厚生労働省は10月30日、労働政策審議会の労働条件分科会(第214回)を厚労省講堂で開き、労働時間法制の見直しのうち「法定休日」「連続勤務規制」「副業・兼業」の3分野について、検討の論点を示した。13日を超える連続勤務を規制すること、法定休日をあらかじめ特定するよう使用者に義務づけること、副業・兼業をする人の割増賃金の計算で本業と副業の労働時間を通算する現在の仕組みをどう見直すかを、公労使の委員に問いかけた。いずれも、2025年1月にまとまった「労働基準関係法制研究会」の報告書が見直しを提言していた項目だ。

4週4休なら制度上は48日連続で働かせられる

労働基準法35条は、使用者に「毎週少くとも一回の休日」を与えるよう定めている。ただし同条2項で、4週間を通じて4日以上の休日を与える場合はこの原則を適用しない。これが「変形週休制」で、業種の限定はない。厚労省の資料によると、4週間の区切りの初めに4日の休日をまとめ、次の4週間の終わりに4日をまとめると、間の48日間は休日なしで働かせても法律上は違反にならない。

さらに、労使で36協定を結び、休日労働の条項を設けて割増賃金を払えば、法定休日に働かせることもできる。厚労省は論点の資料で、現行の休日規制では「相当の日数連続して労働させることも可能である」と認めた。

実態はどうか。厚労省の「労働時間制度等に関する実態調査」で、2024年4〜6月に最大何日続けて勤務したかを尋ねたところ、5日以下が63.7%、6〜13日が34.1%だった。14〜20日は1.2%、21〜27日は0.5%、28日以上は0.2%で、14日以上の連続勤務を経験した人は合わせて約2%いた。

最大の連続勤務日数(2024年4〜6月)(%)

5日以下63.76〜13日34.114〜20日1.221〜27日0.528日以上0.2
全労働者計。最大何日間連続で勤務したかを尋ねた結果出典: 厚生労働省「労働時間制度等に関する実態調査」(労働条件分科会第214回資料No.1-2)
数値で見る(単位: %)
項目%
5日以下63.7
6〜13日34.1
14〜20日1.2
21〜27日0.5
28日以上0.2

「2週間以上の連続勤務」は労災認定で心理的負荷の要素

「13日」という線は、精神障害の労災認定の基準と結び付いている。厚労省は2011年、精神障害の労災認定基準を検討した専門検討会で、「2週間以上にわたって連続勤務を行った」ことを心理的負荷の強度が「中」の出来事として評価表に加えた。1か月以上の連続勤務や、連続勤務が連日深夜に及ぶ場合は「強」の例として明記している。

日本産業精神保健学会が厚労省の委託で2020年度に行ったストレス評価の調査では、3万人を対象に出来事ごとのストレスを0から10で尋ねた。「2週間以上にわたって連続勤務を行った」の平均は5.63で、「1か月に120時間以上の時間外労働を行った」の5.53を上回った。

労災の支給決定にも表れている。2025年度に業務上の精神障害として労災支給が決まったのは1082件(うち自殺76件)で、このうち「2週間以上にわたって連続勤務を行った」ことを主な出来事として心理的負荷が「強」と判断されたのは30件(うち自殺3件)だった。2021年度からの5年間は、39件、38件、33件、36件、30件と推移している。

研究会の報告書は、こうした基準を踏まえ、2週間以上の連続勤務を防ぐために「13日を超える連続勤務をさせてはならない」旨の規定を労基法に設けるべきだとした。4週4休の特例を「2週2休」とするなど、連続勤務の最大日数を減らす措置の検討も求めた。

厚労省が今回示した論点は、13日を超える連続勤務の規制をどう考えるかに加え、災害時に限らず事業場の実態に応じて特に必要な場合に、例外として一定の日数を超えて働ける仕組みを設けるか、その場合に健康確保の措置を義務づけるかの2点だった。

労使の意見は例外の範囲で分かれる

資料には、これまでの分科会で出た意見の整理も載った。見直しをめぐる分科会の議論は、労働時間法制の見直し、月2〜3回の審議へ 過半数代表者の規定を労基法本体に移すか議論や裁量労働制、対象を広げるか適正運用か 労政審に論点 実労働はみなしより49分長くで伝えている。労働者側は「現行の4週4休制は、最大で48日の連続勤務も可能であるため、早急に見直しが必要」とし、休日労働を含めた連続勤務を罰則付きで規制するよう求めた。災害時などの例外は限定的にすべきだとし、健康・福祉確保の相談窓口を置くだけでは措置として不十分だとも述べた。

使用者側は、連続勤務規制は健康確保の観点で重要だとしつつ、災害復旧やシステムトラブルなど大きな突発事象で、やむを得ず連続勤務をせざるを得ない場合があると主張した。画一的な規制ではなく、労使の合意で例外を設けられる制度にすべきだとし、代わりの措置も代償休日に限らず、医師の面接指導や相談窓口の設置など幅広く選べるよう求めた。ごく短時間の業務で休日労働となる場合の扱いも議論すべきだとした。

公益委員からは、13日を超える連続勤務を禁じる提言を「重く受け止めるべき」としたうえで、限定的な形で例外を設けることはあり得るとの意見が出ていた。

法定休日は「特定」を義務にするか

もう一つの論点が法定休日の特定だ。労基法は休日を与えることは定めるが、どの日を休日とするかを決めることは求めていない。厚労省は1948年の通達以来、就業規則で具体的に一定の日を休日と定めるよう「指導」するにとどめてきた。2025年の就労条件総合調査で、何らかの週休2日制を採る企業は92.6%、完全週休2日制は65.5%だった。週2日の休みがある職場でも、法律上はそのうち1日が確保されていれば35条違反にはならない。

法定休日に働くと35%以上の割増賃金がかかり、時間外労働の上限規制の原則的な上限(月45時間・年360時間)には休日労働が含まれない。労働者側は、使用者が時間外労働の一部を休日労働に振り替える運用をしないよう、振替の手続きを明文化し、振替の期間を限るなどの対策を求めた。使用者側は特定を法律で定めることには賛同したが、急な欠勤で代わりの人を確保できず休日を振り替えるしかない場合もあり、直前の変更を規制するのは事業の運営に大きな障害になりかねないと主張した。

厚労省の論点は、特定を義務づける場合に35条で守る対象が「週1回の休日の確保」から「あらかじめ特定した休日の確保」に変わることをどう考えるか、特定の時期や方法、振替のルールをどう定めるかを問うている。

副業の割増賃金、労働時間の通算をやめるか

副業・兼業については、労基法38条が「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定め、厚労省は使用者が異なる場合も通算すると解釈してきた。本業と副業の合計が1日8時間などの法定労働時間を超えると、超えた分に割増賃金の支払い義務が生じる。

労働政策研究・研修機構の2024年の調査では、仕事を持つ人のうち副業をしている人は6.0%(男性5.1%、女性7.4%)だった。副業の理由(複数回答)は「収入を増やしたいから」が54.5%、「1つの仕事だけでは収入が少なくて、生活自体ができないから」が38.2%。本業と副業を合わせた1週間の実労働時間は平均47.7時間だった。

一方、副業を認め実際に副業者がいる事業所で、他社の労働時間と通算して割増賃金を払っているのは12.7%にとどまった。通算しても法定労働時間に達しないため払う必要がないが25.9%、払っていないが32.5%だった。

研究会の報告書は、フランス、ドイツ、オランダ、イギリスなどでは割増賃金の計算で労働時間を通算していないことや、副業が使用者の命令ではなく労働者の選択で行われることを挙げ、健康確保のための労働時間の通算は維持しつつ、割増賃金については通算を要しないよう制度を改めることが考えられるとした。政府の2025年の規制改革実施計画も、通算の在り方を労政審で検討し、2025年度に結論を得るとしていた。

労働者側は、通算を廃止すれば企業の負担が減るだけで、労働者には賃金面で不利益になるとして反対している。使用者側は、中小企業では通算が難しいため副業の利用が進まないとして、割増賃金は通算の対象外とする方向での検討を求めた。厚労省は、通算の在り方を副業の理由や割増賃金の制度の趣旨を踏まえてどう考えるか、副業をする人の健康確保にどんな措置を講じるべきかを論点に挙げた。