内閣府は10月23日、地域経済の動向と課題をまとめた「地域課題分析レポート」(2026年10月)を公表した。第2章で「若者や女性に魅力ある地域となるために」と題し、進学や就職を機に地方から都市圏へ移る若者と女性の動きを、統計や民間調査を使って分析した。地元外の大学に進んだ地方出身の学生のうち、Uターン就職や地元就職を望む人の割合は、コロナ禍の時期を除いて概ね50%程度で推移していたが、2026年卒と2027年卒では4割程度に下がった。レポートは、若者の転出が続けば地方の人手不足が深まり、病院や介護施設などの生活サービスを保てなくなるおそれがあるとし、働きがいと安定した生活を両立できる地域づくりを課題に挙げた。
転出は10代後半から20代前半に集中
レポートは冒頭で、2025年の国勢調査では全国1719市町村のうち9割以上にあたる1558市町村で人口が減り、10%以上減った市町村は全体の27.7%と前回2020年の調査から倍増したと記した。
地域別にみると、東京都を含む南関東を除き、人口は全国的に減り続けており、減少の幅は年ごとに広がっている。2021〜2025年の増減を、出生と死亡の差による「自然増減」と転入と転出の差による「社会増減」に分けると、どの地域でも自然減の方が大きい。南関東以外の地域では、これに転出超過による社会減が加わって人口減少が進む。南関東も自然減は大きいが、他の地域からの転入超過で相殺している。
男女別では、南関東は男性より女性の転入超過が大きい状態が続く。近畿は男性の転出超過が続く一方、女性は2021〜2025年にわずかながら転入超過になった。南関東・近畿・東海以外の地域では、女性の転出超過が男性を上回っている。レポートは、地方で男女の人口の偏りが広がり、未婚化と少子化がさらに進むおそれがあると指摘した。
年齢別では、南関東を除く多くの地域で10代後半から20代前半の転出超過が大きい。近畿だけは15〜19歳で男女とも転入超過になっている。
進学で地元を離れ、就職でも都市圏へ
転出の最初の機会は大学進学だ。多くの都道府県で、地元の高校を出て県外の大学に進む人の方が、県内の大学に進む人より多い。北海道、東北、北陸、四国では、男性に比べて女性の県外大学進学率が高い。レポートは、地方は都市圏より大学の数が少なく、進学の希望を満たせないため都市圏の大学に進まざるを得ない面があるとした。
就職の段階でも都市圏への集中が続く。内閣府がリクルート就職みらい研究所の調査(2023〜2025年)を加工した集計では、大学のキャンパスと同じ地域で就職した学生の割合は南関東が87.3%と最も高く、北関東は39.7%、四国は43.2%にとどまった。
| キャンパスの所在地 | 同じ地域で就職 | 南関東で就職 |
|---|---|---|
| 北海道 | 75.1% | 14.0% |
| 東北 | 65.6% | 21.1% |
| 北関東 | 39.7% | 43.8% |
| 南関東 | 87.3% | (同左) |
| 北陸・甲信越 | 68.4% | 14.4% |
| 東海 | 78.1% | 13.3% |
| 近畿 | 68.7% | 21.4% |
| 中国 | 59.6% | 16.4% |
| 四国 | 43.2% | 13.7% |
| 九州(沖縄を含む) | 76.4% | 11.4% |
北関東では、キャンパスと同じ地域で就職する学生より南関東で就職する学生の方が多い。東海や近畿の大学の学生でも1〜2割は南関東で就職しており、レポートは地方から都市圏へ、都市圏から別の都市圏へと就職先が集まる傾向があるとした。
地元就職を望まない理由は「志望する企業・職種がない」
学生が就職先に何を求めるかについて、レポートはマイナビの2027年卒調査を使い、男女とも「安定している会社」や給与を重視し、女性は「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」や福利厚生を重視する割合が男性より高いとした。地元就職を望まない理由には「志望する企業がないから」「志望する職種がないから」「希望するキャリアを築けないから」が挙がった。
学生に人気のある業種は、男子学生全般と理系女子学生ではソフトウェア・情報処理・ネット関連、文系学生全般では銀行・証券だ。これらを含む情報通信業と金融・保険業は、付加価値でみると南関東・東海・近畿の合計が全国の約7〜8割を占める。研究職やエンジニア職など「技術者」が働く人に占める割合も都市圏で高く、レポートは高い専門性を生かせる就職先が都市圏に偏っていると分析した。
進学の面では、大学を選ぶ際に「就職に有利である」などキャリアにつながる点を重視する学生が多く、女性の方がその割合が高い。入学志願者は男女とも理工系の学部で増え、女性は商学・経済学や法学でも増えている。
地方の働き手と生活サービスに及ぶ影響
レポートは、若者と女性の転出が地方経済に与える影響として、まず人手不足を挙げた。2021〜2025年度平均の有効求人倍率は、製造業と農林漁業で地方圏が高い傾向にあり、どの業種でも北海道、北陸、中国、四国、九州が高い。三大都市圏以外では従業員99人以下の企業からの求人の割合が高く、人口が流出すれば中小企業が人材を確保しにくくなる。人手不足による倒産の割合も地方の方が高く、甲信越、北関東、中国で上がっている。業種別では建設業と物流業に多い。
生活サービスへの影響も示した。人口1万人未満の市町村でも飲食料品小売、一般診療所、特別養護老人ホームは半数以上にある一方、高校、病院、有料老人ホーム、介護老人保健施設がある市町村は約3割以下にとどまる。人口1万人未満の市町村が全体に占める割合は、2025年の31.2%から2050年には42.6%に上がると見込まれる。同じく2万人未満は47.6%から56.6%、5万人未満は70.5%から76.2%になる。
レポートは、人口流出への対策だけでは全国的な人口減少を前提とした解決策にならないとし、将来のサービス提供の形を住民も交えて検討し、地域を越えた連携を進める必要があるとした。人口が急減する地域で担い手を確保する国の制度については「人口が急減する地域の担い手を雇う「特定地域づくり事業協同組合」、全国146組合に 島根16・鹿児島12 無期雇用で農業や宿泊業へ派遣」で報じた。
若者を呼び込んだ4市町と、女性が働きやすい地域
レポートは、若年層の呼び込みと定着に一定の成果を上げた市町村として4つを紹介した。北海道大樹町は1980年代から宇宙産業の集積を進め、2000年代以降は宇宙航空研究開発機構(JAXA)との連携で企業と人材が集まった。2000年を基準にした20〜29歳人口の増減率は、北海道全体で減少が続くなか、2015年以降わずかに上向いている。
北海道千歳市は工場誘致を進め、2023年に次世代半導体を生産するラピダスの工場立地が決まった。岩手県北上市では、キオクシアの岩手工場を運営するキオクシア岩手が2020年に3次元フラッシュメモリーの量産を始めた。同社は従業員の約9割を地元から採用し、平均年齢は29歳だという。両市の20〜29歳人口は、道県全体で減少が続くなか、2020年ごろ以降は横ばいか増加に転じた。北上市の人口1人あたり雇用者報酬は岩手県全体や周辺の市町を上回っている。福井県鯖江市は地場産業の眼鏡製造で高付加価値化を進め、20〜29歳人口は2015年ごろから増加傾向にある。
女性については、働き方の柔軟さとの関係を分析した。働く人のうちテレワークをしたことがある人の割合(2022年就業構造基本調査)は、南関東で30%を超える一方、東北、甲信越、四国は10%に満たない。業種をそろえても差があり、情報通信業では南関東85%に対し東北61%、甲信越58%、四国57%だった。都道府県別にみると、育児休業などの制度の利用率やテレワークの実施率が高い地域ほど、15〜29歳女性の転出が少ないか、転入超過になっているという正の相関が確認できたとした。
レポートは、地方で柔軟な働き方を一層広げることに加え、「女性・男性ならではの視点が欲しい」といった固定的な性別役割分担の思い込み(アンコンシャス・バイアス)をなくす意識改革も欠かせないとした。例として、女性の就業率が全国3位、共働き世帯の比率が全国5位の富山県が、思い込みと思われる事例を広く募って県のホームページで紹介したり、ワークショップを開いたりしている取り組みを挙げた。レポートは「女性が働きやすい職場環境は、女性だけでなく働く人すべてが働きやすい職場環境にほかならない」とも記している。
