国土交通省は10月9日、人口減少が進む地域で買い物や交通、医療などの生活サービスを保つ取り組みのまとめ役を担う民間法人を、国が認定する「民間の地域経営主体」制度について、第1回の申請受付を始めたと発表した。受付期間は11月13日(必着)までで、認定は12月中旬を目処とする。同省は年度内にさらに受付期間を設ける予定としている。
7月に創設、事前相談から本受付へ
制度は、同省国土政策局が7月30日に制定した認定要綱に基づく。中長期にわたって「地域生活圏」の形成に取り組む意思と具体的な計画を持つ民間法人を、国土政策局長が認定する仕組みだ。創設後はこれまで事前相談だけを受け付けていたが、今回、初めて正式な申請の受付に移った。
認定を受けた法人には、二つの効果があると要綱は定める。一つは「国が認めた民間の地域経営主体」というお墨付きが得られること。もう一つは、国土政策局が相談のワンストップ窓口となり、関連する国の支援策の紹介や助言を行うことだ。要綱が定める効果はこの二つで、認定そのものに伴う補助金の交付などは書かれていない。認定法人の名称と活動地域は、同省のウェブサイトで公表する。
同省の概要資料は、制度を設けた理由として二つの事情を挙げている。民間の地域経営主体が、自治体や事業者、住民の理解を得ることに苦心する例があること。そして、交通・買い物・医療・教育など関わる分野が多岐にわたるため、取り組みを進める上での課題を誰に相談すればよいか分からないという声があることだ。国が認定することで地域での信用につなげ、相談先を一本化して活動しやすくする狙いがある。
「地域生活圏」とは何か
「地域生活圏」は、2023年7月に閣議決定された第三次国土形成計画で打ち出された考え方だ。人口減少と少子高齢化が加速する地方で、市町村の境界にとらわれず、実際の生活や経済の広がりに合わせた範囲で、官民が連携しデジタルを活用しながら、暮らしに必要なサービスが続けて提供される圏域をつくるというものである。
要綱は、その実現に必要な連携を三つ挙げる。官民が組む「主体の連携」、買い物・交通・医療・福祉・教育といった分野の縦割りを越える「事業の連携」、行政区域にとらわれない「地域の連携」だ。そのうえで、財政や人手の制約から、地域の暮らしを守る方策を自治体だけで企画・実行するには限界があると指摘し、自治体や事業者をつなぐ旗振り役として民間主体の役割が重要になると位置づけている。
同省の地域生活圏の概要資料は、こうした連携が無い状態を「バラバラ」と表現する。診療所の統廃合で医療を受けにくくなる、バス・鉄道路線の縮小で交通の空白が生まれる、集落で唯一の商店が閉まり遠くのスーパーまで車で通う必要が出る――といった例を並べ、民間の主体が加わって成果を上げた先進事例の共通点として、民間が地域経営に人材やノウハウを持ち込み、事業者間や複数の自治体間のハブになっている点を挙げた。取り組みの例としては、地域経営主体の支援で自治体が公共ライドシェアを導入しタクシー・バス事業者と運行システムを共有する、小売店の少ない集落へ隣の都市のスーパーの移動販売を呼び込む、医療機器やオンライン診療の機能を積んだ車両で訪問診療を行う、といったものを示している。
国土審議会の推進部会には2024年10月から2025年5月まで地域生活圏専門委員会が置かれ、形成を後押しする施策のあり方が議論された。同省は調査事業「地域生活圏形成リーディング事業」なども実施している。地域の担い手不足に対しては、総務省が所管する別の仕組みもある(人口が急減する地域の担い手を雇う「特定地域づくり事業協同組合」、全国146組合に 島根16・鹿児島12 無期雇用で農業や宿泊業へ派遣)。
審査の基準 特定分野だけの事業者は対象外
申請できるのは法人格を持つ団体で、営利法人、一般社団法人、NPO法人などが含まれる。法人の内部部局の名前で申請することもできる。申請は所定の様式を電子メールで提出する。
国土政策局長は、申請書の内容をもとに五つの観点で審査し、有識者の意見を聞いたうえで認定する。必要に応じて追加資料の提出やヒアリングを求めることもある。
一つ目は活動の内容と役割だ。認定されるのは、市町村や事業者など地域のさまざまな担い手をつなぐ「地域全体のマネジメント役」であることが条件で、特定の分野の事業を実施するだけの法人は対象外とした。ただし、観光業や小売業、不動産業などを営みながら、地域全体のまとめ役を兼ねる法人は対象になる。活動の目的は、買い物・交通・医療・福祉・教育といった生活サービスを持続させることが必須で、住民が暮らしの便利さが良くなったと実感できるものでなければならない。地域の課題の調査や関係者の連携体制づくりにとどまり、住民に効果が届くまでに至らない計画しか持たない場合は、認定の対象にならない。3年の有効期間を超えて中長期に活動する具体的な計画も求める。
二つ目は実施の能力と体制で、計画を実行するのに必要な資金計画と人員・組織を持っていることが条件だ。三つ目は対象地域の設定で、住民の日常の社会・経済活動のまとまりとして適切な範囲を求める。一律の規模の基準は設けないが、町内会や商店街といった街区単位は小さすぎて適切とはいえないと明記した。市町村の境界をまたぐ設定を重視しつつ、一つの市町村の中に収まる地域も認める。
四つ目は地域との結びつきだ。対象地域に事業所や支所を置いているか、地元の企業・団体が出資しているか、その地域で活動した実績があるかなどを総合的にみて、地域に根ざした法人かどうかを判断する。五つ目は欠格事由で、宗教活動や政治活動を主な目的とする団体、特定の公職の候補者や政党を推薦・支持することを目的とする団体、暴力団員が事業活動を支配する法人などは認定を受けられない。
申請には全市町村への事前説明が必要
手続きの面では、申請前の準備が求められる。申請を考える法人は、市町村へ説明する前に、まず国交省国土政策局総合計画課に事前相談をしなければならない。そのうえで、対象地域を含むすべての市町村に申請内容を説明し、その実績を申請書に書く必要がある。同省は審査の過程で、説明が実際に行われたかを市町村に確認する。
認定の有効期間は3年で、更新できる。更新を受けるには、期間が切れる日の90日前から60日前までに申請しなければならず、申請しなければ認定は失効する。認定後に法人の名称や住所、対象地域に含む市町村、取り組む生活サービスの種類などを変える場合は、変更の申請が必要になる。
国土政策局長は、認定法人が申請書に書いた取り組みを実施していない場合や、不正・不誠実な行為をするおそれがあると認める相当の理由がある場合などには、認定を取り消すことができる。取り消された法人は、その後5年間は再び認定を受けられない。局長は必要に応じて、認定法人に活動の報告を求めることもできる。
第1回の認定は12月中旬の予定で、認定法人の名称と活動地域はそこで初めて公表される。申請の受付期間中も事前相談は受け付けている。問い合わせ先は国交省国土政策局総合計画課。
