総務省は9月29日、令和7年度の地方公営企業等決算の概要を公表した。水道や下水道、公立病院など全国7837事業の決算規模は19兆6404億円で、前年度に比べ4363億円、2.3%増えた。全体の総収支は1998億円の黒字だった。
地方公営企業とは 水道・下水道・病院で決算規模の9割近く
地方公営企業は、自治体が住民に料金を取ってサービスを提供する事業のことだ。一般会計とは別の会計で経理し、税金ではなく料金収入で費用を賄うことが原則になっている。水道、下水道、公立病院、路面電車やバスといった交通、工業用水道、電気、ガスなどが含まれる。
決算規模19兆6404億円の内訳を見ると、病院が6兆9992億円で35.6%、下水道が5兆6577億円で28.8%、簡易水道を含む水道が4兆4218億円で22.5%を占める。この3つで86.9%になり、残りは交通の9258億円(4.7%)とその他の1兆6358億円(8.3%)である。地方公営企業の決算は、実質的に水道・下水道・病院の話だといえる。
事業数は令和7年度末で7837事業。地方公営企業法を適用する「法適用企業」が6277事業、簡易水道など適用しない「法非適用企業」が1560事業で、法適用の割合は79.5%から80.1%に上がった。事業数そのものは減り続けており、令和3年度末の8108事業から、8055、7993、7916と下がって今回の7837になった。総務省は水道事業と下水道事業の統合が進んだためだと説明している。
全体の黒字は1998億円 押し上げたのは国庫補助金
総収支の黒字1998億円は、前年度の1300億円から698億円、53.7%増えた。総務省は、職員給与費の増加や物価上昇で総費用が増えている一方、国庫補助金の増加などによる営業外収益の増加が上回ったと説明している。法適用企業だけで見ると、総費用は約14兆3000億円から約14兆6000億円へ2.1%、総収益は約14兆4000億円から約14兆8000億円へ2.6%増えた。
つまり黒字幅の拡大は、事業そのものが稼げるようになった結果ではない。料金収入ではなく国からの補助で押し上げられた黒字である。全体の料金収入は10兆336億円で、前年度から663億円、0.7%しか増えていない。
累積欠損金は4兆2058億円で、前年度から1448億円、3.6%増えた。過去の赤字の積み上がりを抱えるのは法適用企業のうち1792事業である。企業債現在高は34兆3931億円で、償還額が発行額を上回ったため3031億円、0.9%減った。
黒字の事業は減っている 病院は515事業・76.0%が赤字
全体の数字と、事業ごとの姿は逆を向いている。決算対象となる7769事業のうち黒字は5870事業で75.6%。前年度と比べると黒字事業が159事業(2.6%)減り、赤字事業が79事業(4.3%)増えた。なお、この割合の分母は建設中の事業を除いた決算対象事業数で、年度末の7837事業とは一致しない。
最も厳しいのは病院事業だ。決算対象678事業のうち515事業が赤字で、赤字の割合は前年度の75.0%から76.0%に上がった。病院事業全体の総収支は3453億円の赤字である。ただし赤字幅そのものは前年度から605億円、14.9%縮んだ。救急患者の受け入れや新しい施設基準の取得で患者1人当たりの診療単価が上がり、診療収入が1048億円、2.3%増えたことに加え、賃上げと物価上昇に対する支援事業費補助金や他会計からの繰入金が増えたためだ。
赤字幅は縮んだのに赤字の病院の数は8事業増えた、という形になっている。補助金や繰入金で全体の穴は小さくなったが、個々の病院の採算は改善していない。経常収支という別の指標で見ればさらに厳しく、公立病院の83.3%が経常赤字 前年度の70.4%から悪化 累積欠損金は1兆9992億円 総務省が新しい経営強化ガイドラインの検討会を9月29日に開くのとおりだ。総収支には特別利益や繰入金が入るため、本業の収支を示す経常収支より赤字が小さく出る。
水道の黒字事業は77.8%から74.5%へ 料金減免で収入が394億円減
水道事業で黒字なのは1259事業で、前年度から87事業減った。割合は77.8%から74.5%に下がっている。総収支の黒字幅も38億円、1.8%減った。
減った理由は費用と収入の両方にある。費用側では減価償却費、修繕費、委託料が増えた。収入側では、物価高対策として自治体が水道料金を減免したことなどで給水収益が減り、料金収入は394億円、1.5%減った。総務省は、減免による減収の補填に重点支援地方交付金などが使われていると注記している。料金を下げた分は国の交付金で埋めた形だ。
下水道事業も同じ方向にある。黒字は2815事業で44事業減り、割合は79.9%から78.9%へ下がった。黒字幅は369億円、20.4%減っている。料金収入は減免があった一方で料金改定の影響があり、74億円、0.5%の増加にとどまった。
自治体の一般会計側の決算も同じ日に公表されており、都道府県の経常収支比率、92.2%から93.0%へ悪化 市町村は93.8%から93.3%へ改善 総務省の令和7年度決算速報 財政再生団体は夕張市だけにまとめている。
水道管の経年化率27.9% 更新しても老朽化に追いつかない
決算と並んで示されたのが施設の老朽化だ。令和7年度に更新した水道の管路延長は4890キロメートルで、前年度の4625キロメートルから265キロ、5.7%増えた。それでも管路経年化率は26.2%から27.9%に上がった。
管路経年化率は、法定耐用年数の40年を超えた水道管が全体のどれだけを占めるかを示す数字である。更新の量を増やしても比率が上がったということは、新しく耐用年数を超える管のほうが、更新する管より多いという意味になる。高度経済成長期に一斉に敷かれた水道管が、まとまって更新期を迎えていることの表れだ。
下水道も同じで、修繕・改良・更新した管渠の延長は950キロメートルから1014キロメートルへ6.7%増えたが、管渠老朽化率は7.7%から8.4%に上がった。建設投資額が全体で4兆7698億円、2808億円(6.3%)増えたのは、この更新費用と資材価格の上昇によるものである。
更新にはお金がかかる一方、料金は物価高対策で下げられ、収入は国の交付金で補われている。黒字の事業が減り続けている構図は、この板挟みの表れといえる。
