消費者庁は10月23日、オンラインモールやフリマアプリなどの運営事業者と行政でつくる「取引デジタルプラットフォーム官民協議会」の第9回会合をオンラインで開いた。同庁は、取引デジタルプラットフォーム消費者保護法の運用状況を報告し、2025年12月から2026年8月までの9か月間に、虚偽の表示があった商品・役務6件について、モールなどの運営事業者に表示の削除等を要請したことを明らかにした。6件のうち3件は中国国内の販売業者が日本向けに売っていた商品で、残る3件は販売業者の所在地が分からない情報商材などだった。会合では財務省関税局も、急増する通販の少額輸入貨物への税関の対応を説明した。
6件の削除要請、半数は中国の販売業者
同法の正式名称は「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律」で、2022年5月1日に施行された。第4条は、商品の安全性などの重要事項について著しく事実と異なる表示があり、販売業者自身による是正が期待できない場合に、国(内閣総理大臣)が取引デジタルプラットフォームの提供者に対し、その販売業者の利用停止等を要請できると定める。要請に応じた提供者は、販売業者に生じた損害の責任を免れる。販売業者が連絡の取れない海外にいる場合などが想定されている。
事務局資料によると、要請の対象は次の6件だった。
| 要請の時期 | 商品・役務 | 表示と実態 | 販売業者の所在 |
|---|---|---|---|
| 2025年12月 | Tシャツ(リカバリーウェアと称する商品) | 着るだけで血行促進・疲労回復、日本製ブランドと表示。実物は日本製でなく、効能も期待できない | 中国 |
| 2026年2月 | 安全靴 | 欧州連合の安全規格に適合と表示。実物は安全靴の基準に不適合 | 中国 |
| 2026年3月 | 情報を伝える役務 | 国の制度で給付金を増やす方法を教えると表示。実際はベトナムドン等の外貨購入を勧める内容 | 不明 |
| 2026年5月 | 情報商材 | AIで名前を考えるだけで即日5万円の副業と表示。応募先は海外のコンテスト1件で、採用確率は0.1%未満 | 不明 |
| 2026年7月 | 保護眼鏡 | 米国国家規格に適合と表示。実物は不適合 | 中国 |
| 2026年8月 | 情報商材 | 数百円の原資で毎月300万円のカード決済をして決済額に応じた還元を得られると表示。実際はカード会社が禁じる換金目的の利用 | 不明 |
出典: 消費者庁「事務局説明資料」(2026年10月23日)
中国の3件はいずれも、広告が日本語で書かれ、日本円で買え、日本向けの配送手続も整っていた。同庁は実物を取り寄せて、表示どおりでないことを確かめている。情報商材の2件は、販売業者と購入者が連絡を取る手段がその場に無く、表示を直させる見込みが無いと判断した。要請はいずれも、その商品の「表示の削除等」を求める形で行われた。
消費者からの申出は2025年度に569件
同法第10条により、消費者はモールなどでの取引で利益が害されるおそれがあると考えたとき、消費者庁にインターネットで申し出ることができる。2025年度の申出は569件だった。前年度の651件を下回ったが、2024年度は同じ直販サイトとオンラインゲームについての同じ趣旨の申出154件を含んでおり、これを1件ずつに数え直すと499件になる。
消費者庁への申出件数(件)
数値で見る(単位: 件)
| 項目 | 件 |
|---|---|
| 2022年度 | 507 |
| 2023年度 | 385 |
| 2024年度 | 651 |
| 2025年度 | 569 |
内訳を見ると、2025年度の569件のうち、法の対象であるオンラインモールやフリマなど物販系の取引デジタルプラットフォームに関するものが213件、予約サービスやクラウドファンディングなど役務提供系が38件だった。残る318件は、事業者が自前で運営する直販サイトなど、プラットフォームを介さない取引についての申出だった。同法は直販サイトでの取引を対象にしていない。同庁は、対象外の申出が多いことから、2026年4月に申出フォームを改め、冒頭に消費者・販売業者・プラットフォームの三者の関係を示す図を載せた。
28社の取り組み、口座名義の確認は18社
同法第3条は、プラットフォーム提供者に、消費者が販売業者と連絡を取れるようにすることや、苦情を受け付けて表示の適正を確保することなどを努力義務として課している。消費者庁は委託調査で、主要な33社に回答を求め、28社から回答を得た(調査は2025年9月16日から11月28日)。
販売業者と連絡するための専用メッセージ機能を設けていたのは28社中24社(前年度調査は25社中22社)だった。販売業者の登録時に身分証明書などの公的書類を求めていたのは28社中25社(同25社中21社)、販売業者の氏名・名称が銀行口座の名義と一致しているかを確かめていたのは28社中18社(同25社中12社)だった。苦情の受付窓口は28社すべてが設けていた。法に基づく取り組みの内容を公表していたのは28社中17社(同25社中15社)にとどまった。
同法第5条は、消費者が1万円を超える代金の返還などを求めるため、プラットフォーム提供者に販売業者の氏名や連絡先の開示を請求できると定める。28社中10社が請求を受けており、2024年4月から2025年9月までの請求33件のうち、開示されたのは2024年度の5件と2025年度上半期の7件だった。
輸入許可は5年で約4.1倍、税関は情報を求める
財務省関税局は会合で、税関の水際取締りを説明した。同局の資料によると、2024年の日本への輸入許可件数は約1.9億件で、2019年の約4.1倍に増えた。増加の中心は、中国・韓国に関連する越境ECサイトで個人が買った、主に1万円以下の貨物だという。2025年の不正薬物の押収量は速報値で3,211キログラムと、2019年以来6年ぶりに3トンを超え、偽ブランド品などの知的財産侵害物品の輸入差止は3万1,760件で3年続けて3万件を超えた。
個人が輸入者となる通販では、税関に出す輸入申告の情報を個人から得るのが難しく、通関業者は海外の運送業者などから貨物の情報を受け取っている。同局の作業部会が2025年11月26日にまとめた中間とりまとめは、この情報の不足から「税関が知財侵害物品等の摘発を十分にできていないおそれ」があると指摘した。対応として、税関とプラットフォーム事業者の覚書(MOU)を使った協力関係を広げ、違法な貨物の商品情報を税関から事業者に伝え、事業者から販売者の情報を受け取る仕組みや、事業者の持つ個別の販売情報を税関がシステムで受け取る方法を検討するとしている。
財務省はあわせて、関税局と民間事業者による「国際物流と税関行政に関する懇談会」を設け、プラットフォーム事業者などとの作業部会を含む4つの部会で2026年内に意見交換を始めると説明した。
モール運営者に求められる役割
今回の報告からは、消費者庁と税関がそれぞれ別の法律で、同じ相手であるプラットフォーム事業者に協力を求めている構図が見える。消費者庁の6件の要請は、販売業者が海外にいるか所在が分からず、本人に表示を直させられない場合に、モールの運営者を通じて表示を消させたものだった。税関も、海外から個人に直接届く貨物の中身を確かめるために、販売者の情報を持つプラットフォーム事業者からの情報提供を求めている。
一方、第4条の要請は約9か月で6件、2025年度の申出569件の半数以上は法の対象外の直販サイトについてのものだった。販売業者の口座名義を確かめる事業者は28社中18社にとどまる。国が個別に実物を取り寄せて確かめ、1件ずつ要請する方法で、年間約1.9億件の輸入許可が出る通販の量にどこまで追いつけるか。プラットフォーム事業者が販売業者の確認をどこまで進め、税関への情報提供をどのような形で引き受けるかが、懇談会での議論の焦点になる。
