電子部品大手のTDK(東証プライム)は10月30日、2027年3月期の連結業績予想を上方修正すると発表した。売上高は4月28日に公表した2兆5800億円から3兆500億円に、親会社の所有者に帰属する当期利益(純利益)は2250億円から2800億円に引き上げた。AIデータセンター向けの部品の需要が想定を上回り、中間期(4〜9月)の業績が期初の見通しを超えたためとしている。あわせて中間配当と期末配当をそれぞれ5円増やし、年間配当を1株50円とする。同じ日の取締役会では、2027年6月の定時株主総会での承認を条件に、監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行することも決めた。

売上高は4700億円上積み、年間配当は50円に

修正後の予想は、売上高が3兆500億円(前回予想比18.2%増)、営業利益が3650億円(同23.7%増)、税引前利益が3700億円(同23.3%増)、純利益が2800億円(同24.4%増)。基本的1株当たり当期利益は118円54銭から147円50銭になる。前期の2026年3月期の実績と比べると、売上高は2兆5048億円から21.8%増、純利益は1957億円から43.1%増となる見込みだ。

項目 前回予想(4月28日) 今回予想(10月30日) 前期実績(2026年3月期)
売上高 2兆5800億円 3兆500億円 2兆5048億円
営業利益 2950億円 3650億円 2724億円
税引前利益 3000億円 3700億円 2768億円
純利益 2250億円 2800億円 1957億円
1株当たり当期利益 118円54銭 147円50銭 103円09銭
TDKの2027年3月期連結業績予想の修正(IFRS)

出典: TDK「通期連結業績予想の修正並びに剰余金の配当(中間配当)及び期末配当予想の修正に関するお知らせ」

投資の計画も膨らませた。固定資産の取得(設備投資)は3700億円から4000億円に、減価償却費及び償却費は2400億円から2500億円に見直した。研究開発費は3100億円で据え置いた。事業の入れ替えに伴う構造改革費用などの一時費用は、期初の見通しの約60億円から約110億円に増える見込みだという。

第3四半期以降の為替は1ドル=155円、1ユーロ=180円を前提にしている。中間期の平均レートは1ドル=159円41銭、1ユーロ=184円38銭だったため、下期は中間期より円高の水準を置いたことになる。中間期の実績を通期予想から差し引くと、下期の売上高は約1兆4894億円、営業利益は約1568億円となり、いずれも中間期の水準を下回る計算だ。

配当は、9月30日を基準日とする中間配当を1株25円と決めた。4月時点の予想の20円から5円多く、前期の中間配当16円を9円上回る。配当金の総額は474億5800万円で、12月2日に支払いを始める予定だ。期末配当の予想も20円から25円に引き上げ、年間配当は50円となる。前期の年間36円と比べると14円の増配だ。

会社側は増配の理由を、中間期の業績が4月の想定を上回り、通期の見通しを引き上げたことに伴うものと説明している。1株当たり当期利益の予想147円50銭に対し、年間配当50円は約3分の1にあたる。

中間期は全セグメントで増収、純利益58.4%増

同日発表した中間期の決算は、売上高が1兆5606億円(前年同期比31.9%増)、営業利益が2082億円(同41.0%増)、純利益が1764億円(同58.4%増)だった。通期予想に対する進捗は、売上高で約51%、営業利益で約57%に達している。

決算短信によると、中間期はメモリーの需給逼迫と価格の上昇を受け、スマートフォンなどICT(情報通信技術)関連製品の生産が前年同期を下回った。一方で、AIデータセンター向けのニアラインHDD(大容量のハードディスク駆動装置)の需要が伸び、産業機器向けの設備投資需要も堅調だった。スマートフォン向けの新製品の販売も加わり、4つの報告セグメントと「その他」のすべてで売上高が前年同期を上回った。

円安も利益を押し上げた。中間期の平均レートは前年同期に比べ対ドルで9.1%、対ユーロで9.7%の円安だった。為替の変動全体で売上高が約1344億円、営業利益が約199億円増えたとしている。中間期の売上高のうち海外向けは1兆4488億円で、全体の92.8%を占める。

HDD用ヘッドの磁気応用製品が5割増

セグメント別に見ると、伸びが大きかったのはHDD用ヘッドやサスペンションを含む磁気応用製品だ。売上高は1769億円で前年同期比52.8%増、セグメント利益は119億円から331億円へ178.1%増えた。売上高に対する利益の比率は10.3%から18.7%に上がった。

コンデンサやインダクティブデバイスからなる受動部品は、売上高が3580億円(同25.3%増)、セグメント利益が148億円から396億円へ167.9%増えた。コンデンサは主に産業機器向け、インダクティブデバイスは主に自動車向けの販売が増えた。温度・圧力センサなどのセンサ応用製品は、売上高が1277億円(同18.3%増)、利益が183億円(同51.1%増)だった。

売上高の半分以上を占めるのは、二次電池と電源からなるエナジー応用製品だ。売上高は8677億円(同33.9%増)で全体の55.6%にあたり、主にICT市場向けの電池の販売が増えた。ただ、セグメント利益は1501億円と9.1%の伸びにとどまり、利益率は21.2%から17.3%に下がった。

TDKの中間期セグメント利益(億円)

2025年4〜9月2026年4〜9月

エナジー1,3771,501受動部品148396磁気応用119331センサ121183
磁気応用製品と受動部品の利益が前年同期の2倍超に増えた出典: TDK「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」
数値で見る(単位: 億円)
項目2025年4〜9月2026年4〜9月
エナジー1,3771,501
受動部品148396
磁気応用119331
センサ121183

利益の伸びの差は、データセンター向けの需要がどの製品に集まったかを映している。会社側は通期の見通しの説明で、データセンター向けの需要が旺盛で受動部品の売上が伸び、ニアラインHDD用ヘッドとサスペンションの販売が「大幅に増加」したと記している。

監督と執行を分ける統治形態へ

TDKは現在、監査役会を置く「監査役会設置会社」で、役員の指名と報酬については任意の諮問委員会を設けてきた。移行後は、会社法に基づく指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つを置く「指名委員会等設置会社」になる。

会社法は、各委員会を取締役3人以上で組織し、その過半数を社外取締役とするよう定めている(第400条)。指名委員会は株主総会に出す取締役の選任・解任の議案を、報酬委員会は執行役らの個人別の報酬を決める(第404条)。業務を執行するのは取締役会が選ぶ執行役で(第402条)、取締役会は決議によって業務執行の決定を執行役に委ねることができる(第416条)。

TDKは移行の目的として、監督と執行の分離を明確にし、取締役会を中長期の経営を議論する「より実効性の高いモニタリングボード」に変えることを挙げた。取締役会から執行役へ大幅に権限を移し、最高経営責任者(CEO)を中心に各領域を担う執行役が自ら素早く意思決定できる体制にするという。

移行には、2027年6月に開く予定の第131回定時株主総会で定款の変更が承認される必要がある。定款の変更案と移行後の役員体制は、決まり次第公表するとしている。