デジタル庁は10月30日、政府職員向けの生成AI利用環境「ガバメントAI 源内(げんない)」について、職員を対象にした利用状況アンケート(第1回)の結果を公表した。各府省庁の職員6,439人が回答し、源内を週1回以上使う利用者の71.7%が「満足」と答えた。導入した業務で1週間当たり1時間以上の短縮を実感した利用者は54.4%で、短縮の効果は1人当たり週平均約1.83時間(約110分)と推計した。一方で、回答者の31.2%は源内をほとんど、または全く使っていなかった。

6,439人が回答、満足は「とても」16.0%・「やや」55.7%

調査は今年度の大規模実証の効果と課題をつかむため、8月21日から9月18日にかけて、Microsoft Formsのウェブアンケートで行った。対象は源内を使う各府省庁などの職員で、衆議院事務局と最高裁判所事務総局も含む。回答者6,439人の内訳は、本省・本庁が2,467人、地方支分部局が3,972人。役職では係長級が30.4%、課長補佐級が27.5%、係員級が19.8%で、課長級8.1%、室長級2.5%、審議官級(指定職)以上0.5%も答えた。質問は22問で、利用実態、満足度、業務時間と質の変化、使う際の課題、求める支援を尋ねた。

満足度は、週1回以上使う3,078人に聞いた。「とても満足している」が16.0%、「やや満足している」が55.7%で、合わせて71.7%。「どちらともいえない」は19.4%、「やや不満である」は7.2%、「とても不満である」は1.7%だった。

源内は、政府自らが先導してAIを使うという方針のもとでデジタル庁が整備している生成AI環境だ。2025年5月に成立したAI法に基づき、同年12月に閣議決定された人工知能(AI)基本計画は、「隗(かい)より始めよ」の観点から政府が率先してAIを利活用する方針を示した。デジタル庁は2026年5月28日、全府省庁の約18万人の職員を対象とする大規模実証を始め、2026年度中に全府省庁の約18万人が生成AIを使えるようにする予定としている。

短縮の効果は週平均約1.83時間、「たたき台づくり」が最多

源内を導入した業務で1週間の業務時間がどう変わったかを利用者3,078人に聞くと、「1〜3時間削減」が35.1%で最も多く、「3〜5時間削減」が10.9%、「5〜10時間削減」が5.2%、「10時間以上削減」が3.2%だった。1時間以上の削減を合わせると、デジタル庁の発表と大臣会見では54.4%(概要資料の見出しは54.5%)。「ほぼ変わらない(±1時間未満)」は34.6%、「わからない」は10.2%で、「1〜3時間増加」が0.6%、「3時間以上増加」が0.1%あった。

週平均約1.83時間は、各区間の中央値を当てはめて計算した推計値だ。「1〜3時間」は2時間、「3〜5時間」は4時間とし、上限の無い「10時間以上削減」は10時間、「3時間以上増加」は3時間の増加とみなした。「ほぼ変わらない」と「わからない」は0時間として計算している。

業務がどう良くなったか(複数回答)では、「たたき台・ドラフトを素早く作成できるようになり、ゼロから考える負担が減った」が1,498人で最も多かった。「経験の少ない業務領域でも、業界知識・専門知識のキャッチアップが速くなった」が1,088人、「これまで読み切れなかった大量の文書・情報からも、必要な情報を的確に抽出できるようになった」が1,059人で続いた。「特に改善・変化は感じていない」は394人だった。

自由記述には、外部に委託して半年から1年かけていたガイドラインの作成を、業者を使わず3か月程度で仕上げられているという回答や、業務時間が減ったことで子育て中でも家庭を犠牲にせずに働けているという回答があった。デジタル庁は、全体の業務時間が大きく変わらなくても、節約した時間をより踏み込んだ検討や従来対応できなかった業務に振り向け、業務の質や働き方が改善したとの声があったとしている。

回答者の3割はほぼ使わず、約2割は未登録

使う頻度は回答者の間で大きく分かれた。

源内を使う頻度(回答者6,439人)(人)

05001,0001,5002,000669ほぼ毎日711週3〜4回1,698週1〜2回1,687ほぼ使わず325登録のみ1,349未登録
週1回以上の3,078人に満足度と業務時間の変化を尋ねた出典: デジタル庁「ガバメントAI 源内 利用状況アンケート調査結果 概要」
数値で見る(単位: 人)
項目人
ほぼ毎日669
週3〜4回711
週1〜2回1,698
ほぼ使わず1,687
登録のみ325
未登録1,349

ほぼ毎日使う職員は669人、週3〜4回は711人、週1〜2回は1,698人だった。これに対し、「ほとんど利用していない」が1,687人、「利用登録はしたが、全く利用していない」が325人で、合わせて回答者の31.2%を占める。「利用登録をしていない」職員も1,349人いた。

ほとんど、または全く使わない3,361人に理由を聞くと(複数回答)、「使い方がわからない」が1,166人で最も多かった。「源内以外の他のAIサービスを常時利用している」が994人、「業務で源内を使用する必要性を感じない」が925人、「従事する業務の性質上、AIを利用する必要性がない・立場にない」が547人で続いた。「源内のアカウントがない」は271人、「上司・組織から推奨されていない」は53人だった。

使っている職員の側にも不満はある。利用者3,078人に困った経験を聞くと(複数回答)、最多は「特に困った経験・不満はない」の1,136人だったが、「回答の精度・信頼性が低い場面があった」が949人、「AIの出力をそのまま使えず、修正・加工に手間がかかった」が627人、「利用方法・プロンプトの書き方がわからなかった」が478人、「処理が遅い・エラーが発生した」が428人、「入力できる情報の範囲の判断に迷った」が304人いた。

求める支援は頻度で異なり、週1〜2回以上使う職員は活用事例集やプロンプトの書き方ガイドを、ほとんど使わない職員や未登録の職員は基本的な使い方の研修を求める声が多かった。

3つの方針と来年1月の2回目調査

デジタル庁は結果を受け、3つの考え方で取り組むとした。

1つ目は、AIを使いこなしたい職員を支える環境づくりだ。10月20日に提供を始めたAIエージェント利用環境(政府職員18万人の生成AI「源内」、AIエージェント環境の提供を開始 安全ルール「源内基準」を公表)で、回答の精度やファイルの入出力についての要望に応える。概要資料は、新しい環境では回答の根拠となる出典URLや参照ファイルを確かめられるほか、1ファイル数百MBまでのPDFやWord、Excelなどを扱えると説明している。職員が作ったスキルやデータを府省庁の枠を越えて共有する「源内ライブラリ」も年度内に提供する。

2つ目は、利用の定着だ。特に理由なく使っていない職員や、使うきっかけが無かった職員もいるとみて働きかけを強める。デジタル庁は、AIを使う職員と使わない職員の間で業務の成果や生産性に差が生じるおそれがあると指摘している。

3つ目は、「AIに振り回されない働き方の確保」だ。自由記述には、業務の水準を上げられるようになって時間が増えたという前向きな回答の一方、「AIを使えない、使おうとしない職員の業務が、AIを使える職員に回されて仕事が増える」との懸念もあった。デジタル庁は、AIの回答を確かめやすい仕組みやデータセットを整え、10月に定めた「源内基準」などで適切な使い方と注意点を周知する。未登録や利用の少ない職員には基本的な使い方の研修を行う。

同じ10月30日には、国会答弁案の作成を支援するアプリの試行も始まった(国会答弁の原案、AIが作成支援 デジタル庁が源内で試行開始 来年1月の通常国会で本格提供)。デジタル庁は令和9年1月ごろに2回目の調査を行い、AIエージェント利用環境を導入した後の変化を確かめたうえで、今年度の大規模実証の成果をまとめる。

満足度の母数は週1回以上の利用者

今回の数字を読むときは、母数に注意がいる。71.7%の満足度と54.4%の短縮実感、週平均約1.83時間の推計は、いずれも週1回以上使う3,078人の回答に基づく。回答者全体6,439人の半数に満たない。ほとんど使わない職員と未登録の職員3,361人は、満足度や業務時間の変化を尋ねる対象に入っていない。

調査はウェブアンケートで、回答したのは源内を使う府省庁などの職員の一部だ。デジタル庁は約18万人を対象とした実証と位置づけるが、回答者が全体の傾向をどこまで映すかは、この資料からは分からない。短縮時間も職員の実感を区間で答えてもらい、中央値を当てはめて計算した推計で、業務記録から測った値ではない。

それでも、使わない理由の最多が「使い方がわからない」で、他のAIサービスを常時使っているとの回答も994人あったことは、導入の課題がどこにあるかを示している。2回目の調査で、未登録の職員や使い方がわからない職員がどれだけ減るか、AIエージェント環境の導入で回答の精度への不満がどう変わるかが、この実証の成果を測る材料になる。