国土交通省は10月27日、全国の優れた地域づくりの活動を表彰する令和8年度「地域づくり表彰」の受賞9団体を発表した。最高位の国土交通大臣賞には、千葉県市原市、三重県南伊勢町、長崎県佐世保市の3事例が選ばれた。今年度は全国から54団体の推薦があり、前年度の32団体を上回った。

推薦54団体から9団体、1984年から43回目

地域づくり表彰は、創意工夫のある地域づくりの事例を表彰する制度で、1984年(昭和59年)に始まり、今年で43回目となる。主催は国交省、全国地域づくり推進協議会、全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム、一般財団法人国土計画協会の4者で、日本政策投資銀行が後援する。有識者と共催・後援団体の委員でつくる審査会(座長・坂田一郎東京大学執行役・副学長)が選考した。

今年度の推薦は54団体で、前年度の32団体から22団体増えた。受賞は9団体で、前年度の10団体から1団体少ない。賞は6種類あり、総合的に最も優れた取り組みに贈る国土交通大臣賞が3事例、地域活性化の観点で優れた取り組みに贈る全国地域づくり推進協議会会長賞が2事例、ほかの4賞が1事例ずつとなった。

賞 団体(所在地) 取り組み
国土交通大臣賞 ウエルコミ(千葉県市原市) ドラッグストア内の市民活動・交流拠点
国土交通大臣賞 南伊勢町二地域居住推進チーム(三重県南伊勢町) 空き家を拠点にした関係人口づくり
国土交通大臣賞 Sasebo Change(長崎県佐世保市) 高校生が始めた地域活動
全国地域づくり推進協議会会長賞 山立会(石川県白山市) ジビエや羊放牧などの里山総合会社
全国地域づくり推進協議会会長賞 「地域維持レスキュー」(和歌山県有田川町) 山椒の収穫などを地域内外の参加者で担う
全国二地域居住等促進官民連携プラットフォーム賞 三島信用金庫・合同会社うさぎ企画(静岡県三島市) 信用金庫を核にした二地域居住者の支援
国土計画協会会長賞 青海ボランティア隊(愛知県常滑市) 無料住民バスなど住民の助け合い
日本政策投資銀行賞 水没林ワーキング(山形県飯豊町) 人気観光地の混雑対策と協力金
地域づくり表彰審査会特別賞 広島地区活性化協議会(香川県丸亀市) 離島の移住促進と小中学校の再開
令和8年度「地域づくり表彰」の受賞9団体

出典: 国土交通省 報道発表資料(別添資料3)

国交省は、受賞した活動が、国土づくりの目標に「新時代に地域力をつなぐ国土」を掲げた第三次国土形成計画に沿うもので、「持続可能な生活圏の再構築」や「地域を支える人材の確保・育成」の先進事例だと位置づけた。同省は、買い物や交通、医療・福祉など暮らしに必要なサービスが持続的に提供される「地域生活圏」の形成を進めており、10月には「民間の地域経営主体」を国が認定、初の申請受付 国交省 11月13日締め切り、12月中旬に認定への手続きも始めている。

市原市:ドラッグストアの空きスペースに交流拠点

市原市の「ウエルコミ(ウエルシア・コミュニケーションセンターいちはら)」は、ドラッグストアの使われていないスペースを使った地域交流拠点だ。市、企業、中間支援を担うNPO法人の3者が協働で運営する。市の市民活動支援センターが廃止され、市民団体と行政などをつなぐ中間支援の機能が失われたため、それを日常の買い物の動線の上につくり直した。

拠点では子育て支援や高齢者の健康づくり、居場所づくりなどが行われている。子どもの「第三の居場所」とする「ウエルキャン」や「居場所フェスタ」、シニアの地域参加を促す「グランパフェスタ」、地層「チバニアン」や化石など地元の資源を使った学びの場も開いている。

審査会は、企業が空きスペースを提供する例は各地に多いとしたうえで、この事例では中間支援団体が企業・市民団体・行政・大学を結び付ける役を担っている点を評価した。子どもの居場所づくりの団体は「ほぼゼロから44団体超へ増加」したという。審査会は、地域や業態を問わずほかの地域でも展開できるモデルだとしている。

南伊勢町:まちを「一つの家」に見立てる二地域居住

南伊勢町二地域居住推進チームは、「まちを一つの家に見立てる」という発想で、地域外の人が町と継続的に関わる仕組みをつくっている。鉄道の通らない沿岸の半島地域にあり、空き家を再生した「うみべのいえ」を拠点に、キッチン、リビング、クローゼット、アトリエといった機能を町内に分散して置き、関係人口や二地域居住者の活動の場にしている。

移住者支援を担う地域法人、漁業の人材育成団体、関係人口のコミュニティ、町が連携し、漁業・観光・創業・地域活動など複数の入り口を用意している。定住へ誘導するのではなく、その人に合った暮らし方や関わり方を提案する方針をとる。

審査会は、二地域居住を「移住の前段階」ではなく「地域に新たな担い手を生み出す仕組み」と位置付けた点を最大の特徴に挙げた。成果として、ふるさとワーキングホリデーの参加者の再訪、漁業研修を経た就業者、空き家を使った事業の創出を挙げている。

佐世保市:高校生の活動を卒業後も引き継ぐ

「Sasebo Change(サセボチェンジ)」は、高校生の有志が学校の枠を越えて始めた活動だ。日米の高校生の交流、英語によるプラネタリウム、地元の鉄道を盛り上げる企画、高齢者との交流やボランティアに取り組んできた。卒業したOB・OGもオンラインや帰省時に活動を支え、中間支援組織の設立や高校生ボランティアの養成講座へと広がった。いまは高校生、卒業生、社会人がそれぞれの立場で関わる世代横断の組織になっている。

審査会は、高校生の活動そのものに加え、そこで得た経験や人脈を卒業後も地域に蓄え、次の世代へ引き継ぐ仕組みをつくった点を評価した。若者を担い手とする取り組みは各地にあるが、一過性で終わりやすい活動を人材育成の仕組みへ発展させた工夫は「多くの地域に示唆を与える」としている。

獣害、人手不足、観光地の混雑に取り組む6団体

大臣賞以外の6団体も、それぞれの地域課題に取り組んでいる。石川県白山市の「山立会」は、地元の言葉で猟師を意味する名の里山総合会社で、シカやイノシシの肉を使うジビエ事業、廃業の危機にあった特産の大型なめこ生産の継承、耕作放棄地での羊の放牧、古民家を改修した食堂の運営を組み合わせている。

和歌山県有田川町の「地域維持レスキュー」は、収穫期の人手不足に悩むぶどう山椒の農家を地域内外の参加者が手伝う活動から始まり、文化財の修復に使う茅(かや)の刈り取りや道普請に広がった。当初は地域外の参加者が中心だったが、茅刈りでは地元の参加者が8割を占めるまでになった。

静岡県三島市では、三島信用金庫と合同会社うさぎ企画が行政や地元企業と組み、二地域居住者や副業の人材に仕事・住まい・地域活動の場を紹介している。地域の困りごとと人材の「できること」を結び付ける「ギブ&テイクボード」を使い、三島・長泉・箱根にまたがって活動する。

山形県飯豊町の「水没林ワーキング」は、春の雪解けの時期だけ白川湖に現れる水没林がSNSで人気を集め、路上駐車や渋滞、ごみが問題になったことから組織された。来訪者を抑えるのではなく、カヌーツアーの仕組み化や利用ルールの整備、駐車協力金と湖面利用協力金の導入を進め、その収入を環境整備に回している。

香川県丸亀市の広島地区活性化協議会は、高齢化率8割の離島3島で、古民家を使った農泊を出発点に企業や行政と協働してきた。4年間で島の人口の1割にあたる20人が移住し、約15年ぶりに小中学校が再開した。愛知県常滑市の青海ボランティア隊は、高齢者の移動を支える無料の住民バスや電動小型モビリティの活用、海岸の清掃、子どものフードドライブ、草刈りを一体で進めている。

審査会「属人モデルからチームモデルへ」

審査会は総評で、今年度の推薦事例について、課題を具体的に言葉にしていた点を挙げ、「山椒を収穫する手が足りない」「新幹線駅があり移住するには東京が近すぎる」などの例を示した。持続性については「この人がいるから成り立つ」という事例が少なくなかったとしたうえで、高校生の活動の法人化や、行政・企業・住民の連携、移住者自身が担い手となる仕組みを挙げ、「地域づくりが『属人モデル』から『チームモデル』へと進化しつつある」と記した。

企業との連携については「もはや寄附や協賛の段階ではない」とし、企業が地域課題の解決に参画し、企業側も学びや価値を得る関係が生まれていると指摘した。一方で「地域づくり」は地域住民だけでは担いきれず、外部に頼るだけでも長続きしないとして、内と外の協働を今年の特徴に挙げた。

受賞団体の取り組みの詳細や表彰の様子は、国交省のサイトと、国土計画協会が運営する特設サイトで紹介される。人口減少と高齢化が進むなか、各団体が課題にどのような組織と資金の仕組みで対応したのかは、同じ課題を抱える地域が自らの取り組みと照らし合わせて読むことができる。