衆院予算委員会は10月13日、高市早苗首相と全閣僚が出席して基本的質疑を行った。衆議院のインターネット審議中継によると、この日の審議は7時間19分。衆院の統一会派「中道」からは公明党の中野洋昌政務調査会長、山本香苗副代表、伊佐進一氏が質問に立ち、飲食料品の消費税率を2年間1%に下げる政府案と、あわせて導入する「就業者負担軽減支援金」の中身をただした。公明党が14日付で公表した記事によると、中野氏は支援金の支給対象や金額が見えないとして「数字を詰めるべきだ」と迫り、首相は「予算編成過程で明らかにする」と述べるにとどめた。山本氏は、同じ給与でも加入する社会保険によって手取りが違う問題を取り上げ、行政が持つ保険の情報を使って「本人の申告によらず給付に反映する仕組みを」と提案した。

首相・閣僚の答弁は審議中継の映像に残っているが、本記事の執筆時点で衆議院の会議録は確認できていない。以下、質疑のやり取りは公明党の公表内容に基づく。

中野政調会長「全てが見えないと判断できない」

公明党の記事によると、中野氏は、2027年4月から2年間に限って飲食料品の消費税率を1%に下げる方針と、所得に応じて支給額を変える支援金の導入方針について、複数の懸念を並べた。1つ目は、税率を下げても、その分ほど店頭の税込み価格が下がらないのではないかという点。2つ目は、レジの改修や農林水産業への支援といった関連経費の規模。3つ目は、支援金をだれに、いくら配るのかが分からない点である。

中野氏は「全てがある程度見えないと適切か判断できない。数字を詰めるべきだ」と迫った。これに対し高市首相は「予算編成過程で明らかにする」と述べるにとどめたという。

支援金の数字が見えないのは、法案の作りによる。政府が10月9日に国会へ提出した法案の概要(内閣官房・財務省)によると、支援金を受け取れるのは4つの要件をすべて満たす人で、その要件の線引きはいずれも「政令で定める額」とされている。①勤労所得が政令で定める額を超える②合計所得金額が政令で定める額以下③税・社会保険料の負担額から公的年金等の収入額を差し引いた額が政令で定める額を超える④配偶者の合計所得金額が政令で定める額以下(2027・28年度の支給には適用しない)――の4つだ。

支給額も同じで、日本と諸外国の「純負担率」の状況や就業を促す効果を考慮し、前年の所得や扶養する子どもの数に応じて「政令で定める額」とする。つまり、法案が国会で審議されている段階では、支援金の対象となる所得の範囲も1人あたりの金額も数字として示されていない。中野氏の指摘はこの点を突いたものだ。法案の詳しい中身は食料品消費税1%と支援金の法案、国会に提出 支援金の額と所得の線引きは政令に委ねるで伝えている。

山本副代表「同じ給与でも手取りが違う」

山本氏は支援金の設計に絞って質問した。公明党によると、同程度の給与を受け取っていても、勤め先などによって加入する社会保険が異なれば、保険料の負担が違い、手取りに差が出る。山本氏はこの問題に触れ、負担の大きい人への手だてが必要だと強調した。そのうえで、行政が保有する保険の情報などを活用し、「本人の申告によらず給付に反映する仕組みを」と提案した。

法案の概要を見ると、支援金には社会保険料の負担をくみ取る仕組みがすでに一部入っている。支給額について「当分の間、社会保険料控除額も加味する」とあり、注記で「『年収の壁』に配慮した就業促進特例加算関係」と説明している。また、公金受取口座を登録している人については、市区町村長が職権で支給を認定できるようにする。ただ、加入する保険の違いによる手取りの差をどう扱うかは、概要には書かれていない。

山本氏は、働きたくても働けない人への支援も取り上げた。公園清掃などの仕事を認定就労訓練事業所に優先して発注している兵庫県伊丹市の例を紹介し、国も率先して優先発注を進めるよう求めた。公明党によると、高市首相は「厚生労働相を中心に検討させる」と答えた。法案の概要は、検討規定の一つに「本支援金の対象とならない者に対する必要な措置の在り方」を挙げているが、具体策はまだ示されていない。

伊佐氏は予備費の活用と財源を問う

伊佐氏は物価高対策を取り上げた。公明党によると、伊佐氏は、高市首相が「実質賃金上昇率が9カ月連続でプラス」などと強調していることに対し、「低・中所得者には恩恵が受けられていない」と指摘。今年度の補正予算に計上された予備費を使った対策が必要だと訴えた。

伊佐氏は、高市政権で財源の決まっていない政策が積み上がっているとも指摘した。防衛費の増額なども見込まれるとして、「財源の見通しがなく進み続けると円安になり、金利に跳ね返り、苦労するのは国民だ」と述べた。法案の概要は、支援金の財源について「特例公債に頼ることなく、歳出・歳入全般の見直しにより確保する」と書いているが、具体的な財源の中身は示していない。

このほか中野氏は、熊本地震の被災者支援をめぐり、熊本県八代市が行う公費解体の申請が原則として窓口での対面に限られている点を挙げ、窓口の増設や巡回対応を求めた。山本氏は、非上場株式の相続時の評価方法を見直す政府方針について、資産を多く抱える温泉事業者などで事業承継や設備投資に影響しかねないと指摘した。

公明党は政府案を「あまりに非効率」と批判

公明党はこの臨時国会で、政府の消費税減税案に批判的な立場をとっている。10月3日の第18回全国大会で新代表に選ばれた岡本三成氏は、あいさつで、政府の飲食料品1%案について「物価高対策としてはあまりに非効率です。いま求められるのは即効性ある具体策です」と述べた。一方で、消費税率の引き下げは一時的な物価高対策ではなく「『生きるための食』を支える福祉政策として、財源を確保した上で恒久的に引き下げるべき」とも主張している。

支援金については、岡本氏は「給付付き税額控除への入口」と位置づけ、「給付の対象外となる人や働くことが困難な人への対応策を早急に示すよう」政府に求めていた。今回の予算委では、中野氏が支援金の対象と金額の具体化を迫り、山本氏が働くことが難しい人への支援を取り上げた。大会の内容は公明党の新代表に岡本三成氏 第18回全国大会で選出で伝えている。

「中道」は衆院第2会派、民主改革の会も質問に

質問した3人が所属する「中道」は、公明党の議員と「民主改革の会」の議員らでつくる衆院の統一会派だ。衆議院の会派別所属議員数(9月28日現在)によると、中道は47人で、自民党・無所属の会の315人に次ぐ第2会派となっている。結成の経緯は衆院に統一会派「中道」結成、47人で自民に次ぐ第2会派にで伝えている。

公明党によると、13日は中道から民主改革の会の落合貴之政調会長、山岡達丸氏、長妻昭氏も質問に立った。予算委員会は14日も質疑を続け、伊佐氏が午前9時から21分間、前日の続きを質問する予定とされていた。

基本的質疑は、首相と全閣僚が出席して内閣の政策全般をただす場で、臨時国会での論戦の中心になる。消費税減税と支援金の法案は国会に提出されたばかりで、これから審議が本格化する。支援金の対象となる所得の範囲や金額は政令に委ねられており、首相が答えた「予算編成過程」で、どこまで数字が示されるかが次の焦点となる。