日本銀行は10月22日午後4時、分析データ「実質輸出入の動向」の2026年9月分を公表した。価格変動の影響を除いた実質輸出の指数は、2020年の平均を100とする季節調整済みの値で118.7となり、8月の118.9からわずかに下がった。前月比は7月が0.6%の上昇、8月が0.8%の低下、9月が0.2%の低下で、3か月のあいだ方向が定まっていない。実質輸入は115.6で、8月の116.6を下回った。
名目は16.7%増、数量ベースではほぼ横ばい
同じ9月の輸出について、財務省が10月21日に公表した貿易統計(速報)の名目の輸出額は10兆9723億円で、前年同月比16.7%増だった。13か月連続の増加で、9月としては過去最大、全月を通じても過去3位にあたる。増加の内訳は半導体等電子部品が49.4%増(全体への寄与は3.3%分)、自動車が15.1%増(同2.4%分)、半導体等製造装置が43.9%増(同1.8%分)である。
名目の2桁の伸びと、実質の横ばいが並ぶ理由は為替と価格にある。税関長公示レートの平均値は2026年9月が1ドル157円43銭で、前年同月の147円61銭より6.7%の円安だった。輸出代金をドルなどで受け取れば、同じ数量でも円に換算した額は膨らむ。財務省自身が作る輸出の数量指数は105.9で、前年同月比1.9%増にとどまる。
日銀の実質輸出は、前年同月の116.9から118.7へ上がった水準にある。名目の16.7%増に比べれば小さい。輸出企業の売上高が伸びたという話を数量の増加とそのまま結び付けると、実態を読み誤ることになる。実質と名目の差が物価や為替の分にあたるという関係は、同じ日銀の分析データである消費の指標でも同様で、日銀の消費活動指数、2026年8月は108.1で7月の109.1から低下 耐久財が114.2から108.3へ 7〜8月平均は4〜6月平均を0.6%下回るで伝えたとおり、8月の消費活動指数は実質が108.1、名目が127.1と開いている。
四半期では7〜9月が1.0%上昇、4〜6月の1.3%低下から戻す
月ごとの値は振れが大きいため、日銀は四半期の前期比も示している。2026年の実質輸出は1〜3月期が2.4%の上昇、4〜6月期が1.3%の低下、7〜9月期が1.0%の上昇だった。春にいったん落ち込んだあと、夏から秋にかけて落ち込み分の一部を取り戻した形である。2025年は3Qが1.6%低下、4Qが0.7%上昇で、暦年では2024年が0.6%の低下、2025年が3.2%の上昇だった。
ただし7〜9月期の1.0%上昇は、7月の水準が高かったことによる部分が大きい。月次の指数は4月115.6、5月119.1、6月119.2、7月119.9、8月118.9、9月118.7と推移しており、7月を頂点にその後は小幅な低下が2か月続いている。四半期の平均としては上がっているが、期の終わりに向けては下を向いていることになる。
日銀は、これらのデータが作成に使う統計の改定や基準変更、年間補正によって事後的に改定されるほか、分析上の必要に応じて作成方法が変更される可能性があると注記している。実際、2026年5月には分析データ自体の見直し、4月には季節調整の掛け替えが実施された。公表日時は2026年4月分の計数以降、原則として財務省「貿易統計(速報)」の公表日の翌営業日の午後4時とされている。今回の10月22日の公表も、財務省の21日の公表を受けたものである。
米国向けは130.1、中国向けは85.8
実質輸出は、地域別と財別の内訳も作られている。地域別の9月の指数は米国向けが130.1、EU向けが120.9、中国向けが85.8、NIEs・ASEAN等向けが122.7、その他地域向けが144.7だった。
実質輸出の地域別指数(2026年9月)(2020年=100)
数値で見る(単位: 2020年=100)
| 項目 | 2020年=100 |
|---|---|
| その他 | 144.7 |
| 米国 | 130.1 |
| NIEs等 | 122.7 |
| EU | 120.9 |
| 中国 | 85.8 |
前月比でみると、米国向けは3.2%の上昇で、8月の126.1から130.1へ上がった。EU向けも1.7%、NIEs・ASEAN等向けも1.6%、その他地域向けも0.5%とそれぞれ上昇した。低下したのは中国向けだけで、6.7%の低下である。中国を含むアジア全体では1.2%の低下となり、アジアのウエイトが大きいため、全体を0.2%の低下に押し戻した。各地域のウエイトは2025年の通関輸出額に占める割合で、米国が18.5%、EUが9.1%、アジアが54.3%(うち中国17.0%、NIEs・ASEAN等37.2%)、その他地域が18.1%である。
名目の数字でも同じ方向が出ている。財務省の9月分で米国向け輸出は1兆9630億円、前年同月比22.9%増で7か月連続の増加だった。自動車が31.0%増、医薬品が157.7%増、半導体等製造装置が93.1%増である。一方、中国向けは1兆7300億円の8.6%増で、品目では自動車が59.8%減と大きく落ちている。中国向けの実質指数85.8は、2020年の平均である100を下回る水準にとどまっている。
財別では自動車関連が5.7%上昇、情報関連は4.0%低下
財別の9月の動きは地域別以上に分かれた。自動車関連は前月比5.7%の上昇で、指数は8月の129.6から136.9へ上がった。資本財も1.8%上昇して137.9となった。対して情報関連は4.0%の低下で108.0から103.6へ、中間財は2.9%の低下で100.1から97.1へ、金や再輸出品などを含むその他財も2.9%の低下で125.8から122.2へ下がった。振れの大きいその他財を除いた系列は0.4%の上昇である。
| 財の区分 | 2026年9月の指数 | 前月比 | 輸出額のウエイト |
|---|---|---|---|
| 自動車関連 | 136.9 | +5.7% | 22.6% |
| 資本財 | 137.9 | +1.8% | 16.6% |
| 情報関連 | 103.6 | ▲4.0% | 19.2% |
| 中間財 | 97.1 | ▲2.9% | 19.2% |
| その他財 | 122.2 | ▲2.9% | 22.5% |
| 実質輸出計 | 118.7 | ▲0.2% | - |
表: 実質輸出の財別の指数と前月比(2020年=100、季節調整済) 出典: 日本銀行「実質輸出入の動向」(2026年10月22日公表)
財の区分は日銀が注で定義している。自動車関連は自動車、自動車の部分品、原動機など、情報関連は電算機類、通信機、半導体等電子部品、音響・映像機器、科学光学機器など、資本財は金属加工機械、建設用・鉱山用機械、重電機器、半導体等製造装置、船舶などで、ウエイトはいずれも2025年の通関輸出額に占める割合である。
名目では半導体等電子部品が49.4%増と全体を最も押し上げていたが、実質の情報関連は103.6で2020年の水準をわずかに上回る程度にとどまる。半導体の分野では単価の変動が大きく、金額の伸びと数量の伸びが離れやすい。中間財の指数97.1は、2020年の平均を下回ったままである。
実質輸入は115.6、名目では原粗油が51.1%増
実質輸入の指数は9月が115.6で、8月の116.6から下がった。4月は106.6まで落ち込み、5月112.3、6月114.7、7月114.7、8月116.6と戻していたが、9月は3か月続いた上昇が止まった形になる。
名目の輸入額は11兆5088億円で、前年同月比18.9%増と8か月連続の増加だった。増加品目は原粗油が51.1%増(寄与は3.9%分)、半導体等電子部品が51.4%増(同2.1%分)、液化天然ガスが39.2%増(同1.7%分)である。輸入の数量指数は103.0で前年同月比1.6%の低下となり、4か月ぶりの減少となった。数量が減っているのに金額が2割近く増えているのは、原油や天然ガスの価格と円安によるものである。
輸出額から輸入額を引いた差引額は5365億円の赤字で、5か月連続の赤字となった。季節調整値では輸出額10兆7561億円(前月比1.1%減)、輸入額11兆4601億円(同1.9%減)、差引額7040億円の赤字である。相手先別では、米国に対しては3928億円の黒字ながら前年同月より23.4%減って10か月連続の減少、中国に対しては1兆272億円の赤字で66か月連続の赤字だった。
円安が輸入価格を通じて国内の物価にどう及ぶかという論点は、物価と賃金の全体像 実質賃金は8か月連続プラス、それでも家計の消費は実質3.1%減で整理している。日銀の金融政策決定会合は10月29日と30日に開かれ、30日には経済・物価情勢の展望(展望レポート)の最新版も公表される。輸出の数量が伸びないまま名目の金額だけが膨らむ状態が続くのかどうかは、そこでの景気と物価の判断にかかわる材料となる。
