内閣府が令和8年6月付でまとめた令和8年版交通安全白書は、特集で第12次交通安全基本計画を取り上げた。計画は令和8年3月27日に、首相を会長とする中央交通安全対策会議が持ち回りで決定した。計画期間は令和8年度から12年度までの5年間で、令和12年(2030年)までに交通事故の24時間死者数を年1900人以下、重傷者数を年2万人以下とする目標を掲げている。
交通安全基本計画は、昭和45年に制定された交通安全対策基本法に基づき、昭和46年度から5年ごとに作られてきた。白書も同法第13条に基づいて毎年国会へ提出される法定白書で、令和8年版で56回目にあたる。
前の計画は死者・重傷者とも目標に届かなかった
第11次計画(令和3年度〜7年度)は「世界一安全な道路交通の実現を目指し、令和7年までに24時間死者数を2000人以下とする」「重傷者数を2万2000人以下にする」の二つを掲げていた。結果は、令和7年の死者数が2547人、重傷者数が2万7563人で、どちらも達成できなかった。
計画期間中の死者数は、令和3年2636人、4年2610人、5年2678人、6年2663人、7年2547人と推移した。5年かけて89人減った計算で、目標との差は547人残った。重傷者数は2万7204人から2万7563人へ、むしろ増えている。事故件数も令和7年で28万7023件と、30万件前後の高い水準が続く。
長期でみれば減少幅は大きい。「交通戦争」と呼ばれた昭和45年の死者数1万6765人と比べると、令和7年は6分の1以下である。6年連続で3000人を下回り、現行の交通事故統計となった昭和23年以降で最少となった。それでも直近5年は横ばいに近く、これ以上の上積みが難しくなっているのが実情だ。なお、事故から30日以内に亡くなった人を数えた「30日以内死者数」は令和7年で3089人と、24時間死者数より542人多い。
新目標は死者1900人・重傷者2万人
第12次計画は、前回未達だった2000人からさらに100人引き下げた1900人を目標に据えた。重傷者数についても2万人以下と、前回目標より2000人低い水準を設定した。白書は、重傷者の目標を置く理由を「最優先の目標は死者数の減少だが、重傷者が発生する事故を防ぐ取り組みが死者数の減少にもつながる」ためと説明している。日常生活に影響が残る重傷事故を減らすこと自体にも着目する、という位置づけだ。
死者の55.9%が65歳以上
高齢化の影響は数字にはっきり出ている。全交通事故死者に占める65歳以上の割合は、第1次計画初年度の昭和46年に16.3%だったのが、平成8年に31.6%、第11次計画初年度の令和3年には57.7%まで上がり、令和7年も55.9%だった。人口10万人当たりの死者数でみると、65歳以上は65歳未満の約3倍にあたる。死亡事故・重傷事故の件数に占める65歳以上の運転者の割合も、それぞれ約3割を占める。
こうした背景から、計画は高齢者対策を重視する視点の筆頭に挙げた。高齢運転者については運転技能検査・認知機能検査・高齢者講習を適切に実施したうえで、実施課題の見直しなど新たな対策を講じるとしている。警察庁は既に75歳以上の運転技能検査に「方向変換」追加へ 警察庁が改正案 合格者の事故率は検査対象外の高齢者の2倍以上という形で検査内容の見直しに動いている。
8つの柱と、直近で変わったルール
対策は(1)道路交通環境の整備(2)交通安全思想の普及徹底(3)安全運転の確保(4)車両の安全性の確保(5)道路交通秩序の維持(6)救助・救急活動の充実(7)被害者等支援の充実と推進(8)研究開発及び調査研究の充実――の8つの柱で進める。重視する視点には、高齢者に続いてこども、歩行者、自転車、外国人運転者、先進技術の活用などが並ぶ。
自転車については、令和6年の道路交通法改正で同年11月から「ながらスマホ」の罰則が強化され酒気帯び運転が罰則の対象になったこと、令和8年4月から交通反則通告制度が適用されたことを踏まえ、教育の充実と悪質・危険な違反の取り締まりを進めるとした。生活道路の法定速度を時速30キロへ引き下げる措置も計画に盛り込まれており、こちらは秋の全国交通安全運動、21日から10日間 9月1日に下がった生活道路30キロと自転車「青切符」の周知が柱のとおり、9月1日に施行された。
今年の実績はまだ目標を大きく上回るペースにある。交通事故の死者、8月末で1549人 前年と1人も変わらず 65歳以上が31人減った分、65歳未満が31人増えたが示すとおり、8月末時点の死者数は前年と同水準で、1900人という目標までにはなお開きがある。
