半導体試験装置大手のアドバンテスト(東証プライム)は10月28日、2027年3月期の連結業績予想を上方修正した。売上高は7月時点の1兆7140億円から1兆8630億円に、営業利益は8460億円から9670億円に、当期利益は6600億円から7415億円に引き上げた。同社が通期予想を引き上げるのは7月29日に続いて2回目となる。同日発表した4〜9月期(中間期)の連結決算は、売上高が8452億円(前年同期比60.5%増)、営業利益が4568億円(同96.5%増)で、売上高と各段階の利益がいずれも中間期として過去最高を更新した。中間配当は1株49円とし、上限2800億円の自社株買いも決めた。

試験装置とは何か、何が売れたのか

アドバンテストが手がけるのは、半導体が設計どおりに動くかを出荷前に確かめる「テスタ」(半導体試験装置)である。半導体メーカーや製造受託会社は、完成した半導体を1個ずつテスタに通して良品と不良品を選り分ける。半導体の生産量が増えれば検査の回数が増え、回路が複雑になれば1個あたりの検査に時間がかかるため、どちらもテスタの需要を押し上げる。

同社は決算短信で、4〜9月期の事業環境について、データセンター向けのSoC(システム・オン・チップ)半導体やメモリ半導体など「AI関連の高性能半導体が市場成長を牽引しました」と説明した。AI関連の高性能半導体の生産数量が増え、先端パッケージの採用などで半導体の複雑化が進むなかで、顧客がテスタへの設備投資を続けたという。同社は需要に応じるため、サプライチェーン全体で生産能力の拡大に努めたとしている。

主力のテストシステム事業部門の売上高は7702億円(前年同期比61.2%増)、セグメント利益は4556億円(同89.4%増)だった。製品別には、SoCテストシステムがAI関連SoCの生産増と複雑化を主因に伸びた。メモリテストシステムでも、データセンター投資の拡大を背景にDRAM向けが増え、不揮発性メモリ向けも伸びた。保守サービスや消耗品を扱うサービス他部門は、売上高750億円(同53.7%増)、セグメント利益209億円(前年同期は30億円)だった。製品の設置台数が増えてサポート・サービスの売上が伸び、高性能SoC向けのテスト用インターフェースボードなど消耗品の販売も増えた。

項目 2025年4〜9月期 2026年4〜9月期 増減率
売上高 5267億円 8452億円 60.5%増
営業利益 2324億円 4568億円 96.5%増
税引前中間利益 2305億円 5102億円 121.3%増
中間利益 1698億円 3681億円 116.8%増
テストシステム事業部門の売上高 4780億円 7702億円 61.2%増
サービス他部門の売上高 488億円 750億円 53.7%増
アドバンテストの4〜9月期の連結業績

出典: アドバンテスト「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」

利益を押し上げた円安と投資の評価益

営業利益の伸び率(96.5%)が売上高の伸び率(60.5%)を大きく上回ったのは、増収に加えて売上の構成が利益率の高い製品に寄ったためだと同社は説明している。為替も業績を押し上げた。4〜9月期の平均為替レートは1ドル=160円で、前年同期の146円より円安だった。ユーロは185円(前年同期は166円)。売上高に占める海外の比率は99.4%(同98.3%)に達しており、円安になればその分だけ円換算の売上と利益が増える。

税引前中間利益が営業利益を500億円あまり上回ったのは、金融収益を約570億円計上したためだ。このうち541億7100万円は、戦略投資に関連する金融商品の評価益である。財政状態をみると、投資有価証券は3月末の679億円から9月末には4326億円に増えた。

四半期ごとにみると、4〜6月期の売上高は3675億円、営業利益は1900億円だった。中間期の数字から差し引くと、7〜9月期は売上高が約4777億円、営業利益が約2668億円となり、4〜6月期を上回った。

4月から2回の上方修正、下期は円高を前提

同社は4月27日、2027年3月期の売上高を1兆4200億円、営業利益を6275億円と見込んでいた。7月29日にこれを売上高1兆7140億円、営業利益8460億円に引き上げ、今回さらに積み増した。前期(2026年3月期)の実績は売上高1兆1286億円、営業利益4991億円で、今回の予想どおりなら売上高は65.1%増、営業利益は93.7%増となる。

アドバンテストの2027年3月期通期予想の推移(億円)

売上高営業利益

05,00010,00015,00020,00014,2006,2754月17,1408,4607月18,6309,67010月
出典: アドバンテスト「2026年3月期 決算短信」「通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」
数値で見る(単位: 億円)
項目売上高営業利益
4月14,2006,275
7月17,1408,460
10月18,6309,670

修正の理由について同社は、AI関連投資が広がるなかで2026年の半導体市場は高い成長が見込まれ、半導体テスタ市場も推論AIの進展に伴う高性能半導体の生産増と複雑化を背景に「過去最大の市場規模を更新する」とみていると説明した。そのうえで、中間期までの業績の進み具合を踏まえて予想を改めたとしている。

ただし、下期(10月〜2027年3月)の想定為替レートは1ドル=150円、1ユーロ=170円と、上期の平均より円高に置いた。通期予想から中間期の実績を差し引くと、下期は売上高約1兆178億円、営業利益約5102億円となり、上期より売上高で約1700億円多い。中東情勢の影響については、物流費を含む一部のコスト増を見込むものの、現時点で直接的な影響は限られるとの見方を示した。一方で、メモリ半導体などの主要部品は需要が供給を上回る状態が続いているとして、生産能力の増強とサプライチェーンの強化を急ぐ方針を挙げた。

半導体製造装置全体の需要見通しについては、日本製の半導体製造装置、2026年度は26%増の6兆5502億円へ SEAJ予測、AI投資で上方修正で伝えている。

中間配当は49円、上限2800億円の自社株買い

株主への還元も厚くした。9月30日を基準日とする中間配当は1株49円で、前年同期の29円から20円増やした。配当金の総額は353億7600万円、効力発生日は12月1日。期末配当と年間配当の予想は「未定」としている。前期の年間配当は59円(中間29円、期末30円)だった。

同社の株主還元方針は、2024年度から2026年度までの第3期中期経営計画の3年間で、総還元性向(配当と自社株買いの合計額を連結当期利益で割った比率)を50%以上とすることを目安にしている。配当は1株あたり年30円を最低額としている。今期は中期計画の最終年度にあたる。

あわせて、自社株買いを決議した。取得する株式は1100万株(9月30日時点の発行済み株式から自己株式を除いた数の1.5%)、取得額は2800億円をそれぞれ上限とし、10月29日から2027年3月24日まで東京証券取引所で市場買付する。理由については、同日発表した業績予想と手元資金の状況を考慮し、株主還元と資本効率の向上を図るためとしている。4〜9月期にも自社株買いに1059億円を支出しており、9月末の自己株式は1004万7095株だった。

資金の出入りと財務の姿

4〜9月期の営業活動によるキャッシュフローは3070億円の収入で、前年同期の1399億円から倍増した。棚卸資産の増加で1195億円、法人税の支払いで1098億円が出ていった一方、税引前利益5102億円を計上し、顧客から受け取る前受金も442億円増えた。棚卸資産は3月末の2317億円から9月末に3524億円に増えた。

投資活動では2109億円を支出し、その大半は負債性金融商品の取得(1844億円)だった。財務活動は304億円の支出で、自社株買い1059億円と配当218億円の支払いに対し、転換社債型新株予約権付社債の発行で1000億円を調達した。

9月末の総資産は1兆7321億円で、3月末から5603億円増えた。現金及び現金同等物は4018億円。親会社の所有者に帰属する持分の比率は、3月末の67.9%から66.1%に下がった。社債は3月末から895億円増えている。半期報告書は11月13日に提出する予定で、下期は円高を前提に置いたまま、売上高を上期より約1700億円多く見込む予想の達成が問われる。