衆議院財務金融委員会は10月23日と27日、食料品の消費税率を2年間引き下げ、働く中低所得者に「就業者負担軽減支援金」を支給する政府の法案(内閣提出第1号)について、政府に質疑した。衆議院事務局がまとめた「委員会ニュース」によると、与党と野党の質疑者が、支援金の対象となる所得の上限・下限や支給額が法案に書かれず政令に委ねられている点を相次いで取り上げ、採決までに具体的な数値を示すよう求めた。27日には経済の専門家ら参考人4人から意見を聴き、農林水産委員会と連合審査会を開くことも決めた。

2日間で20人が政府に質疑

法案は10月9日に衆議院が受理し、20日に財務金融委員会へ付託された。審議入りの経緯は食料品1%減税・支援金法案が衆院で審議入り 財務金融委へ付託、国民民主は対案を同日提出で伝えた。

委員会ニュースによると、法案を議題とした政府への質疑は23日の第3回委員会で12人、27日の第4回委員会で8人が行った。23日の答弁者は片山財務大臣(金融担当・消費税・支援金法案担当を兼ねる)、鈴木総務副大臣、若林財務副大臣兼内閣府副大臣と政府参考人だった。27日は片山大臣、若林副大臣、森下農林水産大臣政務官と政府参考人が答弁に立った。質疑者は自民、中道、維新、国民、参政、みらいの各会派と無所属の議員だった。

21日の第2回委員会は「財政及び金融に関する件」の一般質疑だったが、自民の三反園訓氏と中川貴元氏、中道の岡本三成氏が法案を取り上げた。三反園氏は、支給対象者数が2,000万人程度になるなど政府が参考として示した試算の位置づけを問うた。

委員会ニュースは事務局が作成する審査の概要で、質疑者ごとに主な質疑事項を並べているが、政府の答弁の内容は載っていない。国立国会図書館の国会会議録検索システムでは、31日朝の時点でこの2日間の会議録は検索できなかった。

支給の基準を政令に委ねる法案に質問が集まる

法律案要綱によると、支援金を受け取れるかどうかを分ける所得の金額は、どれも「政令で定める額」とされている。支給額も「前年の所得の額並びに扶養児童の有無及び数に応じて政令で定める額」とされ、法案の条文には具体的な金額が無い。政令委任の仕組みは支援金の対象と水準、片山財務大臣「新たに推計が必要」 根拠は5年ごとの全国家計構造調査で詳しく伝えた。

23日に質問した中道の赤羽一嘉氏は、所得下限額、所得上限額、対象者数、支給額を法案に明記しなかった理由をただした。所得下限額を雇用保険の対象となることを踏まえて53万円以上とする必要性を挙げ、政府は具体的な数値を採決前に明確に示すべきだとの指摘について大臣の見解を求めた。同じ中道の重徳和彦氏は、支給対象を2,000万人、所得下限額を100万円と仮定した場合の所得上限額を尋ね、夫婦と子ども2人の世帯で諸外国との純負担額の差が最大27万円になるという考えを支給額の根拠にするかどうかも問うた。

国民の古川元久氏は、具体的な金額を政令に委ねて明示しないことの妥当性を問い、示せないならば社会保障国民会議の実務者会議を再開して議論すべきだと求めた。参政の牧野俊一氏は採決までに「計算式だけでも」示す必要性を挙げた。与党側でも、自民の勝目康氏が、ほかの給付制度の根拠法で支給要件を政令に委ねた例があるかと、要件が明らかになる時期を尋ねた。

27日には中道の山岡達丸氏が、23日の大臣答弁を取り上げた。委員会ニュースによると、大臣は数値を法律に書かない例として、公立高校の授業料不徴収と高等学校等就学支援金の支給に関する法律(平成22年法律第18号)を挙げていた。山岡氏はこの答弁内容が不正確だと指摘し、その法律の審議では具体的な数値が示されていたと認識していたのかを確かめた。予算が示されないまま法案を審議した例があるかもただし、この法案は予算編成の後に審議するのが正常な状況だという認識かどうかを確かめた。維新の萩原佳氏は、支給要件の検討状況を「決定事項」「未決定事項」「結論を左右する条件」に分け、節目ごとに説明するよう求めた。

店頭価格と事業者の手続き

消費税率の引き下げについては、値札にどう反映されるかと事業者の手続きに質問が多かった。要綱によると、2027年4月1日から2029年3月31日までの間、軽減税率の対象となっている飲食料品の国の消費税率を0.78%とする。概要は、地方消費税と合わせて1%になると説明している。

自民の勝目氏は、コスト上昇分の価格転嫁を踏まえて税率の引き下げが価格をどれだけ下げるかを問い、関係府省庁の連絡会議によるモニタリングで、適切な価格転嫁と便乗値上げを見分ける体制をどう整えるかを尋ねた。維新の萩原氏は、引き下げ前後の価格の把握方法と、引き下げの効果と本体価格の変動を分けた統計を公表する必要性を挙げた。

国民の古川氏は、消費税法に価格へ税を転嫁する法的な義務や、税率の変更時に価格を変える義務があるかを確かめた。税率の異なる店内飲食と持ち帰りを同じ税込価格にしてよいかも質問した。

事業者の負担では、中道の大森江里子氏と参政の牧野氏が、簡易課税制度を後から選べる特例や届け出期限の扱いを取り上げた。牧野氏は、卸売業者が2027年3月に農林漁業者から仕入れた飲食料品を4月に販売する場合の消費税額の計算や、税率変更に乗じた取引条件の押し付けが独占禁止法の優越的地位の濫用に当たる可能性も尋ねた。27日には中道の近藤和也氏が、農林漁業者の経営と資金繰りへの影響と支援措置の給付水準を問い、自民の松本泉氏は、引き下げの対象に外食を含めなかった理由を尋ねた。

財源と2029年度以降

財源について要綱は、国が負担する支援金の費用を「特例公債に頼ることなく」、補助金等と租税特別措置の適正化その他の歳出と歳入全般の見直しで確保すると定める。2027・28年度は、これに加えて「追加的な租税収入以外の収入」で確保するとしている。

中道の重徳氏は、2027年度予算で消費税率を下げたうえで特例公債の発行額を40兆円以下に抑える考えかを確かめ、宇宙戦略基金など3基金の現状と、租税特別措置・補助金見直し担当室(日本版DOGE)による基金の見直しも取り上げた。同じ中道の大森氏は、削減対象とする補助金と租税特別措置の具体名と、削減額の試算の根拠を示すよう求めた。

税率を戻した後の扱いにも質問が出た。赤羽氏は、2029年度に飲食料品の税率を引き上げる際、景気の状況によって判断する景気条項を付ける必要性を挙げた。維新の池下卓氏は税率を8%に戻す際の消費の落ち込みを防ぐ対応を、国民の田中健氏は税率を戻した時に中低所得の現役世代の手取りが確実に増えるのかを尋ねた。無所属の河村たかし氏は、支援金を全国民一律の定額給付ではなく複雑な制度にした理由をただした。

参考人4人から意見、連合審査会も

27日は参考人質疑も行い、次の4人から意見を聴いた。

参考人 肩書
武田洋子氏 三菱総合研究所常務研究理事
是枝俊悟氏 大和総研金融調査部主任研究員
渡辺努氏 東京大学名誉教授
秋葉弘道氏 アキダイ代表取締役
10月27日の財務金融委員会に出席した参考人出典: 衆議院「第222回国会10月27日財務金融委員会ニュース」

自民の渡辺勝幸氏は、通常の物価上昇がある中で税率引き下げ分の価格変化だけを見える形にする方法を渡辺参考人に、支援金の対象となる勤労性所得の下限を給与収入106万円とすることの妥当性を是枝参考人に尋ねた。国民の田中氏は、税率1%で99円以下の品物を単品で売ると売上税額が端数処理で0円になることの小売事業者への影響を秋葉参考人に、増税と減税で価格転嫁の度合いが違うかを渡辺参考人に聞いた。みらいの峰島侑也氏は、税率の引き下げと給付を組み合わせるより給付に一本化する方が物価高対策として効率的だとの考えについて、武田、是枝両参考人の見解を求めた。

委員会は同じ日、農林水産委員会と連合審査会を開くことを協議して決めた。衆議院の議案審議経過情報では、31日朝の時点で、この法案の委員会審査の終了日と結果はまだ記載されていない。