厚生労働省は10月22日、令和8年度の医師臨床研修マッチングの結果を公表した。医師臨床研修マッチング協議会が同日14時に研修希望者と研修プログラムの組み合わせを決め、本人と病院に発表したもので、希望順位表を登録した9789人のうち8939人の研修先が内定した。内定率は91.3%で、前年度の92.3%から下がった。

マッチングは、来春に医学部を卒業して令和9年度から臨床研修を始める人が対象になる。募集定員は1万550人で、内定者を差し引いた空席は1611人分残った。

内定しなかった人は850人 前年度より109人増えた

マッチングへの参加者は1万79人で、前年度の9902人から177人増えた。このうち希望順位表を登録したのが9789人(前年度9651人)、登録しなかったのが290人(同251人)である。希望順位表を登録しないと組み合わせの対象にならない。

登録した9789人から内定者8939人を差し引くと、内定しなかった人は850人になる。前年度は9651人のうち8910人が内定し、741人が内定しなかった。参加者が177人増える一方で内定者の増加は29人にとどまったため、内定しなかった人が109人増えた形である。

参加者が希望順位表に並べた研修プログラムの数は平均5.30で、前年度の5.22よりわずかに増えた。最も多い人は429プログラムを登録した。前年度の最多は856プログラムだった。最少は1プログラムで、1か所しか登録しなければ、そこで決まらなければ内定しない。

参加した病院は1025病院(前年度1026病院)、研修プログラムは1483(同1470)で、募集定員は1万550人(同1万527人)だった。

大学病院は募集定員の77.7% 空席の55.2%を占める

病院の区分でみると、内定の埋まり方に差がある。研修先は、大学病院と、大学以外の臨床研修病院(市中病院)に分かれる。

項目 臨床研修病院 大学病院 合計
参加病院数(病院) 899 126 1,025
研修プログラム数 1,065 418 1,483
募集定員(人) 6,563 3,987 10,550
内定者数(人) 5,841 3,098 8,939
空席数(人分) 722 889 1,611
令和8年度マッチングの病院区分別の内定状況出典: 医師臨床研修マッチング協議会「令和8年度 研修医マッチングの結果」表4

臨床研修病院は募集定員6563人に対し内定者が5841人で、定員の89.0%が埋まった。大学病院は募集定員3987人に対し内定者が3098人で、77.7%にとどまる。空席1611人分のうち889人分(55.2%)が大学病院に残った。募集定員では大学病院が全体の37.8%を占めるが、内定者では34.7%にとどまる。

第1希望として登録された人数も分かれている。希望順位表の1位に臨床研修病院を書いた人は7740人(79.1%)、大学病院を書いた人は2049人(20.9%)だった。前年度は臨床研修病院が7522人(77.9%)、大学病院が2129人(22.1%)で、大学病院を1位に書く人は80人減った。

大学病院126病院のうち、自分の出身大学の病院に内定した人(自大学出身者)は1741人で、大学病院の内定者3098人の56.2%を占める。東京大学病院は募集定員94人に対し内定者41人(充足率43.6%)、そのうち自大学出身者が18人だった。一方、東京科学大学病院は募集定員92人が全て埋まり、自大学出身者は43人(46.7%)である。同じ東京都内でも、出身者をどれだけつなぎ止めるかは病院ごとに違う。

第1希望での内定は59.0% 第4希望以下が1272人

内定した8939人を希望順位別にみると、第1希望の研修プログラムで決まった人は5278人で、内定者全体の59.0%だった。前年度は5403人で60.6%を占めていた。

第2希望は1472人(16.5%)、第3希望は917人(10.3%)で、第3希望までに決まった人の割合は85.8%になる。第4希望以下で決まった人は1272人(14.2%)で、前年度の1095人(12.3%)より177人増えた。

第4希望以下で決まった1272人のうち、790人(62.1%)は大学病院に内定している。第1希望で決まった5278人では大学病院が1453人(27.5%)で、順位が下がるほど大学病院の比率が上がる。希望の上位に市中病院を並べ、そこで決まらなかった人が大学病院で決まる形が数字に出ている。

第2希望で決まった1472人のうち大学病院に内定したのは453人(30.8%)、第3希望の917人では402人(43.8%)で、順位が下がるにつれて大学病院の割合が上がる。前年度も第4希望以下で決まった1095人のうち712人(65.0%)が大学病院だった。

内定者全体に占める第1希望の割合は前年度の60.6%から59.0%へ下がり、第4希望以下の割合は12.3%から14.2%へ上がった。参加者が増えた分だけ内定者が増えなかったことと合わせると、希望の上位から順に決まる度合いは前年度より弱まっている。

41道県の内定者は60.9% 宮崎県は定員107人に33人

地域別では、大都市部のある6都府県(東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、福岡県)を除く41道県の内定者が5448人となり、前年度の5366人から82人増えた。全体に占める割合は60.2%から60.9%に上がった。

厚労省が示した内定者数の増加率(対前年度比)の上位5県は、いずれも6都府県以外だった。人数の増え方でみると、千葉県が441人から476人へ35人増えて最も多い。

内定者数の増加率が高い上位5県(対前年度比)(人)

令和7年度令和8年度

大分県6786三重県119145鹿児島県89106山梨県5464群馬県106124
大分県は67人から86人へ19人増え、増加率は28.4%。いずれも大都市部のある6都府県以外の県出典: 厚生労働省「令和8年度の医師臨床研修マッチング結果をお知らせします」
数値で見る(単位: 人)
項目令和7年度令和8年度
大分県6786
三重県119145
鹿児島県89106
山梨県5464
群馬県106124

減った県もある。宮崎県は募集定員107人に対し内定者が33人で、前年度の59人から26人減った。定員に対して埋まったのは30.8%にとどまる。山形県は募集定員117人に対し64人で、前年度より25人減った。京都府は220人で23人減、東京都は1127人で54人減だった。

都道府県ごとの募集定員と内定者の差は、翌年度にその地域で働き始める医師の数に直接つながる。研修を終えた医師がそのまま同じ地域に残る割合は高いとされてきたため、研修先の分布は医師の地域偏在の議論でくり返し取り上げられてきた。医療費の負担が増える地域ほど医師の確保が課題になる構図は、75歳以上の一人当たり医療費97万1531円 後期高齢者医療の総額は19兆4830億円にでも示されている。

定員上限と目標設定で都市集中を是正してきた

マッチングは、平成16年度に医師の臨床研修が義務化されたのに合わせて導入された。研修を受けようとする医学生と病院の研修プログラムを、互いの希望に基づいて一定のアルゴリズムで組み合わせる仕組みで、本人がどの病院を何番目に希望したかと、病院が誰を何番目に採りたいかを突き合わせて決める。縁故や個別交渉ではなく規則で決めることで、透明性を確保する狙いがある。

制度の導入後、研修医が都市部に集中する傾向が続いたため、厚労省は平成22年度の研修から都道府県別に募集定員の上限を設け、平成27年度の研修からは全国の募集定員の合計を研修希望者数に徐々に近づける目標設定を行ってきた。定員が希望者数を大きく上回ると、人気のある都市部の病院に定員の余裕が生まれ、地方の病院が埋まらなくなるためである。

令和8年度は募集定員1万550人に対して希望順位表の登録者が9789人で、定員は登録者の1.08倍にあたる。前年度は1万527人に対し9651人で1.09倍だった。定員の絞り込みが進む一方で、空席は1611人分残り、内定しなかった人も850人いる。希望する病院と空席のある病院が一致しないため、両者は同時に生じる。

結果の確認は、参加者と参加病院がそれぞれマッチング協議会のウェブページを通じて行う。参加者は自分が組み合わされた研修プログラムの名称、病院は内定した参加者の氏名を確認できる。