗や自動車盗、ひったくり、すりをまとめた「重要窃盗犯」は3万5887件で、前年同期の4万2568件を6681件下回った。

身近な被害は横ばいか微増にとどまる。最も件数が多い自転車盗は12万8685件(0.4%増)、万引きは7万9737件(1.3%増)、オートバイ盗は1万1861件(9.1%増)だった。

特別法犯は麻薬関係が増加、暴力団の検挙は減少

資料は刑法犯のほか、個別の法律に違反した特別法犯の検挙状況も載せている。交通関係の違反を除く特別法犯の検挙件数は4万9363件で、前年同期の4万6073件より3290件(7.1%)多かった。法令別では、資料で「麻薬等取締法」とまとめた違反が9806件で2034件(26.2%)増え、覚醒剤取締法違反の6547件を上回った。ストーカー規制法違反は1389件で、前年同期の1018件から36.4%増えている。一方、入管法違反は3239件で598件減った。

暴力団員らによる刑法犯の検挙件数は4369件で、前年同期の6172件から1803件(29.2%)減った。検挙人員も2879人で、前年同期の3274人を395人下回っている。

今回の数値はいずれも暫定値で、資料には2027年2月1日に確定すると記されている。犯罪統計資料は警察庁刑事局がまとめ、刑法犯を罪種別、手口別、都道府県別に前年同期と比べている。

1〜9月の動きを整理すると、刑法犯の総数は前年をやや上回る水準で推移しているが、中身は罪種によって分かれている。侵入盗や自動車盗のように件数が大きく減った犯罪がある一方、詐欺は件数が前年同期より1割余り増え、検挙率は下がった。暴行・傷害などの粗暴犯や、不同意性交等も増え続けている。年間の数値は、10〜12月分を加えた資料で示される。