経済産業省が10月30日に発表した9月の鉱工業生産指数(速報値)は、季節調整済みで104.1(2020年=100)となり、前の月より2.2%上昇した。上昇は6月以来、3か月ぶり。伸び幅は1月の4.3%以来の大きさで、指数の水準は7月の104.4以来の高さとなった。自動車工業と生産用機械工業が伸び、品目別では半導体製造装置が全体を最も押し上げた。経産省は生産の基調判断を「一進一退で推移している」に据え置いた。

8月の落ち込みから持ち直す

鉱工業生産指数は、国内の工場や鉱山でどれだけモノが作られたかを、2020年の月平均を100として表す指標だ。自動車、機械、電子部品、化学製品など幅広い品目の生産量を積み上げて作るため、企業の景況感を尋ねる調査とは違い、生産の実績そのものを示す。毎月末に前月分の速報値が出て、翌月中旬に確報値で改められる。

9月の上昇は、8月の大きな落ち込みの後に来た。8月の指数は、9月末に出た速報の段階では前月比1.7%の低下だったが、今回あわせて示された確報値では101.9、前月比2.4%の低下に下方修正された。速報時点で経産省は、自動車工業、汎用・業務用機械工業、石油・石炭製品工業などの低下を挙げていた。9月の104.1は、8月の確報値から2.2%戻した水準にあたる。

内閣府は10月27日の月例経済報告で、8月の鉱工業生産指数が2.4%減となったことに触れたうえで、業種別では輸送機械について「一部に令和8年熊本地震の影響がみられたが、持ち直しの動きがみられる」と記した。生産全体については「総じてみれば持ち直しの動きがみられる」との判断を示している。経産省の「一進一退」と比べると、政府の月例経済報告の方が一歩前向きな表現になっている。月例経済報告の全体像は10月の月例経済報告、基調判断から「自然災害」外す 輸出は「足踏み」に 企業の業況は「改善の動き」にまとめている。

月ごとの動きを並べると、指数は1月に104.5まで上がった後、2〜5月は102台で推移し、6月に104.6へ上昇した。7月は104.4とほぼ横ばいで、8月に101.9へ下がり、9月に104.1へ戻した。7〜9月期の平均は103.5で、4〜6月期の103.2から0.3%上回った。上げ下げを繰り返しながら102〜104台の幅にとどまっていることが、「一進一退」という判断の中身である。5月分の動きは5月の鉱工業生産0.5%上昇、2か月連続プラス 化学が押し上げ、基調判断は据え置きで伝えた。

鉱工業生産指数(季節調整済み、2020年=100)(指数)

101102103104105102.4104.6101.9104.12月4月6月8月9月
2026年2〜9月。8月は確報値、9月は速報値出典: 経済産業省「2026年9月の鉱工業(生産・出荷・在庫)指数の動向(速報)」時系列表
数値で見る(単位: 指数)
項目指数
2月102.4
3月102.0
4月102.5
5月102.6
6月104.6
7月104.4
8月101.9
9月104.1

自動車と半導体製造装置が押し上げ

業種別にみると、15業種のうち8業種が上昇し、7業種が低下した。上昇の幅が大きかったのは自動車工業で、前月比5.5%増えた。普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品、軽乗用車の生産が伸びた。8月の低下を主導した業種が、9月は上昇を主導した形だ。

次いで生産用機械工業が3.4%増え、前年同月比では20.1%増となった。けん引役は半導体製造装置で、前月から13.8%増えた。経産省の参考図表によると、秘匿の関係で数値を出せない品目を除けば、9月に鉱工業生産全体を押し上げた品目のうち半導体製造装置の影響が最も大きかった。汎用・業務用機械工業は4.8%増で、コンベヤが前月の2.4倍(142.0%増)に膨らんだ。電子部品・デバイス工業も3.4%増え、品目ではメモリーにあたるモス型IC(メモリ)が29.8%増えた。

低下した業種では、鉄鋼・非鉄金属工業が1.6%減った。亜鉛めっき鋼板が10.0%、電気銅が7.1%それぞれ減った。窯業・土石製品工業は1.9%減、化学工業(無機・有機化学工業と医薬品を除く)は1.0%減で、合成洗剤が11.1%、柔軟仕上げ剤が19.9%減った。

区分 業種 前月比 主な品目
上昇 自動車工業 5.5%増 普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品、軽乗用車
上昇 汎用・業務用機械工業 4.8%増 コンベヤ、運搬用クレーン、空気圧機器
上昇 生産用機械工業 3.4%増 半導体製造装置、化学機械、機械プレス
上昇 電子部品・デバイス工業 3.4%増 モス型IC(メモリ)、電子回路基板
低下 窯業・土石製品工業 1.9%減 ガラス繊維(短繊維)
低下 鉄鋼・非鉄金属工業 1.6%減 亜鉛めっき鋼板、電気銅、普通鋼鋼帯
低下 化学工業(除.無機・有機化学工業・医薬品) 1.0%減 合成洗剤、柔軟仕上げ剤、界面活性剤
9月の鉱工業生産で上昇・低下した主な業種(速報、季節調整済み)

出典: 経済産業省「2026年9月の鉱工業(生産・出荷・在庫)指数の動向(速報)」

原指数(季節調整をしない値)でみた前年同月比は1.9%の上昇で、4か月連続で前年を上回った。

出荷は0.6%増にとどまり、在庫が積み上がる

生産が2.2%伸びた一方で、工場から出荷された量を示す出荷指数は101.0で、前月比0.6%の上昇にとどまった。業種別では、自動車工業が2.3%、汎用・業務用機械工業が5.5%、鋼船や航空機用機体部品を含む輸送機械工業(自動車工業を除く)が11.0%増えた。一方、石油・石炭製品工業はガソリンや重油、ジェット燃料油の出荷が減って4.3%低下し、鉄鋼・非鉄金属工業も3.7%低下した。

作った量が出荷を上回ったため、在庫指数は99.9となり前月比2.5%上昇した。伸び幅は6月の2.8%以来の大きさ。電子部品・デバイス工業の在庫が10.1%、自動車工業が5.4%増え、自動車工業の在庫は前年同月より30.5%多い。在庫指数は原指数の前年同月比で0.1%増となり、2025年1月以来、20か月ぶりに前年を上回った。

在庫を出荷で割った在庫率指数は108.4で、2.0%上昇した。上昇は2か月連続で、水準は2025年8月以来の高さとなった。在庫率が上がるのは、売れる量に比べて手元に残る製品が多くなっていることを意味する。生産の伸びがそのまま販売の伸びになっていない点は、9月の数字を読む際の留意点になる。

10月の計画は5.1%増、補正値は3.9%増

先行きについて、経産省が製造業の企業に翌月以降の生産計画を聞いた製造工業生産予測調査(10月調査)では、10月が前月比5.1%の上昇、11月が0.8%の上昇となった。10月の上昇は電子部品・デバイス工業、生産用機械工業、電気・情報通信機械工業などによるもので、11月は輸送機械工業、汎用・業務用機械工業、鉄鋼・非鉄金属工業などが押し上げる計画だ。1か月前の9月調査では、10月の伸びは3.1%と見込まれていた。

ただし、予測指数は企業の計画を集めたもので、実績は計画を下回る傾向がある。このため経産省は、過去のずれの傾向を差し引いた「補正値」を合わせて示している。10月の補正値は前月比3.9%の上昇で、幅を持たせると2.7〜5.1%となる。補正値から試算した10月の生産指数は108.2だった。

前回の予測と実績を比べると、9月調査では9月の伸びを3.2%と見込み、補正値は1.6%(0.4〜2.8%)だった。実際の9月の速報値は2.2%で、計画は下回ったものの補正値の幅には収まった。

項目 前月比
9月の計画(9月調査) 3.2%増
9月の補正値(9月調査) 1.6%増
9月の実績(速報) 2.2%増
10月の計画(10月調査) 5.1%増
10月の補正値(10月調査) 3.9%増
11月の計画(10月調査) 0.8%増
製造工業生産予測指数と実績の比較(季節調整済み)

出典: 経済産業省「鉱工業指数 参考図表集(2026年9月速報)」

「一進一退」は2024年7月から続く

経産省の基調判断「生産は一進一退」は、2024年7月に「一進一退ながら弱含み」から上方修正されて以来、同じ表現が続いている。参考図表集に載った2020年基準の指数で最も高かったのは2018年3月の116.3で、9月の104.1はこれを1割ほど下回る。

9月は自動車と半導体製造装置を中心に生産が戻り、10月も計画上は大きく伸びる見通しとなっている。一方で、出荷の伸びは生産を下回り、在庫と在庫率がともに上がった。政府の月例経済報告は、生産の先行きについて「持ち直していくことが期待される」としつつ、「中東情勢による下押しリスクに留意する必要がある」とも記している。

8月分が速報の1.7%減から確報の2.4%減へ改められたように、9月分も確報で数値が変わる可能性がある。10月の計画どおりに生産が伸びれば、指数は102〜104台の幅を上に抜けることになり、基調判断の表現が変わるかどうかが次の焦点となる。