日本銀行は10月22日、「主要銀行貸出動向アンケート調査」の2026年10月調査を公表した。過去3か月間の企業向けの資金需要判断DIは3で、前回7月調査のマイナス1からプラスに戻った。資金需要が増えたと答えた銀行が理由として最も重く見たのは設備投資の拡大で、貸出金利の低下は企業の規模にかかわらず「重要でない」だった。銀行側は企業向けの利鞘を広げる方向で貸出条件を変えており、住宅ローンの資金需要が減ったと答えた2行庫は、その理由として貸出金利の上昇を最も重い項目に挙げた。

企業向けはプラス3、地方公共団体向けはマイナス4

調査は貸出残高の上位50行庫が回答する四半期調査で、今回の回答期間は9月9日から10月13日まで。過去3か月間の資金需要判断DIは、企業向けが3(前回はマイナス1)、地方公共団体等向けがマイナス4(同3)、個人向けが5(同3)だった。

企業向けの回答の内訳は、「増加」が0行庫、「やや増加」が5行庫(構成比10%)、「横這い」が43行庫(86%)、「やや減少」が2行庫(4%)、「減少」が0行庫である。地方公共団体等向けは「横這い」が47行庫(94%)を占め、「やや減少」2行庫と「減少」1行庫が加わってマイナスになった。個人向けは「増加」1行庫と「やや増加」4行庫に対し、「やや減少」が1行庫だった。

今後3か月間の見通しを聞いた質問では、企業向けが6(前回調査時点の見通しは4)、地方公共団体等向けが1(同0)、個人向けが0(同1)となった。企業向けは「やや増加」が6行庫で、残る44行庫は「横這い」と答えている。

区分 2026年10月調査 前回(7月調査) 今後3か月の見通し
企業向け 3 -1 6
地方公共団体等向け -4 3 1
個人向け 5 3 0
主体別の資金需要判断DI(過去3か月間と今後3か月間の見通し)出典: 日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査<2026/10月>」

企業向け資金需要判断DIの推移

-2.50.02.55.07.510.0325年7月725年10月826年1月426年4月-126年7月326年10月
前回2026年7月調査のマイナス1から、10月調査は3へ戻った出典: 日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」各回の公表資料
数値で見る
項目値
25年7月3
25年10月7
26年1月8
26年4月4
26年7月-1
26年10月3

大企業向けは5、建設・不動産の大企業向けは14

企業向けを規模別に見ると、大企業向けが5(前回2)、中堅企業向けが1(同マイナス2)、中小企業向けが1(同マイナス2)で、3つの区分がそろって前回を上回った。中堅・中小はマイナスからプラスへ転じている。

業種別では建設・不動産の数字が大きい。大企業向けは14で、「増加」5行庫(10%)と「やや増加」5行庫(10%)が合わせて2割を占めた。中堅企業向けは8で、前回のマイナス10から上向いた。中小企業向けは7だった。製造業は大企業向けが7、中小企業向けが3で、中堅企業向けは0(前回7)と前回を下回った。金融・保険の中小企業向けはマイナス1で、規模別・業種別の区分で唯一のマイナスである。

区分 大企業向け 中堅企業向け 中小企業向け
全体 5(前回2) 1(同-2) 1(同-2)
製造業 7(同1) 0(同7) 3(同-2)
非製造業 7(同3) 3(同-4) 1(同-2)
建設・不動産 14(同1) 8(同-10) 7(同-3)
金融・保険 3(同3) 1(同1) -1(同-6)
その他非製造業 5(同5) 0(同-3) 0(同-1)

表: 企業規模別・業種別の資金需要判断DI(かっこ内は前回7月調査) 出典: 日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査<2026/10月>」

増やした理由は設備投資 貸出金利の低下は「重要でない」

資金需要が増えたと答えた銀行には、その要因を「重要」3、「やや重要」2、「重要でない」1の尺度で選ばせ、構成比で重みを付けた平均値を出している。最も高かったのは設備投資の拡大で、大企業向け2.20、中堅企業向け2.25、中小企業向け2.00。売上の増加が1.80、2.00、1.67で続いた。中小企業向けでは手許資金の積み増しが2.33、資金繰りの悪化が2.00と、設備投資以外の項目も高い。回答した銀行は大企業向け5行庫、中堅企業向け4行庫、中小企業向け3行庫である。

一方、貸出金利の低下は大企業向け・中堅企業向け・中小企業向けのすべてで1.00だった。資金需要が増えた理由として金利の安さを挙げた銀行は1行庫も無かったことになる。

資金需要が減ったと答えた銀行の回答は、大企業向け0行庫、中堅企業向け4行庫、中小企業向け2行庫。理由では設備投資の減少が中堅企業向け2.00、中小企業向け2.50で最も高く、貸出金利の上昇が1.75、2.00、手許資金の取崩しが1.75、2.00と続いた。借入金利の上昇が需要を下げる方向に働いているとの見方は、減少と答えた銀行の側に残っている。

住宅ローンの需要判断は4 減らした2行庫は金利上昇を最も重く見る

個人向けの内訳では、住宅ローンの資金需要判断DIが4(前回1)、消費者ローンも4(同1)となった。住宅ローンは「増加」2行庫と「やや増加」2行庫に対し「やや減少」が2行庫、消費者ローンは「増加」1行庫と「やや増加」2行庫で「減少」側は0行庫である。

増えた理由としては、住宅ローンで「その他」が2.25と最も高く、住宅投資の拡大が1.50、個人消費の拡大と個人所得の減少、貸出金利の低下がいずれも1.25だった(回答4行庫)。消費者ローンでは個人消費の拡大が2.33、個人所得の減少が2.00と高い(回答3行庫)。所得が減ったことで借入が増えるという回答が、消費者ローンでは上位に来ている。

減ったと答えた住宅ローンの2行庫は、貸出金利の上昇を3.00とした。2行庫とも「重要」と答えたことを意味し、この調査の尺度では上限の値である。住宅投資の減少と個人消費の減少がそれぞれ2.50で続いた。住宅ローンは借入期間が長く、変動金利型では適用金利が政策金利の動きに合わせて見直される。借入を検討する世帯の判断が金利で変わる場面が、貸し手の側からも見えていることになる。

銀行は利鞘を広げる方向 貸出運営スタンスはほぼ不変

過去3か月間に貸出運営スタンスをどう変えたかを聞いた質問では、DIが大企業向け0(前回1)、中堅企業向け2(同3)、中小企業向け3(同5)、個人向け1(同マイナス2)となった。いずれも「ほぼ不変」が92〜98%を占め、大きな変化は無い。積極化させた理由では、大企業向けでALM上のリスク許容度の上昇が3.00、中小企業向けで経済見通しの好転が3.00と高かったが、回答はそれぞれ2行庫にとどまる。

変化がはっきり出ているのは利鞘である。貸出条件設定DIは、縮小が緩和側にあたる利鞘設定で大企業向け・中堅企業向け・中小企業向けのいずれもマイナス7となり、規模を問わず利鞘を広げる方向に動いた。信用枠は3区分すべて0、借り手の信用リスク評価と担保設定は中小企業向けだけがマイナス1で、ほかは0だった。

格付別の利鞘設定DIは上位格付先が12(前回12)、中位格付先が10(同10)、下位格付先が10(同12)。上位格付先では6行庫、中位・下位ではそれぞれ5行庫が「拡大」と答え、「縮小」と答えた銀行は3区分いずれも0行庫だった。

今後3か月間の方針も同じ向きである。貸出運営スタンスDIは大企業向け1、中堅企業向けと中小企業向けが0、個人向けが2で、中堅・中小は50行庫すべてが「ほぼ不変」と答えた。利鞘設定の貸出条件設定DIは大企業向けマイナス6、中堅・中小企業向けがマイナス7。格付別の利鞘設定DIは上位・中位・下位がそろって12となり、前回調査時点の見通し(上位6、中位8、下位8)より高い。

50行庫で貸出シェアは約8割 9月の利上げが回答期間に重なる

この調査は、日銀と取引のある国内銀行(一部を除く)と信用金庫のうち、貸出残高が上位の50先の協力で四半期ごとに実施している。50先の貸出残高は、国内銀行と信用金庫の貸出残高全体の約8割を占める。資金需要判断DIは、「増加」と答えた金融機関の構成比に「やや増加」の構成比の半分を加え、「減少」の構成比と「やや減少」の構成比の半分を引いて算出する。借り手である企業に聞く日銀短観とは違い、貸し手である銀行の判断を集めた統計である。貸出残高の実績は銀行の貸出、9月は前年比5.3%増の681兆円 預金は1.6%増 日銀のとおり伸びが続いており、この調査はその残高の裏側で銀行が資金需要をどう見て、利鞘と貸出条件をどう動かしているかを示す。

企業規模は資本金と従業員数で分け、大企業は資本金10億円以上かつ常用従業員300人超(卸売業とサービス業は100人、小売業と飲食店は50人)の法人、中小企業は資本金3億円以下または常用従業員300人以下の法人と個人企業、その間が中堅企業となる。格付の区分は各行の内部格付に沿った判断で、目安は国内長期債格付のAAA〜BBBが上位、BB〜Bが中位、CCC以下が下位である。

今回の回答期間(9月9日〜10月13日)には、日銀の金融政策の変更が挟まっている。日銀は9月18日の金融政策決定会合で金融市場調節方針を変更し、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促すことを賛成7・反対2で決めた。補完当座預金制度の適用利率は1.25%、補完貸付制度の基準貸付利率は1.5%とした。公表文は「政策金利の変更後も、緩和的な金融環境は維持される」と記している。会合での議論は日銀9月会合の「主な意見」 追加利上げへ「早めにおおよそのゴールに近づけて」「上振れの兆候がみえればペースを速めざるを得ない」 政府は累積的な影響の点検を要望で伝えた。

次回の調査結果は2027年1月の公表となる。企業向けの見通しが6と前回より高い一方、利鞘を広げる方針も続いており、資金需要と貸出条件の双方が次回の数字で確かめられる。