高市早苗首相は10月5日、第222回国会の所信表明演説で、年末を目途に「人口総合戦略」を策定すると表明した。人口動態の将来シミュレーションと対応策の全体像を示したうえで、分野横断的に施策の検討を進めるとした。あわせて「外国人の受入れの基本的な在り方」についても検討を進めると述べた。
「人口減少は、静かに進む国難」
首相は演説で「人口減少は、静かに進む国難です。少子化の流れを反転させるとともに、人口減少社会に適応した新たな国のかたちを築かなければなりません」と述べ、そのうえで年末を目途とする戦略の策定を挙げた。
この戦略には下地がある。政府が7月21日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2026」(骨太方針)は、少子化傾向の反転と、人口減少に対応した社会経済の再構築の両面で対策を進めるとし、省庁間の縦割りを排して、少子化傾向の反転、人材希少社会における社会経済の活力維持、全世代型社会保障の構築、持続可能な地域社会の構築の4点に取り組むと書いた。そのうえで有識者会議を含め人口戦略本部の推進体制を強化し、2026年末を目途に一貫した総合的な戦略として「人口総合戦略(仮称)」を策定すべく検討を進めるとしていた。「将来必要となる労働力人口の規模についても多角的に検討する」とも明記している。演説では、この仮称が外れた形で「人口総合戦略」と呼ばれた。
演説が行われた第222回国会は、臨時国会は10月5日召集 9月29日の持ち回り閣議で決定し召集詔書を公布 衆院の選挙制度改革と比例定数削減が焦点にあたる。戦略の策定時期は会期よりも後になる。
1億2615万人が2070年に8700万人へ
戦略が向き合う見通しは、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(令和5年推計)」が示している。2020年の国勢調査による1億2615万人は、出生中位・死亡中位の推計で2070年に8700万人になる。2020年時点の69.0%で、50年で3割あまり減る計算である。総人口に占める65歳以上の割合は、2020年の28.6%から2070年には38.7%へ上がる。総人口が1億人を下回るのは2056年と見込む。
直近の実績では、日本の総人口は1億2265万人 2026年9月1日現在の概算値で1年前より54万人減 2016年からの9年間で382万人減った 日本人人口は569万人減となっている。
減少が緩んだ理由は外国人の入国超過
この推計で注意が要るのは、前回(平成29年推計)より人口減少の速度がわずかに緩むとされた理由である。合計特殊出生率の長期的な仮定は前回の1.44(2065年)から1.36(2070年)へ下がった。一方で外国人の入国超過数の仮定は、前回の年約6万9千人(2035年)から年約16万4千人(2040年)へ大きく引き上げられた。同研究所は、人口減少の速度が緩むのは「国際人口移動の影響が大きい」と説明している。
実際、日本人人口に限った参考推計では2070年の人口は7761万人、65歳以上の割合は40.9%となり、総人口の推計より減り方が大きく、高齢化の度合いも重い。外国人人口が391万7千人、1年で30万1千人増 総人口の3.19%に 日本人の働き手49万5千人減のうち27万3千人を埋めるという現状もある。演説が「外国人の受入れの基本的な在り方」の検討を人口総合戦略と並べて挙げたのは、この構造と重なる。
人手不足は「最大の課題」、AXで対応
首相は人手不足を「人口減少社会の最大の課題」と位置づけた。医療・介護、物流・公共交通などのエッセンシャルサービスを守り、国内投資の拡大にも対応するため、AX(AIトランスフォーメーション)の社会実装を大胆に進めるとした。AXとDXの恩恵が行き渡る社会を築くため、政府の司令塔機能を強化して行政の縦割りを打破し、安全で信頼できるAIの開発促進と活用を進めるとも述べた。
骨太方針は、医療・介護等のエッセンシャルサービスの維持・効率化と質の向上に取り組むとしたうえで、「AIを前提」として社会や産業、教育の在り方を再構築する時代に入っているとし、AI活用と人材育成・確保・流動化を一体で進めると書いている。年末の戦略では、この人手不足への対応と少子化対策、社会保障、地域政策が一つの文書にまとめられることになる。
