環境省は10月13日、サクラやウメ、モモなどを食い荒らす特定外来生物クビアカツヤカミキリについて、全国の確認・被害情報を集める情報収集システムの試行を始めた。仮の名称は「クビアカ発見・通報ネット」で、期間は11月30日まで。集めた発見地点は誤った情報を取り除いたうえでウェブ地図に載せ、2027年(令和9年)4月の本格運用を目指す。

発見地点をフォームで集め、確認済みの地点を地図に載せる

環境省の発表資料によると、試行の目的は、全国の確認・被害情報を「幅広い主体から迅速かつ効率的に収集し、リアルタイムで公表する仕組みのあり方を検証する」ことにある。いきなり本番の制度を始めるのではなく、約1か月半の試行で使い勝手や運用上の課題を洗い出す位置づけだ。

仕組みは2つの画面でできている。1つはウェブ上の「情報収集フォーム」で、発見した地点や被害の状況などを、地図上の地点のデータとして受け付ける。もう1つが「公開用ページ」で、環境省の地理情報サイト上に置かれ、確認が済んだ情報を点としてウェブ地図に表示する。

フォームから入った情報がそのまま地図に出るわけではない。別添資料は、収集したデータについて「ネガチェック(誤情報の除外)」を行い、確認済みの情報だけを公開用ページに載せる流れを示している。受け付けた情報と公開する情報の間に、確認の工程を挟む設計だ。

試行の期間中は、地方自治体には意見照会を行い、一般からはメールで意見を受け付ける。環境省はこれらの意見を踏まえてフォームと公開用ページを更新し、2027年4月の本格運用につなげるとしている。

9月に決めた防除戦略の「全国的な分布把握」を形にする

今回の試行は、政府の「クビアカツヤカミキリ対策本部」が9月11日に決定した「クビアカツヤカミキリ防除戦略」に基づく取り組みである。

戦略の本文は、その他の推進事項の1つとして「広域的な分布状況の調査及び把握」を挙げている。新たな被害地点の多くが既被害地点から3キロ圏内にあることを踏まえ、自治体や国民が既被害地域の情報を速やかに把握し、監視などの予防策に生かせることが重要だと書く。そのうえで、すでに被害地域の情報をウェブで公開している都道府県も多いとしつつ、国としても都道府県などと連携して、全国の分布地点情報を把握する仕組みづくりを進めるとしていた。

つまり、都道府県ごとに分かれていた被害地点の情報を、国の仕組みで全国一つの地図にまとめるのが今回の試行の狙いである。戦略が想定するのは、まだ被害の出ていない地域の自治体や住民が、近くの既被害地点を把握して監視などの予防に生かす使い方だ。

戦略は情報の流れの役割分担も定めている。市町村が地域の発見情報の一次的な受付と確認を担い、都道府県が市町村から共有された情報を一元的に集約・分析して地域の防除戦略に反映する。国は都道府県から得られる情報を全国的に集約し、都道府県境を越える拡散リスクに対応する、という構図だ。

22都府県・300超の市町村に被害、今年は6県で新たに確認

防除戦略の本文によると、クビアカツヤカミキリの被害は2012年に国内で初めて確認されて以降広がり続け、2026年9月現在で22都府県、300を超える市町村(特別区を含む)に及ぶ。今年に入ってからは山梨、福井、長野、岐阜、岡山、香川の6県で新たに見つかった。

戦略は、この虫の繁殖力について、産卵数が1000個を超えるメスもいるとされると記している。新たな被害地域の多くは既被害地から3キロ以内で発生している一方、40キロほど離れた場所に飛び地のように被害が出る例もあるとし、分散能力も「極めて高い」としている。

被害は景観と農業の両方に及ぶ。戦略は、各地でサクラの名所や地域の景観を象徴する樹木が失われつつあり、生活環境や文化的価値、インバウンドを含む観光への影響が懸念されると指摘する。ウメ、モモ、スモモなどの農作物への被害も急速に拡大し、生産現場に深刻な影響を及ぼしているという。

法令上は、2018年に外来生物法に基づく特定外来生物に指定され、飼育や輸入、野外に放つことなどが原則として禁止されている。2023年4月には植物防疫法に基づく指定有害動植物にもなった。

政府は対策を強めており、10月6日には、予備費32億円余りの全額を防除に充てることを閣議決定している(関連記事:予備費32億円、全額がクビアカツヤカミキリの防除 10月6日に閣議決定 環境省27億円・農水省5億円 被害は22都府県・300超の市町村へ)。

住民の通報が早期発見のかぎ 「フラス」が目印

防除戦略は、被害の拡大を防ぐには「早期発見・早期通報・早期防除」の徹底が重要だとし、早期発見には住民からの通報が重要になると位置づけている。都道府県と市町村には、住民が通報しやすい体制や方法を整えるよう求めた。

戦略が事業者や国民に期待する役割として挙げるのは、サクラ属(バラ科)の樹木の監視である。成虫や「フラス」、脱出孔などの被害の兆候を見つけたら、速やかに市町村などの関係機関へ通報することが期待されるとしている。フラスとは、戦略の説明によれば、木くずと幼虫の排せつ物が混じったものを指す。戦略は未被害地域の対策としても、フラスが出る時期を中心とした巡視の徹底を挙げている。

戦略の枠組みでは、住民の通報は市町村が一次的に受け付けて確認し、都道府県、国へと集約されていく。そこに国のフォームと全国地図が加わる形になる。市町村の窓口と国のフォームをどう役割分担させるか、誤情報をどう除くかは、今回の試行で自治体の意見を聞きながら詰めることになる。

対策本部は15日に3回目の会合、2030年度へ「縮小の道筋」

クビアカツヤカミキリ対策本部は7月31日に設置された。設置要領によると、本部長は農林水産大臣と環境大臣の2人で、農水省消費・安全局長と環境省自然環境局長が幹事を務める。本部員には林野庁長官や国土交通省総合政策局長、文部科学省の審議官らが入り、全国知事会、全国市長会、全国町村会の地方三団体も参画している。

9月11日の第2回会合で決めた防除戦略は、長期的に国内根絶が可能となるよう、直ちに被害地域の拡大防止策に着手し、2030年度(令和12年度)を目途に被害地域の縮小への道筋をつけることを目標に掲げた。地域を被害の状況に応じて「未被害地域」「飛び地的被害地域」「被害最前線地域」「まん延地域」の4つに分け、未被害地域では巡視とネットによる予防、飛び地では伐倒・伐根による短期間での地域根絶、といった具合に対策を変える。防除の主体は被害木や土地の所有者・管理者が基本で、国と自治体は自らの施設で率先して取り組み、民有地には必要な支援を行う。

環境省と農水省は10月15日午後3時30分から、第3回の対策本部を環境省の会議室で開く。会議は非公開で、資料は会議の開始までに環境省のウェブサイトに掲載される予定となっている。戦略は対策本部が毎年度、防除の進み具合を点検し、見直すとしている。