フラッシュメモリ大手のキオクシアホールディングス(東京都港区)は10月30日の取締役会で、9月30日を基準日とする中間配当を1株90円とすることを決め、発表した。2024年12月に東京証券取引所プライム市場へ上場してから、配当を出すのは初めてとなる。配当総額は479億3700万円で、12月8日に支払いを始める。同時に、設備投資などに必要な資金を除いて余った資金の100%を株主還元に充てるとする方針も決めた。同日発表した2026年4〜9月期(中間期)の連結決算(国際会計基準)は、売上収益が前年同期の5.4倍の4兆2472億円、純利益(親会社の所有者に帰属する中間利益)が2兆1979億円だった。

初の配当は1株90円、分割後の株数では30円

開示資料によると、中間配当の1株90円は、10月1日に実施した株式分割(1株を3株に分ける)の前の株数を基にした金額だ。分割後の株数に置き換えると1株30円に当たる。会社は7月31日の時点で中間配当の予想を0円としており、今回の決定で予想を上回った。前期(2026年3月期)は中間・期末とも無配だった。配当の原資は利益剰余金で、効力の発生日は12月8日。

期末配当の予想は「-」として示していない。会社は、半導体メモリ業界では事業環境が短い期間に大きく変わるとして、年度の業績計画を開示しておらず、配当も年間の見通しを出していない。

配当を始める理由について会社は、AI関連の需要の拡大などを背景に事業環境が改善し、業績とキャッシュ・フロー(現金の出入り)が大きく改善して財務の健全性が高まったためと説明した。事業の成長に向けた投資を続けながら株主還元を実施できる環境が整ったと判断し、8月の自己株式の取得(自社株買い)に続いて配当を実施するという。

余った資金は「100%」還元、累進配当を基本に

新たに決めた株主還元方針は、①設備投資や研究開発費、人への投資(人的資本投資)、M&A(企業の合併・買収)などの戦略投資、その他の確定した将来の支出をまかなう、②借入金を上回る手元資金を持つ状態(ネット・キャッシュポジション)を保つ――の2つを満たした上で、中長期的に余った資金の100%を株主還元に充てるという内容だ。還元の手段は、機動的な自己株式の取得と、累進配当を基本とする。累進配当は、配当を原則として減らさず、維持するか増やしていく方針を指す。

自社株買いは、すでに大きな規模で実施した。会社は7月31日の取締役会で、取得額8000億円、株数3000万株(6月30日時点の発行済み株式の5.5%)を上限とする取得枠を、8月3日から10月30日までの期間で設けた。目的は「資本効率の向上と株主還元の充実」とした。実際には8月3日から10日までに、東証での市場買い付けにより1613万3500株を7999億9768万9000円で取得し、取得を終えた。上限の金額に、期間の初めの1週間余りで達したことになる。

8月の自社株買いと今回の中間配当を合わせると、株主への還元額は8000億円を超える。中間期の決算では、自社株買いによって株主資本が8000億円減った。

売上収益は前年同期の5.4倍、AI向けで単価が上昇

4〜9月期の売上収益は4兆2472億円で、前年同期の7911億円から436.8%増えた。営業利益は1308億円から3兆2647億円に、純利益は589億円から2兆1979億円に増えた。会社は増収の理由として、生成AI用途を中心にデータセンター向けの顧客の需要が旺盛に推移し、平均販売単価が大幅に上がったこと、記憶容量で見た出荷量が増えたこと、為替の円安を挙げた。米ドルの平均為替レートは前年同期の146円から160円になった。

キオクシアの事業はメモリ事業の1つだけで、売上収益は製品の用途別に3つに分けて開示している。パソコンやデータセンター、企業向けのSSD(記憶装置)などの「SSD&ストレージ」は4620億円から2兆7907億円に、スマートフォンや車載、産業機器などに組み込むメモリの「スマートデバイス」は2363億円から1兆3145億円に増えた。SDメモリカードやUSBメモリなどの「その他」は928億円から1419億円だった。

キオクシアHDの用途別売上収益(4〜9月期)(億円)

前年同期当期

010,00020,00030,0004,62027,907SSD等2,36313,145スマート9281,419その他
出典: キオクシアホールディングス「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」
数値で見る(単位: 億円)
項目前年同期当期
SSD等4,62027,907
スマート2,36313,145
その他9281,419

営業利益には、利益を押し下げる要因もあった。訴訟損失引当金の繰り入れ366億円、従業員に支給する特別利益分配金、株式報酬費用の増加などだ。これらの一時的な項目を除いた会社独自の指標(Non-GAAP)では、営業利益は3兆3145億円だった。

四半期ごとに見ると、4〜6月期の売上収益は1兆7671億円、7〜9月期は2兆4800億円で、7129億円増えた。7〜9月期の営業利益は1兆9947億円だった。AIやデータセンター向けの需要は、半導体の製造装置でも投資を押し上げている(関連記事:日本製の半導体製造装置、2026年度は26%増の6兆5502億円へ SEAJ予測、AI投資で上方修正)。

手元資金1兆3973億円、自己資本比率は49.8%

9月末の総資産は5兆8839億円で、3月末から2兆1938億円増えた。売掛金などの営業債権が9878億円、現金と現金同等物が9266億円増えた。現金と現金同等物の残高は1兆3973億円になった。負債は2兆9548億円で、利益の増加に伴って未払いの法人所得税が8702億円増えた。総資産に占める親会社の所有者に帰属する持ち分の割合(自己資本比率)は、3月末の37.9%から49.8%に上がった。

4〜9月期のキャッシュ・フローを見ると、本業で得た資金を示す営業活動によるキャッシュ・フローは2兆3796億円の収入で、前年同期の1752億円から大きく増えた。投資活動では1930億円を使った。有形固定資産の取得に1353億円を支出したほか、Nanya Technology Corporationの株式の取得に伴う782億円の支出があった。財務活動では1兆2574億円を使い、内訳は自社株買いの8003億円、借入金の繰り上げ返済などによる長期借入金の返済5231億円などだった。

10〜12月期も同水準を予想、岩手の子会社は統合へ

会社は年度の計画を出さない代わりに、次の四半期の見通しを開示している。10〜12月期の見通しは、売上収益が2兆5000億円、営業利益が1兆9950億円、純利益が1兆3600億円で、いずれも7〜9月期とほぼ同じ水準だ。データセンター向けの需要は旺盛に推移すると見込む一方、為替の想定を7〜9月期の1ドル161円から157円へ円高方向に置いたことなどから、横ばいとした。

同じ10月30日には、製造体制の見直しも発表した。中核子会社のキオクシアが、岩手県北上市に本社を置く子会社のキオクシア岩手を2027年4月1日付で吸収合併する。AIデータセンター向けの需要を背景にフラッシュメモリ市場は中長期的に拡大すると見込まれるとして、最先端製品の製造力を強化する狙いだという。データセンターの整備は国内でも進んでいる(関連記事:データセンター、日本は242か所 米国は4165か所で2位以下15か国の合計4061か所を上回る 国内クラウド市場は4兆4930億円)。

キオクシアホールディングスは2024年12月18日に東証プライム市場へ上場した。2026年5月には、自社の株式を対象とする米国預託株式(ADS)を米国の証券取引所に上場させる準備を進めていると発表した。投資家層の拡大などが目的で、上場の時期や市場、方法は未定としている。