総務省は10月30日、本年度中に始める「ふるさと住民登録制度」について、全国の都道府県知事と市区町村長に宛てて、制度への参加と積極的な活用を求める総務大臣書簡を出した。住所地以外の地域と継続的に関わる「関係人口」をアプリで登録し、地域の担い手確保につなげる制度で、国が全国共通の仕組みを設けるのは初めて。参加する自治体からのシステム利用申請は同日から2027年1月29日まで受け付ける。総務省の説明会資料では、3月末に国民向けのアプリを公開する予定としている。

書簡は首長に「リーダーシップ」を求める

書簡は藤井比早之総務相の名で出された。首相官邸の閣僚名簿によると、藤井氏は総務相のほか地方創生と地域未来戦略の担当相を兼ねる。

書簡はまず、少子高齢化と人口減少で多くの地域が担い手の不足や活力の低下に直面していると指摘した。そのうえで、これまで自治体が進めてきた移住促進などの「定住人口」を増やす取り組みに加え、地域の出身者や過去に勤務・居住・滞在した人など、地域外に住みながら地域に貢献したいと考える人に関係人口として継続的に関わってもらう取り組みが、「今後の地域の活性化に向けた重要な鍵になっている」と記した。制度については「国が初めて全国共通の基盤を整備する画期的な取組」と位置づけている。

自治体への要請では、情報発信や担い手活動の企画・運営に庁内横断で取り組む必要があるとして、首長に「リーダーシップを発揮していただくことが極めて重要」と書いた。あわせて、10月30日から2027年1月29日までシステムの利用申請を受け付けると明記し、事務負担や財政負担に配慮した支援を続けるとした。

藤井総務相は10月27日にも、全国の知事と市町村長に宛てた書簡で地場産業の成長計画づくりを求めると表明している(藤井地域未来戦略相、全知事・市町村長に書簡 地場産業プランの策定を要請 省庁職員を「支援官」に)。書簡はいずれも、7月21日に閣議決定された「地域未来戦略」に基づく。

ベーシックとプレミアム、2段階の登録

総務省の特設サイト「ふるさと住民登録制度ナビ」によると、登録は2種類ある。入口となる「ベーシック登録」は、関心のある自治体をアプリで誰でも登録でき、自治体から地域のニュース、イベントや観光の情報、担い手活動の募集情報などを受け取れる。本人確認は要らず、登録数に上限は無い。

上位の「プレミアム登録」は、ベーシック登録をした地域で年3回以上の担い手活動に参加し、マイナンバーカードで本人確認をすることが要件となる。総務省は「住民に準ずる者」と位置づける。登録先は3団体までで、原則として1年ごとに更新が必要。住所地の自治体にはプレミアム登録できない。

項目 ベーシック登録 プレミアム登録
要件 誰でも登録できる 年3回以上の担い手活動への参加
本人確認 不要(マイナンバーカードで任意に可) マイナンバーカードで必須
登録できる数 上限なし 3団体まで
更新 不要 原則1年ごと
住所地の自治体 登録できる 登録できない
ふるさと住民登録の2つの区分

出典: 総務省「ふるさと住民登録制度ナビ」制度の概要・よくある質問

年間の滞在日数10日以上を基本に自治体が定める要件を満たす長期滞在者は、その旨をプレミアム登録証に記載できる。市区町村に登録すると、本人が同意すれば、その市区町村が属する都道府県にも同時に登録される。登録は無料。

返礼品は禁止、活動の場は自治体が指定

プレミアム登録者に対しては、自治体が官民でサポート施策を用意する。総務省の概要資料は例として、担い手活動のための交通費・宿泊費やワーキングスペース利用料の補助、地域生活のための公共施設の住民並みの利用や避難先としての受け入れを挙げる。

一方、ふるさと納税と違い、登録そのものへの返礼品は設けない。総務省は、登録したこと自体への見返りとして現地に行かなくても恩恵を受けられる物品を出すことを禁止し、活動参加への御礼としても高額な特産品のように適切な範囲を超える物品は控えるよう求めている。

プレミアム登録の要件となる担い手活動は、公共性の確保と実績の把握のため、自治体がプロジェクトを指定する形で関与することを前提とする。ただ、地域の担い手の需要は自治体だけでは把握しきれないとして、総務省は地域に根差した関係団体との連携も必要だとしている。概要資料は、担い手活動のプロジェクトごとに自治体が指定する方法と、特定の団体が実施するプロジェクトを原則として指定する方法を示している。活動の実績はシステム上に記録され、その回数に応じてベーシック登録からプレミアム登録へ進む仕組みとなる。

総務省は、制度を使う自治体に、地域課題の整理、呼び込みたい関係人口の検討、発信する情報や担い手活動の内容、プレミアム登録者向けのサポート施策の検討を求めている。地域団体や民間事業者との連携体制づくりも重要だとし、ガイドラインの公表やモデル事業の事例共有で自治体を支援するとしている。

申請は1月末まで、アプリは3月末に公開予定

9月30日に掲載された第2回全国説明会の資料によると、総務省は10月末に申請様式やシステムの概要資料、利用規約を各自治体に送る。申請を受けた自治体には2月下旬をめどに管理者アカウントを発行し、自治体のシステム利用は3月上旬に始まる見込み。3月末にアプリを公開して国民向けサービスを始める。自治体には原則として同時に登録受け付けを始めるよう求めるが、間に合わない場合は準備が整い次第でもよいとしている。制度開始後も追加の申請を受け付ける予定だが、時期や方法は未定。

先行して、モデル事業が進んでいる。総務省は3月27日、161団体の応募から、都道府県と市町村の連携モデルとして北海道・宮城・富山・長野・和歌山・鳥取・高知の7道県(域内の応募市町村37団体)、個別市町村モデルとして岩手県陸前高田市や岐阜県飛騨市など21市町村を選んだ。連携モデルの域内には北海道上士幌町も入る。同町では6月、民間企業と町が制度の推進に向けた共同施策を発表した(楽天やJALなど4者、北海道上士幌町で「ふるさと住民」開拓へ共同施策)。説明会資料によると、モデル団体で計2千〜3千人程度のモニターを集め、100以上の自治体が試用版アプリの実証に参加する予定で、実証は10月16日に始まった。

国費32億円でシステム、参加を促す財政措置

システムの構築費は令和7年度補正予算で32.1億円(デジタル庁一括計上)、モデル事業は同じ補正予算で3.5億円を計上した。総務省は令和9年度予算の概算要求に、普及促進事業として3億2200万円を盛り込んでいる(令和8年度当初予算は0円)。

自治体の負担については、共通システムの利用料は自治体負担が原則としつつ、令和9年度(2027年度)までに参加する団体には一定期間負担を求めない。令和10年度以降に参加する団体の負担は今後検討する。制度の推進には特別交付税措置を新たに設け、情報発信や相談対応を担う「ふるさと住民コーディネーター」の設置経費に1人当たり500万円(兼任は40万円)を上限に措置する。その他の取り組みは事業費1000万円を上限に、措置率0.5に財政力に応じた補正をかけて措置する。自治体が独自に開発した既存アプリを改修して連携させる経費は、デジタル活用推進事業債の対象となる。

地域未来戦略は、関係人口の創出・拡大に取り組む地方公共団体数を2027年度に1200団体とする目標を掲げ、工程として2026年度中の開始に向けたアプリ等の開発と、2027年度以降の機能充実や自治体による活用を挙げている。利用料を求めない期間を2027年度までの参加に区切ったのは、早期の参加を促すためだと総務省の資料は説明している。今回の書簡は、受け付け開始に合わせて首長に参加の判断を求めたものとなる。