農林水産省は10月9日、輸入が禁じられた畜産物などを販売していた茨城県古河市の外国食材店について、家畜伝染病予防法に基づき、店舗の名称と住所、廃棄した品目と数量を公表した。動物検疫所が9月29日に店へ立ち入り検査し、ベトナム産の鶏爪やインドネシア産の牛鶏肉ソーセージなど計25.9キロ(718個)をすべて廃棄した。輸入禁止品を売る店に立ち入り、廃棄させ、店名を公表する仕組みは、7月1日に施行された改正法で新たに設けられた。
鶏爪だけで685個
農水省によると、動物検疫所は9月29日、家畜伝染病予防法第51条第2項に基づいて立ち入り検査を行い、店が輸入禁止品、または家畜の伝染病の病原体で汚染された物を貯蔵、陳列、販売していたことを確認した。動物検疫所はこれらを全て廃棄した。
廃棄の一覧(別紙1)には8品目が並ぶ。最も多いのはベトナム産の鶏爪で、2品目合わせて23.45キロ、685個に上った。内訳は20.2キロ(573個)と3.25キロ(112個)。このほか、ベトナム産の鶏肉入り菓子が0.95キロ(9個)と0.4キロ(4個)、インドネシア産の牛鶏肉ソーセージが0.6キロ(11個)、0.1キロ(2個)、0.05キロ(1個)、インドネシア産の牛鶏肉団子が0.35キロ(6個)だった。
公表事項には、これらの品が売られていた期間も含まれるが、一覧ではすべて「不明」とされた。いつからどれだけ売られていたかは、公表資料からは分からない。農水省は、廃棄した物の写真も別紙2として公表している。
7月施行の改正法で新設
今回の公表の根拠となったのは、2026年の家畜伝染病予防法改正だ。改正法案は3月24日に国会へ提出され、5月15日に成立、5月19日に公布された。農水省の法案概要は、背景の一つに「近年、違法輸入畜産物の国内の外国食材店での販売が散見され、早急に対応が必要」と記している。
改正では、輸入禁止品の販売などを禁じる第44条の2を新設した。売るだけでなく、販売のための加工、調理、貯蔵、陳列も禁止の対象になる。あわせて第51条に第2項から第6項を加え、国の家畜防疫官に、外国食材店などの店舗や事務所、倉庫へ立ち入り、検査や質問をする権限と、輸入禁止品を廃棄する権限を与えた。廃棄があった場合には、農林水産大臣が店舗の名称などを公表できる(第6項)。これらは7月1日に施行された。
同じ改正法には、豚熱が出た農場で、全頭ではなく子豚や症状があり検査で陽性となった豚に絞って殺処分する「選択的殺処分」の導入や、ランピースキン病の家畜伝染病への格上げも盛り込まれた。選択的殺処分の適用例は群馬・渋川の養豚農場で豚熱、国内107例目 選択的殺処分で1935頭で伝えている。
動物検疫所は、立ち入り検査で廃棄した事例を、国境での不正な輸出入の事例とともにウェブサイトで公表している。令和8年度の一覧(10月9日更新)に載っている立ち入り検査の事例は今回の1件だけで、新制度に基づく初めての公表となった。
公表で周辺農場や取引先に注意喚起
農水省は公表の目的を、家畜の伝染性の病気の発生とまん延を防ぐ観点から「一般市民や農場、取引先に対して広く注意喚起を行うため」と説明している。動物検疫所の資料は、公表の効果として、周辺の農場への注意喚起と、違法な販売の抑止を挙げている。
動物検疫所は、外国食材を販売する事業者向けの案内ページで、輸入検査を受けていない肉や肉製品は販売禁止だと告知し、検査を受けずに輸入された畜産物が見つかった場合は「販売状況の情報を原則すべて公表します」と明記している。販売しようとする品が正規に輸入されたものかを確認するよう求め、家族や友人にも、肉や肉製品を国際郵便などで日本あてに送らないよう伝えてほしいと呼びかけている。
罰則も重い。農水省によると、輸入禁止に違反した場合(第36条第1項)や、販売等の禁止に違反した場合(第44条の2)は、3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、法人には5000万円以下の罰金が科される可能性がある。違法な持ち込みに対する罰金の上限は、2020年7月1日の法改正で100万円から300万円に引き上げられていた。
郵便での持ち込みが高止まり、国内未発生のASFを警戒
外国食材店に目が向けられた背景には、海外からの違法な持ち込みの増加がある。動物検疫所の資料によると、訪日外国人の増加とともに、入国者が手荷物で持ち込む違反畜産物の摘発件数が増えた。国際郵便物の検査での摘発も令和元年(2019年)ごろから増え、現在も高止まりしている。資料は、違反畜産物が入った国際郵便物の宛先が外国食材店だったケースや、外国食材店で違法に輸入された疑いのある畜産物が売られていた事例も確認したとしている。
改正法の概要には、発覚を逃れるためにソーセージをタバコやコーンと一緒に郵便物に詰めた事例も載っている。農水省は、AIを使ったX線画像の解析などで水際の検査体制を強めつつ、国内で売られる段階でも取り締まれるよう法を改めた。
肉製品の持ち込みが厳しく制限されているのは、家畜の病気を国内に入れないためだ。動物検疫所によると、多くの国で口蹄疫やアフリカ豚熱(ASF)などの家畜の病気が発生しており、おみやげや個人用の畜産物は輸出国政府の検査証明書を取るのが難しいため、肉製品や動物由来製品のほとんどは日本へ持ち込めない。口蹄疫やASF、高病原性鳥インフルエンザなどの発生で、輸入自体が禁じられている国・地域もある。
農水省はアフリカ豚熱について、日本は清浄国でこれまで発生は確認されていないとしたうえで、アフリカでは常在的に、ロシアやアジアでも発生していることから、海外からの侵入への警戒が重要だとしている。過去の事例では、清浄国でASFが発生する原因は、ウイルスに汚染された航空機や船舶から出た食べ残しを豚に与えたことだったという。
今回廃棄された品は鶏肉や牛肉を使ったもので、農水省の公表資料は、どの病気の病原体が問題になったのかや、検査で病原体が見つかったかどうかには触れていない。
公表は動物検疫所のウェブサイトの一覧に年度ごとに掲載される。動物検疫所は事業者向けの案内で立ち入り検査を行うことがあると告知しており、輸入検査を受けていない畜産物が見つかれば、今後も店名などが原則として公表される。
