厚生労働省は11月2日、11月に実施する戦没者の遺骨収集と慰霊巡拝の日程を公表した。遺骨収集は東部ニューギニア(パプアニューギニア)の2件、硫黄島、ソロモン諸島の計4件で、硫黄島には18日から35人の派遣団を送る。遺族が戦没地を訪れる慰霊巡拝は硫黄島とフィリピンで行い、それぞれ107人、18人の遺族が参加する。海外の戦没者は約240万人に上り、厚労省によると、このうち約112万柱の遺骨はいまも収容されていない。
11月は遺骨収集4件、慰霊巡拝2件
厚労省の発表によると、11月に始まる事業は遺骨収集が4件、慰霊巡拝が2件ある。
| 事業 | 期間 | 参加者 |
|---|---|---|
| 東部ニューギニア現地調査・遺骨収集(第4次) | 11月4日〜18日 | 6人 |
| 硫黄島戦没者遺骨収集(第3次) | 11月18日〜27日 | 35人 |
| ソロモン諸島戦没者遺骨収集 | 11月25日〜12月10日 | 12人 |
| 東部ニューギニア現地調査・遺骨収集(第5次) | 11月28日〜12月9日 | 7人 |
| 硫黄島戦没者慰霊巡拝(第1次) | 11月18日〜19日 | 124人(遺族107人) |
| フィリピン戦没者慰霊巡拝(第1次) | 11月18日〜27日 | 22人(遺族18人) |
遺骨収集の参加者は、いずれも厚労省の職員2人と、一般社団法人日本戦没者遺骨収集推進協会の会員で構成する。硫黄島は協会から33人が加わり、4件の中で最も大きい。
別紙の日程表によると、東部ニューギニアの第4次派遣団は成田を4日夜に発ち、首都ポートモレスビーから北部のオロ州に入る。ポポンデッタやサナナンダを拠点に、8日間ほど現地調査と遺骨収集に当たる。28日に出発する第5次派遣団は、山岳地帯のエオラクリークで調査と収集を行う。いずれも収集の後、パプアニューギニア国立博物館で遺骨の持ち出し許可証を作り、日本へ送る検体を大使館で封印してから帰国する。ソロモン諸島の派遣団はガダルカナル島で遺骨の鑑定などを続け、12月4日に焼骨式、5日に現地追悼式を開く。
慰霊巡拝は、遺族が戦没地を訪れて追悼する事業だ。硫黄島の巡拝団は19日に羽田空港からチャーター便で島に渡り、「硫黄島戦没者の碑」で合同追悼式を開いた後、班に分かれて島内を巡り、その日のうちに戻る。フィリピンの巡拝団はルソン島を回る班と、ミンドロ島・ネグロス島・セブ島・ミンダナオ島を回る班に分かれ、26日にマニラで「比島戦没者の碑」での合同追悼式に臨む。
海外戦没者約240万人、未収容は約112万柱
厚労省の集計(2026年3月31日現在)では、海外での戦没者は約240万人。このうち遺骨を収容したのは約128万柱で、ほぼ半数にとどまる。この128万柱には、国の遺骨収集事業で収容した約35万柱のほか、戦後に陸海軍の部隊や引き揚げた民間人が持ち帰った遺骨が含まれる。
未収容の約112万柱には、海に沈んだ艦船などとともに失われた「海没遺骨」約30万柱と、相手国の事情で収容が難しい約23万柱が含まれる。それ以外で収容の対象になり得るのは、最大で約59万柱という。遺族に引き渡せなかった遺骨は東京・千代田区の千鳥ケ淵戦没者墓苑に納められ、納骨数は約37万柱になる。
海外からの遺骨の収容は1952年度に南方地域で始まり、1991年度からは旧ソ連での抑留中の死亡者、1994年度からはモンゴルでの抑留中の死亡者も対象になった。フィリピンでの日本人戦没者は約51万8000人と推計され、約36万9000柱の遺骨が日本に戻っていない。フィリピンでの遺骨収集は2010年10月から中断していたが、2018年5月に両国が協力覚書に署名し、収容や送還はフィリピン政府の承認を得たうえで厚労省だけが行うことになった。
硫黄島、昨年度の収容は37柱 噴火で地下壕の調査できず
東京都小笠原村の硫黄島では、政府が関係省庁会議を設けて遺骨の収集を進めている。2026年4月24日の会議の議長総括によると、2025年度は収集団を2回派遣し、37柱の遺骨を収容した。厚労省の集計では、硫黄島での収容数は2022年度75柱、23年度66柱、24年度66柱で、25年度は37柱に減った。26年度は8月末までに10柱となっている。
硫黄島で収容した戦没者の遺骨(柱)
数値で見る(単位: 柱)
| 項目 | 柱 |
|---|---|
| 22年度 | 75 |
| 23年度 | 66 |
| 24年度 | 66 |
| 25年度 | 37 |
| 26年度 | 10 |
2025年度は、2019年度に見つかった滑走路地区の未探索の地下壕で入り口を開ける工事と壕内の調査を予定していたが、2025年9月に起きた噴火の影響で実施できなかった。防衛省の実証実験に合わせた掘削調査も見送られた。一方、樹木を全て切り開いて地表を調べる調査では9か所で遺骨が見つかり、外周道路の外側にある壕などの調査で37柱を収容した。
2026年度の計画では、19年度と21年度の調査で確認された滑走路地区の未探索の壕に入る工事と壕内の調査を行い、遺骨があれば収容する。2026年度予算には硫黄島の遺骨収集経費として約12億円、遺族の慰霊巡拝の経費として約3400万円を計上した。噴火で実施できなかった事業の一部は、2025年度の予算を繰り越して執行する。
2029年度まで「集中実施期間」 DNA鑑定で身元特定
遺骨収集は2016年3月に成立した「戦没者の遺骨収集の推進に関する法律」で国の責務と位置づけられた。法律は当初、2024年度までを集中実施期間としたが、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年度以降の事業が計画通りに進まなかったことから、2023年6月の改正で期間を2029年度まで延ばした。同法に基づき、厚労大臣が指定した日本戦没者遺骨収集推進協会が、厚労省の指導監督の下で情報収集と収容を担っている。
身元の特定には、2003年度から希望する遺族とのDNA鑑定を使っている。厚労省の集計では、2026年8月末までに8178件を鑑定し、身元が分かったのは1311件。2025年度は963件のうち18件だった。
収集の手順も見直されてきた。厚労省は2020年5月に遺骨収集の手順を抜本的に見直した。日本人の遺骨かどうかは「所属集団判定会議」で審議しており、見直し以前に日本人戦没者として送還された遺骨の中には、この会議で「日本人の遺骨である可能性が低い」と判定されたものもある。厚労省は2026年6月にカザフスタンへ2柱、7月にミャンマーへ4柱を返還したと9月に公表し、送還後の遺骨を相手国へ返したのは初めてだとしている。今回の東部ニューギニアの日程表でも、現地で検体を整理し、大使館で封印してから日本へ送る手順が組まれている。
厚労省は遺骨収集の情報について「戦後70年以上が経過し、遺骨情報が減少してきている」と説明し、特にフィリピン、東部ニューギニア、ビスマーク・ソロモン諸島、インドネシアなど南方地域での収容が難しくなりつつあるとして、未収容遺骨の情報を広く求めている。
法律が定める集中実施期間の終わりまでは、今年度を含めて3年余りしか残っていない。硫黄島では、噴火で1年遅れた地下壕の調査が今年度の計画に入った。11月の派遣は、その硫黄島と、情報が乏しくなっている南方の戦地で、どれだけの遺骨を見つけ、身元を確かめて遺族に返せるかが問われる。
