厚生労働省は10月30日、第38回アルコール健康障害対策関係者会議を開いた。参考人の古賀佳樹氏らが報告した調査によると、飲酒運転で運転免許を取り消された人のうち43.1%が、アルコール使用障害の疑いがある水準の飲み方をしていた。ところが、その人たちのうち医療機関で治療を受けたことがあるのは20.2%にとどまった。会議では、2026年度から5年間の第3期アルコール健康障害対策推進基本計画について、9月末時点の取組状況と指標の現状も示された。

取消処分者の4割超が「使用障害の疑い」

調査の対象は、飲酒運転で免許を取り消された人向けの「飲酒取消講習」を受けた18歳以上の人である。警察庁と協議したうえで、講習を行う全国の公安委員会と指定講習機関に協力を求め、同意を得た191施設で調査票を配った。期間は2025年6月10日から12月31日までで、1037人分の有効回答を得た。

飲み方の評価には「AUDIT(アルコール使用障害同定テスト)」を使った。回答者は、取消処分を受けた日からさかのぼって1年間の飲み方を思い出して答えている。全項目に答えた1006人のうち、アルコール使用障害が疑われる15点以上は434人(43.1%)で、男性は874人中381人(43.6%)、女性は132人中53人(40.2%)だった。8〜14点の「高リスク飲酒者」は376人(37.4%)で、7点以下の非飲酒者・低リスク飲酒者は196人(19.5%)にとどまる。報告は、2008年の前回調査とおおむね同じ割合だったとしている。

処分の前後で飲み方がどう変わったかも尋ねた。AUDITの一部を使う「AUDIT-C」の得点で見ると、リスクのある飲酒が疑われる人は、処分前の84.7%から回答時点で71.1%に下がった。それでも7割を超える人が、なおリスクのある飲み方を続けていることになる。

運転の使い方も尋ねている。処分前の1か月間に運転した主な目的は、男性の85.5%、女性の67.4%が「仕事」だった。

治療を受けたのは2割、受けたい人も2割

使用障害が疑われる15点以上の人に限ると、これまでに飲酒に関わる治療を受けたことがある人は425人中86人(20.2%)で、331人(77.9%)は受けたことがなかった。いま治療を受けたいかとの問いに「はい」と答えたのは429人中99人(23.1%)で、「いいえ」が279人(65.0%)を占めた。

報告はまとめで、取消講習の受講者にはアルコール使用障害を含む飲酒の問題を抱える人が多く、処分後もリスクのある飲み方を続ける人が少なくないと指摘した。そのうえで、医療や支援につながっている人は限られ、飲酒の問題への介入につなげる仕組みが課題だとした。

国の計画もこの点を取り上げている。第3期計画は「飲酒運転等をした者に対する指導等」の項目に、新たな取り組みとして「飲酒運転の背景等の調査結果を踏まえた取消処分者講習の見直し」を書き込んだ。「アルコール・インターロック装置」の普及・促進や、刑事施設・保護観察所での指導の充実の検討も並ぶ。今回の調査は、講習をどう見直すかを決める材料の一つになる。

肝疾患の死者は6027人、妊娠中の飲酒は上昇

アルコール健康障害対策基本法は2014年6月1日に施行され、国は基本計画を定めて対策を進めている。第3期計画の期間は2026年度から2030年度までで、会議の資料は計画の重点目標ごとに、計画を作ったときの値(ベースライン)と直近の値を並べた。

指標 ベースライン 直近値
アルコール関連肝疾患による死亡者数 6343人(2024年) 6027人(2025年)
妊娠中の飲酒者の割合 1.0%(2023年度) 1.5%(2024年度)
連携会議を年に複数回開いた自治体 14(2024年度) 16(2025年度)
連携会議で児童福祉部門と連携した自治体 11(2024年度) 17(2025年度)
連携会議で女性支援部門と連携した自治体 5(2024年度) 9(2025年度)
第3期アルコール健康障害対策推進基本計画の主な指標(自治体数は都道府県と政令指定都市の計67のうち)出典: 厚生労働省「第38回アルコール健康障害対策関係者会議」資料2-1・2-2

アルコール関連肝疾患による死亡者は、2025年に6027人(男性5176人、女性851人)だった。前年の6343人から316人減った。内訳は肝硬変が4722人、肝炎が167人、脂肪肝が29人で、肝硬変が全体の8割近くを占める。この病気で医療機関にかかった人は2023年に7万1000人と推計されている。

一方、計画が「なくす」ことを目標に掲げる妊娠中の飲酒は、飲酒者の割合が2023年度の1.0%から2024年度は1.5%に上がった。20歳未満の飲酒も同じく「なくす」目標で、2024年の調査では中学生・高校生の1.7%が過去30日間に1日でも飲酒していた。

計画のもう一つの柱である「生活習慣病のリスクを高める量」の飲酒については、2024年の値が全体で11.4%(男性13.9%、女性9.3%)で、計画は全体で10%、女性は6.4%まで下げることを目指す。この量は1日あたりの純アルコール量で男性40グラム以上、女性20グラム以上を指し、計画は「個々人の許容量を示したものではない」と注記している。この指標の直近値は、まだ示されていない。

依存症疑い304万人、外来の受診は11万人

調査で示された「治療につながらない」という問題は、取消講習の受講者に限った話ではない。会議の資料は、全国の推計と受診者数の開きを「治療ギャップ」と呼んで指標に挙げている。

2024年の調査に基づく推計では、AUDITで15点以上の「アルコール依存症が疑われる者」は304万1000人、生涯でアルコール依存症を経験した人は64万4000人にのぼる。これに対し、2022年度にアルコール依存症で受診した患者は外来10万9323人、入院2万5435人だった。2024年に依存症専門医療機関を新たに受診した人は男性1万1840人、女性2873人で、計画はこの新規患者数を増やすことを重点目標にしている。

受け皿の整備は進んでいる。9月末時点で、相談拠点は都道府県と政令指定都市の計67自治体すべてに置かれ、専門医療機関は62自治体、治療拠点機関は53自治体にある。ただ、都道府県などが開く「依存症医療研修」の参加者は2024年度の4650人から2025年度は4181人に減った。

国の取り組みが知られていない面もある。国の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(飲酒ガイドライン)について、内容まで知っている人は4.2%、名前は知っているが内容は知らない人は9.4%だった。厚労省はアルコール関連問題啓発週間に合わせ、このガイドラインの紹介動画を公表する予定だとしている。

家族の7割に「抑うつ・不安」

第3期計画は、当事者の家族、とくにこどもへの支援を新たな重点課題に加えた。国立病院機構久里浜医療センターが2025年4月から8月にかけ、協力を得られた98のアルコール依存症専門医療機関に来た18歳以上の家族を対象に調べたところ(有効回答1138票)、「抑うつ・不安」の問題がある人は73.7%、アルコール問題によって経済的な困難を感じた人は42.1%だった。

回答者が当事者のこども自身の場合、当事者から暴言・暴力を受けた人は54.2%、こころの不調が表れた人は48.6%にのぼった。

厚労省は内閣府、こども家庭庁、文部科学省と連名の事務連絡で、アルコール健康障害対策の部門だけでなく、児童福祉、女性支援、配偶者暴力相談支援、教育の各部門を交えた連携体制づくりを都道府県などに求めた。教育部門と連携した自治体は2024年度の38から2025年度は39、配偶者暴力相談支援部門と連携した自治体は2025年度で8だった。こども家庭庁は「こども虐待対応の手引き」に、アルコール依存症などの問題を抱える保護者への対応方法を盛り込み、児童相談所などの職員に周知した。

会議では、家族への相談支援ガイドラインの作成計画や、一般の医療機関と専門医療機関をつなぐ手引きの整備についても、それぞれ参考人が報告した。