日本銀行は10月30日、国内の決済の主な指標をまとめた「決済動向(2026年9月)」を公表した。全国の手形・小切手を交換する電子交換所の交換枚数は、9月の1営業日平均で2万9000枚となり、前年同月の8万3000枚から64.9%減った。交換金額も1日平均1140億円と、前年同月の3130億円から63.6%減った。銀行界は2027年3月31日で電子交換所での手形・小切手の交換を終えると決めており、廃止まで残り半年の時点で交換枚数は前年の約3分の1になった。
手形の交換、9月は前年の約3分の1に
電子交換所は、全国の金融機関の間で手形・小切手を交換する仕組みで、決済動向の注記によると2022年11月4日に交換を始めた。統計は全国銀行協会(全銀協)と日銀がまとめている。
決済動向によると、1営業日平均の交換枚数は、2023年が12万9000枚、2024年が10万7000枚、2025年が8万2000枚だった。2026年に入ってからは減り方が速まり、1月の6万枚から4月に4万3000枚、7月に3万8000枚、8月と9月はともに2万9000枚となった。前年同月比の減少率は、1月の46.1%から9月には64.9%に広がった。
電子交換所の手形・小切手交換枚数(1営業日平均。年は年平均、月は当月)(千枚)
数値で見る(単位: 千枚)
| 項目 | 千枚 |
|---|---|
| 2023年 | 129 |
| 2024年 | 107 |
| 2025年 | 82 |
| 26年1月 | 60 |
| 26年4月 | 43 |
| 26年9月 | 29 |
9月の1枚当たりの金額は387万6000円だった。交換の結果を受けて銀行同士が日銀の当座預金で差額を決済した金額は、1日平均1080億円と前年同月から46.3%減った。日銀当座預金を通じた決済全体は、9月に1日平均10万1980件、239兆7000億円あり、このうち手形交換の分は0.1兆円にとどまる。
2027年3月31日で交換を終える
手形と小切手の削減は、政府の方針から始まった。全銀協の資料によると、政府は2021年6月の「成長戦略実行計画」に、「5年後の約束手形の利用の廃止に向けた取組を促進する」ことと「小切手の全面的な電子化を図る」ことを書き込んだ。これを受けて、全銀協が事務局を務める検討会が2021年7月に「手形・小切手機能の全面的な電子化に向けた自主行動計画」を策定した。最終目標は「2026年度末までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにする」ことだ。
全銀協は2025年3月、電子交換所での手形・小切手の交換を2027年度初めから廃止することで合意した。2026年6月18日には、廃止の時期を「2027年3月31日」と明確にし、あわせて手形・小切手以外の証券(定額小為替証書や株式配当金領収証など)を含む電子交換所の交換そのものを2029年6月29日で終えると決めた。
全銀協は、2027年4月1日から手形や小切手が使えなくなるわけではないと説明している。ただし、それ以降は電子交換所を通さず、各金融機関が郵送などで相手先の金融機関と個別に決済する必要があるため、金融機関の判断で手形・小切手の取り扱いを変える可能性があるとしている。
銀行の7割が「9月末」で振り出しを止める予定
全銀協の検討会が2026年3月に公表した調査報告書によると、2025年1年間の交換枚数は1416万枚(手形670万枚、小切手746万枚)だった。前年の1967万枚から551万枚減ったが、目標としていた984万枚には届かなかった。2025年12月時点でも、月に約100万枚が交換されていた。
報告書は、銀行が取引先の手形・小切手の振り出しを受け付ける最終期限(最終振出期限)を設けるかどうかを、2025年12月末時点で1117の金融機関に尋ねている。設定済みは5機関、設定予定は406機関で、合わせて約35%にとどまった。ただ、都市銀行5行と第二地方銀行36行はすべてが設定予定と答え、地方銀行も61行のうち59行が予定と答えた。交換枚数に換算すると、最終振出期限を設ける金融機関の分が全体の84%を占める。設定予定の金融機関の72%は、期限を2026年9月末としていた。
検討会はこの回答をもとに、交換枚数は2026年11月と12月に大きく減り、12月時点の残りは月約7万枚になると試算し、月ごとの目安として自主行動計画に反映した。手形には最大2か月の支払いの猶予(サイト)があるとみて、振り出しを止めた銀行の交換は2か月後にゼロになると仮定した。小切手は振り出しの翌日から10日間が呈示の期間のため、1か月後にゼロになると置いた。一方、信用金庫は254金庫のうち設定予定が146金庫、農協などは607機関のうち60機関にとどまり、多くが「検討中」と答えた。
振込は前年比16.5%増、デビットカードは28.1%増
手形に代わる支払い手段として、自主行動計画は電子記録債権とインターネットバンキングによる振込を挙げる。銀行間の振込を処理する全銀システムの9月の取扱高は、1営業日平均938万8000件、20兆9086億円で、前年同月比で件数が4.0%、金額が16.5%増えた。このうち1件1億円以上の大口の取引は1日平均1万5168件、16兆895億円で、金額は19.9%増えた。平日の夜間や早朝、休日の振込を担う「モアタイムシステム」は、1日平均160万9000件、3049億円で、金額が16.1%増えている。
手形での代金の支払いをめぐっては、下請法が改正されて「中小受託取引適正化法(取適法)」となり、2026年1月以降の製造委託などに適用されている。公正取引委員会は10月9日、給湯器メーカーのパーパスが2026年2月から3月に中小受託事業者11名へ計2282万3013円の代金を手形で支払い、期日を過ぎても支払わなかったとして、取適法の支払遅延の禁止に違反すると認定し勧告した(「給湯器のパーパスに公取委が勧告 手形払いで2282万円の支払い遅延 旧下請法と取適法を同時に適用」)。
決済動向は、個人の支払い手段の動きも載せている。デビットカードの2026年4〜6月の決済は4億1700万件、1兆6579億円で、前年同期比で件数が27.2%、金額が28.1%増えた。2025年度の1年間では14億3700万件、5兆8497億円だった。一方、Suicaや楽天Edyなど8社のIC型電子マネーの決済は、最新の8月分が4億6900万件、4811億円で、前年同月比でそれぞれ7.4%、7.2%減った。電子マネーの決済額は2026年に入って毎月、前年を下回っている。
年末時点でも月約7万枚が残る見込み
電子交換所の交換枚数は、9月の時点で前年の約3分の1まで減った。ただ、交換の廃止まで残る期間は半年しかない。検討会の試算では、2026年12月時点でもなお月約7万枚の交換が残る。最終振出期限の設定を「検討中」と答えた金融機関は664機関と全体の59%を占め、その多くは信用金庫や農協などの地域の金融機関だ。
全銀協は、2027年4月以降も手形・小切手そのものは使えるとしつつ、取り扱いの可否は金融機関の判断で変わりうると説明している。銀行同士が郵送で個別に決済する方式になれば、資金の受け取りに時間と手間がかかる。報告書は、最終振出期限の前後に事業者からの申し込みや問い合わせが集中する事態を避けるため、期限より前に余裕をもって電子的な決済サービスへの移行を促すよう金融機関に求めている。
手形を受け取る側の中小企業にとっては、取引先が振り出しをやめるかどうかで入金の方法が変わる。取引先の金融機関が最終振出期限をいつに設けたかを確かめ、振込や電子記録債権の受け取りに必要な手続きを済ませておくことが、来年3月までの課題となる。
