高市早苗首相は10月23日午後5時40分から約20分間、実務訪問賓客として来日中のミクロネシア連邦のウェズリー・W・シミナ大統領と首相官邸で会談した。外務省の発表によると、首相は同国の独立40周年に祝意を述べ、貨客船の供与に向けた国際協力機構(JICA)の調査を実施すると伝えた。両首脳は太平洋島嶼国地域の結束と一体性を保ち強めることの重要性を確認し、来年夏に横浜で開く第11回太平洋・島サミット(PALM11)の成功に向けて連携することで一致した。

首相官邸で握手する高市首相とミクロネシア連邦のシミナ大統領
会談を前に握手する高市首相とミクロネシア連邦のシミナ大統領(10月23日、首相官邸)首相官邸の写真を本紙が横幅1600pxに縮小出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/105/actions/202610/23micronesia.html)利用条件: PDL1.0

首脳会談 貨客船の供与へJICAが調査

外務省によると、首相は冒頭、ミクロネシア連邦の独立40周年に祝意を述べ、シミナ大統領の今年2度目となる来日を歓迎した。

首相は、自らが掲げる進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の下で、両国が「共に、強く豊かになる」協力を積み重ねたいと述べた。そのうえで、「今般決定した貨客船供与に向けたJICA調査の実施を含め」、ミクロネシア連邦の「自律性」と「強靱性」を高める協力を続けると伝えた。外務省の発表は、調査の規模や期間、供与する船の大きさには触れていない。

進化したFOIPは、高市首相が5月に発表した外交方針だ。10月12日に東京で開かれた日米協議では、外務審議官がこの方針を米側に説明し、地域の自律性と強靱性を高める具体的な取り組みを日米で進めることを確認している(日米がFOIP協議、高市首相の「進化版」を説明 沖縄の事件とICCも事務方で伝達)。

シミナ大統領は、日本のこれまでの幅広い分野での支援と協力について、日本政府と日本国民に感謝を述べ、二国間関係をさらに強めたいとの強い意向を示した。進化したFOIPの考え方と取り組みを歓迎するとも述べた。

両首脳は、地域情勢や国際社会での連携についても意見を交わした。外務省の発表は、意見交換の具体的な中身を明らかにしていない。

島国の連携と来夏のPALM11

両首脳が一致した太平洋・島サミット(PALM)は、日本で開かれてきた太平洋島嶼国との首脳会議で、1997年10月に第1回が開かれた。外務省の基礎データには、このときミクロネシア連邦からネナ大統領とイロン外相が来日したと記されている。来年夏の会合は創設30周年の節目に当たり、横浜で開かれる予定だ。シミナ大統領は大統領就任後の2024年7月、前回の第10回サミットに出席するため来日している。

首脳会談の前日の22日には、茂木敏充外相が来日中のリッキー・F・カンテロ外相と約25分間会談した。茂木外相は、ミクロネシア連邦について、基本的な価値と原則を共有し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を保つうえで重要なパートナーだと述べた。両外相は、北朝鮮への対応を含むインド太平洋の地域情勢について意見を交わし、PALM11と、それに先立ってフィジーで開く予定のPALM中間閣僚会合の成功に向けて緊密に連携することで一致した。

同じ22日夜には、堀井巌外務副大臣が大統領を招いて夕食会を開いた。堀井氏は今年8月にミクロネシア連邦を訪れており、席上、「地政学的要衝に位置する」同国の重要性に触れて、自律性と強靱性の強化を引き続き後押しすると述べた。

独立40年 米国と「自由連合盟約」を結ぶ島国

ミクロネシア連邦は、ポンペイ、チューク、ヤップ、コスラエの4州で構成する連邦国家だ。外務省の基礎データによると、面積は約700平方キロメートルで奄美大島とほぼ同じ、人口は7万5817人(2023年、同国政府統計局)。首都はパリキールで、軍隊は持たない。

独立は1986年11月3日。第2次世界大戦後は国連の信託統治領として米国が統治しており、米国との間で「自由連合盟約(コンパクト)」を発効させて独立した。この盟約により、同国は米国から財政支援を受ける一方、安全保障と国防の権限を米国に委ねている。財政支援は2003年の改定で2023年まで続き、24年3月にはさらに20年間の延長が承認された。外務省の資料は、同国内に米軍の軍事基地は無いとしている。

経済規模は小さい。国内総生産(GDP)は4億7100万ドル、1人当たり国民総所得(GNI)は4250ドル(いずれも2024年、世界銀行)。主な産業は水産業、観光業、農業で、輸出の中心はカツオやマグロだ。生活必需品の多くを輸入に頼り、貿易収支は恒常的な赤字となっている。外務省の資料は、同国経済は基本的に米国のコンパクトによる経済援助で成り立っていると説明している。2023年の経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)の集計では、主な援助国は米国(1億10万ドル)、オーストラリア(540万ドル)に次いで日本が3位に入る。

日本の委任統治から100年余り

日本とのつながりは古い。第1次世界大戦が始まった1914年、日本は現在のミクロネシア連邦を含む「南洋群島」を占領し、20年には国際連盟から委任統治を認められた。45年の終戦で米軍の占領に移るまで、日本の統治は約30年続いた。79年に自治政府が発足した際の初代大統領は、日系のトシヲ・ナカヤマ氏だった。

23日に都内で開かれた独立40周年の記念レセプションでは、出席した堀井副大臣が、両国の友好関係は「100年以上の深い交流に支えられて」いると述べた。外交関係の開設は1988年12月で、2028年に40周年を迎える。

外務省の資料によると、日本の支援は無償資金協力と技術協力が中心で、有償資金協力(円借款)の実績は無い。2023年度までの累計は無償資金協力が279億9600万円、技術協力が101億2000万円。2023年度だけでは無償5億3000万円、技術協力2億4200万円だった。2024年の貿易は、日本からの輸出が22億5000万円、日本への輸入が10億2000万円。同国に住む日本人は90人(25年10月)、日本に住む同国の人は53人(24年12月)で、進出している日系企業は10社にとどまる。

項目 金額
無償資金協力(2023年度) 5億3000万円
技術協力(2023年度) 2億4200万円
無償資金協力(2023年度までの累計) 279億9600万円
技術協力(2023年度までの累計) 101億2000万円
有償資金協力(円借款) 実績なし
日本のミクロネシア連邦への経済協力

出典: 外務省「ミクロネシア連邦基礎データ」

就任から5回目の来日

外務省によると、シミナ大統領は2023年5月に就任した。任期は4年。今回の来日は10月20日から24日までの日程で、大統領として5回目に当たる。同省の基礎データに載る大統領としての来日は次の通りで、昨年は3月と7月の2回、今年は3月と今回の2回来ている。

時期 目的
2024年7月 第10回太平洋・島サミット
2025年3月 実務訪問賓客
2025年7月 大阪・関西万博のナショナルデー出席
2026年3月 インド太平洋エネルギー安全保障閣僚フォーラム(IPEM)出席
2026年10月 実務訪問賓客(今回)
シミナ大統領の大統領としての来日

出典: 外務省「ミクロネシア連邦基礎データ」「シミナ・ミクロネシア連邦大統領の訪日」

大統領は就任前から日本とのかかわりがあった。基礎データには、連邦議会議長として2015年8月の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典、16年3月の東日本大震災5周年追悼式に出席した記録が残る。

23日の記念レセプションで、大統領は日本の幅広い支援と協力に謝意を示し、今回の来日は有意義なものになったとして、両国関係をさらに強めたいと述べた。日本政府は、来年夏のPALM11と28年の外交関係樹立40周年を節目に、関係の強化を続けるとしている。貨客船供与に向けたJICA調査がどこまで進み、PALM11までにどのような協力の形が示されるかが次の焦点となる。